2023年12月21日
ISO9001の品質方針とは、マネジメントシステムの方針のことであり、必ず策定しなければならないものです。品質方針は組織が掲げるゴールに向かって進むための指針であり、マネジメントシステムの土台となります。
1.品質方針が必要な理由
品質マネジメントシステムが問題なく運用され、品質向上=顧客満足が高められれば方針は必要ないのでは、と考える方もいます。
しかし、結論として、品質方針は必要です。
そもそも方針とは、組織が掲げるゴール(理想の姿)に向けて、仕事を進められるよう策定するものです。
方針(方向性)が定まっていないと、従業員が各自の考えのみでバラバラに動いてしまい、結果組織が定めたゴールに向かった活動になっていないという状態になってしまう可能性があります。
組織が目指す方針(方向性)を提示し、共通認識を持たせることで同じゴールに向かった生産的な活動ができます。
また、方針という基準があることで、日々の活動をチェックし、間違いがあれば正すことができます。
2.品質方針について
⑴5.2 方針(規格要求事項)
5.2.1 品質方針の確立
トップマネジメントは、次の事項を満たす品質方針を確立し、実施し、維持しなければならない。
a) 組織の目的及び状況に対して適切であり、組織の戦略的な方向性を支援する。
b) 品質目標の設定のための枠組みを与える。
c) 適用される要求事項を満たすことへのコミットメントを含む。
d) 品質マネジメントシステムの継続的改善へのコミットメントを含む。5.2.2 品質方針の伝達 品質方針は、次に示す事項を満たさなければならない。
引用元:「ISO9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」
a) 文書化した情報として利用可能な状態にされ、維持される。
b) 組織内に伝達され、理解され、適用される。
c) 必要に応じて、密接に関連する利害関係者が入手可能である。
⑵要求事項の概要
IS09001の規格要求事項5.2.1では、品質方針に盛り込むべき内容が示されています。
自社の方針なので、社長や幹部の考えをそのまま落とし込む方向でよいのですが、「コミットメントを含む」という表現が使われている箇所については、注意が必要です。
コミットメントとは「約束」という意味があり、この項目を達成することを約束するという意味合いです。
「コミットメントを含む」と記載されている項目c)d)に関しては、「 適用される要求事項を満たす」「品質マネジメントシステムの継続的改善」という規格要求の表現をそのまま方針に盛り込むことが無難です。
規格要求事項5.2.2では、品質方針の扱い方が示されています。
端的にまとめると、方針を決めるだけでなく、文書化し、従業員が内容を理解し、取引先や協力会社から方針を求められたら提示できるようにしておきなさいということです。
最近は、ほとんどの会社がコーポレートサイトを持っています。
自社の方針を掲載することで、従業員や取引先がいつでも閲覧できるようになり、要求事項をクリアできます。
3.品質方針と品質目標の関連性
⑴品質方針と品質目標
品質方針は、マネジメントシステムの土台となるもので、組織が掲げるゴール(理想の姿)に向けて、仕事を進められるよう策定するものです。
一方の品質目標は、方針に向かって業務が進んでいることが分かるようにするために決める通過点のようなものです。その為、目標達成することで、品質方針の達成に近づいているかということを意識する必要があります。
品質目標を設定するだけでは意味がないので、誰が、いつ、どのようにアクションするかを計画し、進捗を監視する仕組みを作らなければなりません。
仮に、設定した目標が高すぎたとなった場合も、監視する仕組みがあることで、アクションを変更したり、時には目標自体を変更するということも臨機応変に対応しやすくなります。
⑵品質目標の作り方
品質目標も、方針と同じく具体的な内容は自社で決めてよいのですが、JISQ9001のゴールは「顧客満足」なので、まずは自社における顧客満足を定義するところから始めます。
例えば、クレームがない状態=顧客満足とするイメージです。
上記の場合、目標は「年間クレーム10件以内」などです。
この際、目標は測定可能であることが求められている為、出来るだけ数字を使って進捗を追えるよう工夫してください。
「年間クレーム10件以内」を達成するために、現場責任者が毎月5社の取引先に訪問して、納品後問題が起きていないか確認するという内容が具体的なアクションになります。
品質目標:年間クレーム10件以内
活動:現場責任者が毎月5社の取引先に訪問して、納品後問題が起きていないか確認する
目標と計画策定に関して、より具体的な話は、別の記事に記載しておりますのでこちらも参考にしてみてください。
4.品質方針の作り方(5.2.1 品質方針の確立)
品質方針は原則、自社の方針ですので社長や幹部の考えをそのまま落とし込む作り方で問題ありません。
例えば、既にある経営理念やクレド、コーポレートステートメントなどをそのまま品質方針として扱うこともできます。
ただし、規格要求事項と照らし合わせながら、この項目はここと紐づいているという規格要求との関連性を伝えられるようにする必要があります。
5.方針の周知・共有方法(5.2.2 品質方針の伝達)
品質方針は利害関係者に周知・伝達する必要があります。
具体的な方法として、コーポレートサイトへの掲載を上げましたが、他にも社内に掲示する方法や
朝礼で読み合わせする、ハンドブックに掲載するなど、自社の運用ルールに合わせて周知・共有することが望ましいです。
6.まとめ
ISO認証更新のために、方針・目標を決めるというよりも、自社の活動をよりよくするためにより実践的な内容を経営層が作り上げていくというイメージで、策定・運用すると良いのではないでしょうか。
この記事を読んでも、イマイチ作り方がわからない場合や方針を作ってみたので、一度見てほしい!など、ぜひ認証パートナーへご相談ください。
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