2026年4月6日

ISO14001の環境目標は、紙ごみ電気の削減以外も可能です。
業務や業種によって環境目標の内容は異なりますが、環境方針と整合 しているか、測定可能であることなど、要求事項が求めることに沿う目標設定をしなければなりません。
目次
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ISO14001において、環境目標は環境マネジメントシステム(EMS)を効果的に機能させるために欠かせない要素です。目標を正しく設定することで、審査対応と環境負荷低減活動を両立できます。
しかし、要求事項が多岐にわたるため、目標設定に難しさを感じる担当者の方もいます。
ISO14001では、環境目標を設定する際に「著しい環境側面」「順守義務」「リスクと機会」という3つの事項を考慮することが求められています。
さらに、目標自体が「測定可能であること」や「監視すること」など、5つの要求事項を満たす必要があります。これらの規定を正確に理解しなければ、せっかく設定した目標もEMSの意図した成果につながらない可能性があります。
この記事では、環境目標の定義や環境方針との整合性といった基本から、3つの考慮事項や5つの要求事項の具体的な解説や、製造業・運送業など業種別の目標例も簡単にご紹介します。
1.環境目標とは
ISO14001では用語及び定義で環境目標を「組織が設定する、環境方針と整合のとれた目標」と規定しています。
つまり単に環境のために何かをする、ということは目標ではなく、会社で定めた環境方針の内容とズレが無いように決定した「実施するべき内容」が環境目標となります。
この環境目標には似た言葉として「目的」というものがあります。
- 目的(大きな方向性)
- 環境マネジメントシステムを通じて会社が目指す、抽象的な方向性や意図(例:「省エネルギーの推進」「資源の有効活用」)
- 目標(具体的なゴール)
- 目的を達成するための、測定可能な具体的な結果(例:「来年3月までに、工場の電力使用量を5%減らそう!」)
つまり、方針→目的→目標という順に行動を行うまでがグラデーションになっていると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
2.環境目標を決めるうえで考慮すべき3つのポイント
環境目標は環境方針実現のための具体的な行動を指しますが、
以下の3つの事項を考慮する必要があります。
⑴著しい環境側面
環境側面とは、組織の活動が環境に与える影響のことです。
例えば、騒音、廃棄物、排気ガス、電気の使用などを指します。
このうち環境に与える影響度が高いものを「著しい環境側面」と呼びます。
この著しい環境側面の内容を含むことで、環境負荷低減を最大化することができます。
⑵順守義務
ISO14001における順守義務とは「守るべき法的要求や、自社で守ると決めたこと」を指します。
要求事項では以下のように求められています。
6.1.3 順守義務
組織は、次の事項を行わなければならない。
a)組織の環境側面に関する順守義務を決定し、参照する。
b)これらの順守義務を組織にどのように適用するかを決定する。
c)環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、継続的に改善するときに、これらの順守義務を考慮に入れる。
組織は、順守義務に関する文書化した情報を維持しなければならない。
引用:「ISO 14001:2015 環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」
また、ISO14001のおける順守義務は以下のように定義されています。
組織(3.1.4)が順守しなければならない法的要求事項(3.2.8)、及び組織が順守しなければならない又は順守することを選んだその他の要求事項。
引用:「ISO 14001:2015 環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」
つまり、順守義務は以下の2つに大きく分けられます。
① 法的要求事項:守ることが強制されるルール
国や自治体が定めた、必ず守らなければならない法律や条例です。
環境活動を行う上での最低限のラインとなります。
具体例:
- 環境基本法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法などの環境関連法規。
- 自治体ごとに定められた特定施設の設置基準や排出基準。
- 産業廃棄物の処理に関する法規制。
② その他の要求事項:自社で守ると決めた約束事
法的な強制力はないものの、組織が自主的に「守る」と決めたルールや要求事項です。
具体例:
- 業界団体のガイドラインや自主基準(例:化学物質の自主管理目標)。
- 顧客や取引先との契約に含まれる、環境に配慮した調達ルール(グリーン調達)。
- 地域住民との協定(例:騒音レベルに関する取り決め)。
- 組織が認証取得しているその他の規格(例:ISO9001の要求事項を自社のルールとする)。
このように、ISO14001は、これらの順守義務を環境マネジメントシステム全体で考慮に入れることを求めています。
⑶リスクと機会
環境目標を確立する際には、「リスク及び機会」を考慮に入れなければなりません。
「リスクと機会」の考慮は、環境目標の設定だけでなく、EMS全体の方向性を定める上で重要です。ISO14001では、組織の課題や要求事項、洗い出された環境側面、および順守義務がもたらしうる潜在的なリスクや機会を決定し、それに対処するための計画を策定するという流れの中で、この要素が位置づけられています。
環境目標を確立する際、「リスクと機会」を「考慮に入れる」という要求は、「考慮する」という表現よりも重い内容であり、その分析結果が環境目標の設定に反映されるべきであることを意味します。
組織が環境目標を設定し、達成することで目指すEMSの「意図した成果」には、以下の3点が挙げられます。
- 環境パフォーマンスの向上
- 順守義務を満たす
- 環境目標の達成
この意図した成果を達成し、継続的改善につなげるためには、潜在的な脅威(リスク)を予防し、潜在的な良い影響(機会)を最大限に活用できるよう、環境目標に反映させる必要があります。
したがって、環境目標は、「著しい環境側面」、「順守義務」、「リスクと機会」を考慮に入れた上で、組織の環境方針と整合性をもたせて決定されることが求められます。
3.環境目標の策定には5つの要求事項を満たす必要がある
環境目標については、ISOのためだけの活動とするよりも、通常の業務で実施していることをそのまま環境目標と繋げれると良いでしょう。
しかしながら、なんでも環境目標にできるかといえばそうではありません。
環境目標は、次の事項を満たさなければなりません。
a) 環境方針と整合している
b) (実行可能な場合)測定可能である
c) 監視する
d) 伝達する
e) 必要に応じて、更新する
引用:「ISO 14001:2015 環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」
⑴a) 環境方針と整合している
環境目標は、組織の定める環境方針(EMS全体の方向性)と一致している必要があります。
環境方針は、環境目標を設定するための枠組みを示すものと規定されており、トップマネジメントによって宣言されます。
もし環境目標が環境方針と整合していない場合、組織が進むべき方向性がバラバラになってしまう可能性があります。
環境方針についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
⑵b) (実行可能な場合)測定可能である
環境目標は、可能な限り測定できるように、定量的な数値を用いて設定することが推奨されます。
これは、目標の結果を感覚ではなく数値で表すことができるか、というポイントを満たすためです。
定量的な数値を用いることで、取り組みの成果と目標との差異を具体的に把握し、評価しやすくなります。
測定が実行可能でない場合はこの限りではありませんが、原則として量で表すことができるものが求められます。例えば、「製品生産時のCO2排出量を前年度の20%減を目指す」といった形です。
⑶c) 監視する
環境目標を設定した後は、その達成状況を継続的に確認し、評価する必要があります。
この「監視」がなければ、目標達成が可能かどうかを把握できず、目標達成のために途中で必要な軌道修正を行うことができなくなります。
目標達成に向けた活動の過程を確認することが、この要求事項のポイントとなります。
⑷d) 伝達する
設定した環境目標は、組織内のメンバーに理解され、共有されなければなりません。
目標が組織内に伝達されなければ、目標に向けた活動が実施されないためです。
環境目標は、組織にとって意味のある適切な目標を設定するだけでなく、それが組織内の関連する機能や階層において適切に伝達され、理解されていることが重要です。
⑸e) 必要に応じて、更新する
環境目標は、一度設定したら終わりではなく、組織の状況が変わったときなど、必要に応じて見直し、更新することが求められます。
この見直しと更新は、組織にとって意味のない目標を追いかけることを避けるために重要であり、目標について実現不可能ではないかなどの見直しを行うポイントとなります。
4.環境目標の実行計画に必要な5つのポイント

環境目標を策定したあとは、その目標達成のために実行計画を立てる必要があります。
目標が実際の活動につながるように具体的な計画を立てることが非常に重要で、
目標達成の可能性を高めるため、実行計画を立てる際に満たさなければならない以下の5つの事項は、計画の「具体性」を担保するために要求されています。
1)実施事項
2)必要な資源
3)責任者
4)達成期限
5)結果の評価方法
引用:「ISO 14001:2015 環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」
1) 実施事項
何をすべきかを具体的に明らかにします。
これは、目標を達成するために現場レベルで具体的に取り組むべき活動を指します。 例:環境目標が「加工効率アップによる製造での電気使用量の削減」であれば、「工程・製品ごとのエネルギー効率の調査と加工手順・条件の見直し」といった具体的な活動を定める必要があります。
2) 必要な資源
どのような資源が必要かを決定します。資源には、いわゆる人、モノ、金(予算、人材、設備など)が含まれます。
リソースが不足していると、目標達成が困難になる可能性があります。
例:上記の目標に対しては、「改善プロジェクトメンバー(製造技術部員、製造部員)」や「テスト用材料」などが資源として必要となるでしょう。
3) 責任者
誰が責任を持つかを明確にします。目標達成に向けた活動について、責任と権限を持つ担当者や部門を定めることが重要です。
4) 達成期限
いつまでに完了するか(達成時期)を設定します。
期限を定めることで、目標達成に向けたスケジュール感が明確になり、活動を計画的に進めることができます。
5) 結果の評価方法
結果をどのように評価するかを定めます。特に定量的な目標を設定している場合は、目標に対する達成基準や、結果の評価方法を明確にしておく必要があります。
例:上記の目標に対する評価方法として、「原単位あたりの電気使用量の比較」などが挙げられます。
5.環境目標の具体例は?紙ごみ電気だけではない!
ISO14001の環境目標は、必ずしも紙ごみや電気の削減に限定されるわけではありません。
環境目標を策定する際は、組織の環境方針と整合し、測定可能であるなどの要求事項を満たしていれば、その内容は多岐にわたります。
通常の業務で実施していることを環境目標と結びつけることができれば、ISOのためだけの活動を行う必要がなくなり、効率的です。
環境目標の具体例として、以下のような業務に関連した目標が、実際に審査を通過している事例として紹介されています。
| 業種 | 環境目標の例 | 環境負荷低減につながる考え方 |
|---|---|---|
| 製造業 | 不適合製品の削減、仕掛品発生の削減 | 不適合が減れば、再製造にかかる稼働電力や廃棄物、指示書等の紙の消費を削減できる。 |
| 印刷業 | ミスプリントの発生削減、再生紙の活用 | ミスプリントを減らすことは、紙ごみの削減に直結する。 |
| 運送業 | 運行ルートの見直し、人身・物損事故0 | 運行効率の改善は燃料消費の削減につながり、事故削減はそれに伴う廃棄物や資源の消費を防ぐ。 |
| 事務/管理 | 毎月の残業時間を10時間削減 | 残業時間の削減は、照明や空調など電力消費の削減につながる。 |
| 全社 | 環境教育セミナーを年3回開催し、従業員の環境問題への理解を深める | 従業員の意識向上は、環境配慮行動の定着につながる。 |
6. 環境目標を考えるコツ
環境目標を効果的に設定するポイントは以下の通りです。
⑴組織の経営方針・環境方針との整合性を保つ
環境目標は、最初に定めた環境方針と整合していることが必須要件です。環境方針は目標設定のための枠組みを示すため、目標が方針とズレていないかを確認することが重要です。
また、環境目標は、経営と切り離された「理想論」ではなく、自社の経営方針に適した、事業活動と両立可能な「実行可能な指針」であることが求められます。
⑵通常の業務とISO活動を繋げる
ISOのためだけに活動するのではなく、通常の業務で実施している改善活動をそのまま環境目標と繋げることが、運用のマンネリ化を防ぎます。
例えば、製造業であれば、不適合発生の減少など、品質やコストに関する目標が環境負荷低減にもつながるよう考慮します。
⑶測定可能で定量的な数値を用いる
(実行可能な場合)環境目標は測定可能であることが求められています。
原則として、定量的な数値(量で表すことができるもの)で設定し、「感覚」ではなく「数値」で結果を表せるようにします。
定量的な数値を用いることで、取り組みの成果と目標の差異を具体的に把握でき、評価が容易になります。
⑷現状の環境への影響を正確に評価する
目標を設定する前に、自社の事業活動や製品・サービスが環境に与えている現在の影響を正確に分析・評価することが重要です。
この分析を通して、著しい環境側面(特に影響度が高いもの)を特定し、その著しい側面に目標を反映させることが一般的です。
⑸継続的な監視と見直しを行う
目標を設定した後も、その達成状況を監視し、必要に応じて更新することが要求されています。
過程を確認できなければ、目標達成に必要な軌道修正が行えません。
また、組織の状況が変わった際に、実現不可能になっていないかなど、目標自体を見直すことが大切です。
7.まとめ
ISO14001における環境目標は、組織が定める環境方針と整合した具体的な達成事項です。
単なる環境活動ではなく、環境マネジメントシステム(EMS)の意図した成果を実現するため重要な役割を果たします。
効果的な環境目標を策定・運用するためには、以下の3つの事項を必ず考慮に入れ、5つの要求事項を満たす必要があります。
考慮すべき3つの事項:
- 著しい環境側面(環境への影響度が高い活動)
- 順守義務(法令や自社で決めたルール)
- リスクと機会(潜在的な脅威と良い影響)
満たすべき5つの要求事項:
- 環境方針と整合している
- (実行可能な場合)測定可能である
- 監視する
- 伝達する
- 必要に応じて、更新する
また、目標達成のためには、実施事項、必要な資源、責任者、達成期限、評価方法を明確にした実行計画の策定が不可欠です。通常の業務での改善活動とISO活動を結びつけ、測定可能で具体的な目標を設定し、継続的な監視と見直しを行うことで、ISOのためだけの活動ではなく、経営と両立した効果的な環境マネジメントを実現できます。
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