2025年9月12日

目次
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- 1.「8.1 運用の計画及び管理」の基本的な考え方
- (1) 計画的な運用管理の重要性
- (2) 8.1項が具体的に求めていること
- (3) 具体的な活用例
- (4) 運用管理の重要性の再確認
- 2.8.1項と他のISO9001要求事項の関連
- (1) 「4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス」との関係
- (2) 「6 計画」との関係
- (3) PDCAサイクルの中での位置付け
- 3.実際の現場での運用管理の具体例
- (1) 数値化で課題を明確にする
- (2) 管理の方法
- (3) 具体的な効果
- 4.運用の計画及び管理のポイント(注意点・コツ)
- (1) 目的を明確にして数値化する
- (2) 変更管理を徹底する
- (3) 外部委託先も同様に管理する
- (4) 継続的改善の視点を持つ
- 5.まとめ
製品・サービスの品質安定には、計画的な管理が不可欠です。
現場の慣習的な運用はトラブルを招きやすいため、ISO9001:2015は解決策として「8.1 運用の計画及び管理」を定めています。
この条項は、品質を守る仕組みを現場に落とし込むための「運用設計の指針」です。8.1項に従って運用することで品質のばらつきを防ぎ、安定した成果を得られます。
計画的な運用は、企業の信頼構築と顧客満足向上に繋がります。本稿では「8.1 運用の計画及び管理」の具体的な内容と、現場での活用ポイントを掘り下げて解説します。
読み進めることで、「8.1 運用の計画及び管理」が品質改善に直結する「使える仕組み」だと理解できるでしょう。他の要求事項との関連も示し、自社の運用管理を強化したい方へ具体的な改善のヒントを提示します。
1.「8.1 運用の計画及び管理」の基本的な考え方

ISO9001の8.1項は、製品やサービスを提供するプロセスを計画的に運用し、その成果を安定して得るための管理を求めています。
これには単なる作業手順の整備だけでなく、プロセスに関連するリスクの評価や必要資源の確保、外部委託先の管理まで含まれます。
(1) 計画的な運用管理の重要性
品質が不安定になる根本原因のひとつに、「運用が場当たり的で計画されていないこと」があります。
明確な基準や手順がないまま作業を行うと、個人の判断や経験に依存する部分が増え、ばらつきやミスが発生しやすくなります。さらに問題が起きても原因の追究や対策が難しく、再発防止が困難になります。
一方で、運用を計画的に管理することで、必要な品質基準が満たされているかを定量的に確認でき、問題の早期発見と改善が可能になります。
また、計画的な運用は属人化の防止やノウハウの共有にも寄与し、組織全体の品質レベルの底上げにつながります。
(2) 8.1項が具体的に求めていること
8.1項の要求事項は以下のとおりです。
組織は,次に示す事項の実施によって,製品及びサービスの提供に関する要求事項を満たすため,並びに箇条6で決定した取組みを実施するために必要なプロセスを,計画し,実施し,かつ,管理しなければならない(4.4 参照)。
a) 製品及びサービスに関する要求事項の明確化
引用元:「ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」
b) 次の事項に関する基準の設定
1) プロセス
2) 製品及びサービスの合否判定
c) 製品及びサービスの要求事項への適合を達成するために必要な資源の明確化
d) b) の基準に従った,プロセスの管理の実施
e) 次の目的のために必要な程度の,文書化した情報の明確化,維持及び保持
1) プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつ。
2) 製品及びサービスの要求事項への適合を実証する。
この計画のアウトプットは,組織の運用に適したものでなければならない。
組織は,計画した変更を管理し,意図しない変更によって生じた結果をレビューし,必要に応じて,有害な影響を軽減する処置をとらなければならない。
組織は,外部委託したプロセスが管理されていることを確実にしなければならない(8.4 参照) 。
つまり、8.1項では以下の項目を明確に管理することが求められています。
①製品・サービスの要求事項の明確化
顧客の要望や法規制など、満たすべき条件を具体的に把握し、設計や生産の指針とします。
②プロセスの合否基準の設定
各工程で合否の判断基準を定め、基準に満たない場合の対応策も決めておきます。
③必要資源の特定と確保
人材、設備、材料、情報など、適切な品質を保証するために必要な資源を明示し、確実に提供されるよう管理します。
④文書化された情報の管理
手順書やチェックリスト、記録など、運用を支える文書を整備し、最新版を保つ仕組みが必要です。
⑤外部委託先の管理
品質に影響を及ぼす外部委託先の選定・監督も自社の運用管理の一部として位置づけます。
これらはISO9001の要求事項全体の中でも特に「実際の運用をどう管理するか」という部分にフォーカスしたものです。計画に基づく管理を徹底することで、製品やサービスの品質が安定し、顧客満足度の向上につながります。
(3) 具体的な活用例
製造現場でよくある具体例として、工程ごとのチェックリストの導入があります。
例えば製品の寸法や仕上げ状態を確認するポイントを明文化し、作業者は必ず記録を残します。さらに、問題があった場合は即座に報告・対応できる体制を整えています。
サービス業であれば、顧客対応手順をマニュアル化し、担当者が対応内容をログに記録する仕組みがこれにあたります。これにより、トラブル発生時の迅速な原因調査や再発防止策の立案が可能です。
このように8.1条項の考え方は、現場の様々な業務に適用可能で、業種や規模を問わず品質安定の基盤となります。
(4) 運用管理の重要性の再確認
8.1の運用管理は、品質マネジメントシステム全体の「実行」の中核部分です。計画を立てるだけではなく、実際に運用し、成果を評価し改善していく一連の流れの基盤となります。これがしっかりしていないと、QMSの他の要素もうまく機能しません。
2.8.1項と他のISO9001要求事項の関連
ISO9001は要求事項同士が相互に連携し、QMS全体として機能します。8.1項は他の要求事項と強く結びつき、組織の運用管理の中心的な役割を果たしています。
(1) 「4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス」との関係
4.4項はQMS全体の枠組みを定め、どのようなプロセスが必要かを組織に考えさせます。
ここで設計されたプロセスを、8.1項が計画的に運用・管理する役割を担います。
つまり4.4項が設計段階、8.1項は実行段階という関係です。
(2) 「6 計画」との関係
6項ではリスクと機会の評価や品質目標の設定が行われます。
これを踏まえて、8.1項では具体的な運用計画を策定し、必要な管理手順や資源確保などを実行に移します。
6項で決めた方針を現場で具現化する役割が8.1にあります。
(3) PDCAサイクルの中での位置付け
ISO9001はPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを推奨しており、8.1項は「Do(実行)」と「Check(管理)」のフェーズに該当します。
計画された内容を実際に運用し、その結果をモニタリングして評価することが求められます。
この段階での適切な管理がないと、次の改善(Act)が効果的に行えません。
3.実際の現場での運用管理の具体例
運用管理を現場に落とし込むには、計画の数値化と進捗管理が重要なポイントとなります。
ここでは営業活動を例に具体的な方法を紹介します。
(1) 数値化で課題を明確にする
営業現場で「1件の成約」を得るための必要なアクション数を過去の実績データから逆算して数値化します。例えば、
①「見込み案件を8件確保する」
②その内訳をさらに分解すると
・電話で4件の見込み獲得
・訪問アポイントを2件設定
③紹介による案件1件
こうした具体的な目標を設定し、担当者は日々の活動を記録します。
(2) 管理の方法
活動状況は営業支援システム(SFA)やエクセル管理表に入力し、上司や管理者が週次でレビューします。数字の進捗が悪ければ原因を話し合い、改善策を検討します。
例えば、電話でのアポイント獲得率が低い場合はトークスクリプトの見直しや研修を行います。
(3) 具体的な効果
このように数値で管理し、問題を早期に発見して改善策を実行することで、営業効率が向上し成約率が安定します。属人的な動きから脱却し、誰でも再現できる仕組みができるのです。
4.運用の計画及び管理のポイント(注意点・コツ)
運用管理を現場に定着させるにはいくつかの注意点やコツがあります。
(1) 目的を明確にして数値化する
まずは「なぜ運用管理をするのか」という目的を全員に共有し、成果指標を明確にします。数値で管理できる形に落とし込み、進捗を見える化することが重要です。
(2) 変更管理を徹底する
現場の状況や顧客要求が変わることは常にあります。運用に変更があった場合は、影響範囲を評価し、必要に応じて手順の改訂や教育を実施します。
変更管理が甘いと品質リスクが増大します。
(3) 外部委託先も同様に管理する
外部委託先がある場合、彼らの運用管理も自社と同様に厳格に行う必要があります。契約時に品質基準や管理方法を明示し、定期的に監査や評価を行うことで品質を確保します。
(4) 継続的改善の視点を持つ
運用管理は一度整備したら終わりではありません。運用状況を定期的に見直し、問題点や改善点を洗い出して更新していく「継続的改善」が求められます。
5.まとめ
ISO9001の「8.1 運用の計画及び管理」は、品質を守るための運用設計の根幹を成す重要な要素です。
- プロセスや基準、必要資源を明確にし、現場で確実に管理
- 他条文との連携によりQMS全体の効果を高める
- 数値化や進捗管理による現場運用の見える化と問題解決
- 変更管理や外部委託先管理を徹底し品質リスクを低減
- 継続的改善を繰り返しQMSの成熟を図る
これらを踏まえた運用管理の仕組みづくりは、企業の信頼向上や顧客満足の向上に直結します。
製造業だけでなく、サービス業や小規模事業者でも活用できる実践的な内容です。ぜひ、自社の運用管理を見直し、ISO9001の8.1項を最大限に活用して品質を守り続けてください。
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