2023年11月24日
ISO14001とは環境マネジメントシステムについての国際規格です。ISO14001とは世界的にも環境に配慮を求められ、国際標準化機構(ISO)が1996年に策定した認証規格です。
取得することで環境影響を減らし、社外ではアピールや取引のスムーズ化、社内では組織的な活動や改善が可能になります。
1.ISO14001とは
ISO14001とは、世界中で使われている環境マネジメントのためのルールを指します。
環境マネジメントとは、会社が自分たちのビジネスを行う上で、環境にどれだけ優しくできるか、どうやったら自然を守れるかを考え、それを実行するための管理方法のことを言います。
このISO14001のルールに従うことで、会社は自分たちのビジネスが環境に与える影響を少なくすることができます。
例えば、ゴミを減らすための工夫や、エネルギーを無駄に使わないようにする工夫などがそれに当たります。
ISO14001の要求事項とは、この規格のルールを守るために会社が必要とされることを指します。
具体的には、自分たちのビジネスが環境にどんな影響を与えているかをちゃんと調べること、それを改善するための計画を立てること、その計画を実行すること、そしてその結果をちゃんと確認して評価することが求められています。
つまり、ISO14001とは「自分たちのビジネスが環境に優しいかどうかをちゃんと考え、それを実行するためのルール」であり、
そのルールを守るためには「自分たちのビジネスが環境にどんな影響を与えているかを調べ、それを改善するための計画を立て、実行し、その結果を確認すること」が必要とされている、ということになります。
2.環境マネジメントシステム(EMS)とは
(1)ISO14001における環境とは
ISO14001では、「環境」= 私たちが生活する地球全体を指します。
具体的には、空気、水、土、自然の生物、人間を含む生態系、気候、自然資源など、私たちが生活するための基盤となる全ての要素を指します。
ISO14001は、これらの環境を守るために、企業がどのように行動すべきかを示す規格です。
(2)環境マネジメントシステムとは
環境マネジメントシステム(EMS:Environmental Management System)とは、企業が環境に配慮した経営を行うためのシステムのことを指します。
具体的には、企業の活動が環境に与える影響を評価し、その影響を最小限に抑えるための方針や目標を設定し、それを達成するための計画を立て、実行・評価・改善を繰り返すという一連の流れを管理するシステムです。
3.ISO14001取得のメリット・デメリット
ISO14001とは、取得することで今まで行っていた活動を見直し、改善を行うことが出来るシステムになっています。
取得することでのメリットは、社外・社内の両方であります。
しかし、もちろんデメリットもありますので、両方を考えた上で取得する必要があります。
■社外のメリット
- 環境活動への取り組みをアピールできる
- 取引先との契約や業務がスムーズに進められる
- 入札案件への申し込みが出来る
■社内でのメリット
- 環境に関して組織的な活動が可能になる
- 今まで見ていなかった環境に関する数字を見ることが出来るので改善が可能になる
- 自社の取り組みを見直すきっかけとなり、ムダをなくすことが出来る
■デメリット
- マニュアルや書類を作成する手間がかかる
- 保管する記録が増える
- 審査費用が発生する
なお、ISO14001取得のメリットデメリットについては、こちらの記事で詳しく説明しております。
4.ISO14001認証取得の具体的な効果
ISO14001を取得すると、どんな効果があるのでしょうか。
営業側面では下記があげられます。
- 取引先との要求に対応でき、仕事が増えた
- 入札案件へ参加できるようになった
- 競合、ライバルとの差別化になった
官公庁の入札案件や、取引先企業の要求などは当たり前のように普及しております。
特にヨーロッパ圏では、環境に配慮していない会社とは取引しないと決めている会社もあるくらい力を入れている企業もあるそうです。
また、対外的なアピールとしては、
- 企業イメージ向上につながった
- 投資家へのアピールになった
- 環境配慮をしている会社ということを世の中に示せた
というものが多いです。
さらに最近では、
- 会社の「サスティナブルレポート」の中にISO14001の取り組みを書いている
- SDGsへの取り組みの一環としてISO14001の活動を記載している
- IR資料の中に環境保全活動としてISO14001の活動を記載している
など、ISO14001のみならず、会社として取り組むべき活動とISOの親和性を高めている企業も増えてきました。
ISO14001の審査のためだけではなく、会社の活動の一環となるのがよいですよね。
ただ、「SDGsとISO14001をどう絡めたらいいの?」など、会社の他の活動とISOの親和性を高める手法を事例が無い状態で進めるのは難しく、コンサルティング会社に依頼するケースがほとんどです。
認証パートナーでは、月額4万円~で新規認証、運用更新をサポートしています。
お悩みの際はお気軽にお問い合わせください。
5.認証範囲はどうするべき?
業界・業種・業態問わず、どんな会社でも認証を取得することができます。
全社で取得することが一般的に多いですが、まれに「〇〇支店」「〇〇事業部」「〇〇課」のみでの取得など、対象を絞って認証される企業もいらっしゃいます。
しかし、「環境」はあくまでも「企業全体でやるべき取り組み」であるため、全社での取得をオススメしております。
6.ISO14001取得の流れ
ISO14001を取得するには以下の流れになります。
- ルール(マニュアル)の構築
- ルール(マニュアル)通りに運用する
- 審査機関に審査申し込みをする
- 現地審査を受ける
- 認証完了
参考:詳しい方法と流れはこちらの記事で書いております。
7.ISO14001取得までの期間
ISO14001取得までの期間は一般的には6か月程度になりますが、会社の規模、状況によって変化してきます。
どれくらいの期間になるか気になる方は、是非弊社にお問合せください。
8.ISO14001認証取得にかかる3つの費用
ISO14001の取得には、以下3つの費用が必要になってきます。
(1)審査費用
審査を受けるための費用で、審査料、ISO登録料の他に、審査員の交通費や宿泊費なども発生します。
審査の費用は会社の規模や拠点数で大きく異なり、また、審査機関によっても異なります。
『当社の場合はいくらかかるの?』という場合は、一度お問合せください。
審査機関にお見積りを依頼させていただきます。
だいたいの目安ですが、事業所が1ヶ所・従業員50人規模の場合、100万円ほどかかります。
(2)マネジメントシステム構築のための費用
ISO14001のルールや基準を策定するのにかかる費用です。
自社のリソースで取得する場合は担当者の人件費や手当などがこれに当たります。
コンサルティング会社など外部の専門業者のサポートを利用する場合、コンサルティング費用が該当します。初めての取得の場合は、専門家のサポートを利用したほうが早くスムーズに取得完了までたどり着けるでしょう。
(3)設備費・諸経費
ISO14001を取得するにあたって必要な設備があるか聞かれることがありますが、実際にはISO14001取得のためだけの設備投資はありません。
設備投資、諸経費に関しては、ISO14001の取得という観点だけでなく、会社にとって必要なものなら導入するという視点で考えると良いでしょう。
例えば、機器の修理費や新しくシステムを導入するなど、業務上必要な設備費用はISO14001の視点から見ても必要になります。
こちらの記事:ISO14001取得にかかる費用 にて、さらに詳しく解説しております。
9.規格の構成
規格の構成は下記になります。
出典:ISO 14001:2015 環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語及び定義
- 3.1 組織及びリーダーシップに関する用語
- 3.2 計画に関する用語
- 3.3 支援及び運用に関する用語
- 3.4 パフォーマンス評価及び改善に関する用語
4 組織の状況
- 4.1 組織及びその状況の理解
- 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
- 4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
- 4.4 環境マネジメントシステム
5リーダーシップ
- 5.1 リーダーシップ及びコミットメン
- 5.2 環境方針
- 5.3 組織の役割,責任及び権限
6 計画
- 6.1 リスク及び機会への取組み
- 6.2 環境目標及びそれを達成するための計画策定
7 支援
- 7.1 資源
- 7.2 力量
- 7.3 認識
- 7.4 コミュニケーション
- 7.5 文書化した情報
8 運用
- 8.1 運用の計画及び管理
- 8.2 緊急事態への準備及び対応
9 パフォーマンス評価
- 9.1 監視,測定,分析及び評価
- 9.2 内部監査
- 9.3 マネジメントレビュー
10 改善
- 10.1 一般
- 10.2 不適合及び是正処置
- 10.3 継続的改善
赤字の部分が「記録化要求」、つまり毎年書類を作らなければならない必須記録になります。
審査で重大な不適合になりやすい下記3つは特に重要です。
- 内部監査の記録
- マネジメントレビューの記録
- 不適合及び是正処置の記録
(すでにISO14001を取得している企業であれば、昨年の審査の不適合・改善の機会の検討結果も含む)
「昨年の記録を使いまわしている。去年の記録の日付を変えただけ」
「マネジメントレビューの記録、毎年同じようなことを書いている」
「社長が忙しいので、マネジメントレビューの記録は事務局が作文して書いている」
というような企業が往々に存在します。
そのような企業は審査で重大な不適合が出されることが大半ですし、最悪の場合、再審査・認証はく奪の危険性もございます。
毎年きちんと運用しなければならないということですね。
10.ISO14001の変化
ISO14001は当初、「環境に悪い活動を減らそう」という削減をテーマにした運用がメインとなっていました。
ISO14001と聞くと、「紙・ゴミ・電気」というキーワードを思い出す人も多いのではないでしょうか。
実際、ISO14001の目標として、「紙・ゴミ・電気」の削減を掲げている企業が多くありました。
しかし、こういった削減目標には限界があります。
「頑張ってももう減らせない」
「受注が増えれば電気代も増える」
「審査のための活動になっており、形骸化している」
このような声も耳にするようになりました。
次のフェーズとして、「環境に対してプラスになる活動や取り組み」を重視する活動が注目されるようになりました。
「車をエコカーに切り替える」
「ライトをLEDに切り替える」
「紙を買う時はグリーン購入のものを選ぶ」
というイメージの活動です。
何となく環境に良さそうですよね。(笑)
ISO14001は何度か、時代に合わせたカスタマイズである規格改訂が行われています。
直近での変更があったのは2015年。
この頃になると、「もっと経営に近づくISOを行おう」と言う考えにシフトしていきます。
ISO14001をもっと会社のために使っていこう、と言う考えです。
規格改訂についてはこちらでご確認ください。
現在はISO14001も会社の取り組みとリンクすることで、以前よりも会社の実態に合わせた運用が行える体制になっています。
11.SDGsとの関連性
ISO14001は、企業が環境負荷の低減を図るための具体的な手法を提供する規格であり、その目的は持続可能な社会の実現に直結しています。
これは、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)と深く関連しています。
SDGsは、貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、水と衛生、エネルギー、経済成長、産業とインフラ、不平等、都市とコミュニティ、生産と消費、気候変動、海洋、陸上生態系、平和と公正、パートナーシップの17の目標から成り立っています。
ISO14001を取得し、EMSを運用することで、これら17の目標達成に貢献することが可能となります。
その為、SDGsの活動に積極的な企業がISO14001の認証を検討するケースが増えてきております。
SDGsにISO14001を活用するやり方など、詳しい内容は以下の記事に書いております。
12.マークのとらえ方
ISO14001を取得すると、審査機関から取得した証明として「登録証」「ISO14001を証明するマーク」が発行されます。
ISO14001のマークは名刺や会社案内、webサイトで目にすることも多いのではないでしょうか。
一番目にするのは名刺だと思います。
実際にマークを名刺に入れることで、対外アピールをしやすいというメリットがあります。
- ISO14001を取得しているとアピールできる
- 取引要件でISO14001の取得が条件にある場合、聞かずとも取引先が認識できる
- 環境活動に取り組む組織としての証明が出来る
ISO14001を証明するマークを名刺などに配置することで、対外アピールができます。
まとめ
ISO14001とは、環境マネジメントシステムについての国際規格です。
取得して終わりではなく、「環境マネジメントシステム」としてPDCAサイクルを回して運用していく必要があります。
ISO14001を取得する方法と流れについては、こちらで詳しく解説しておりますので、ご参考にしてください。
現在の自社に合った体制と仕組みを作り、適切な運用を行っていくことで、会社へのメリットも広がります。目的を明確にし、適切な体制での取得、運用を行っていきましょう。
認証パートナーは、ISO14001の取得・運用のお手伝いをしております。サービスページもご覧ください。
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