2023年7月21日
「ISO9001 8.6 製品及びサービスのリリース」とは、
顧客に製品及びサービスを確実に提供する場合、提供までのプロセスの安定化、品質の確認を要求している項番です。
「ISO9001 8.6 製品及びサービスのリリース」を理解し、会社にあったルールを作っていきましょう。
1.ISO9001:2015 (QMS) 「8.6 製品及びサービスのリリース」要求事項
JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム - 要求事項及び利用の手引において、要求事項は以下の通りです。
組織は,製品及びサービスの要求事項を満たしていることを検証するために,適切な段階において,計画した取決めを実施しなければならない。
計画した取決めが問題なく完了するまでは,顧客への製品及びサービスのリリースを行ってはならない。
ただし,当該の権限をもつ者が承認し,かつ,顧客が承認したとき(該当する場合には,必ず)は,この
限りではない。
組織は,製品及びサービスのリリースについて文書化した情報を保持しなければならない。これには,
次の事項を含まなければならない。
a) 合否判定基準への適合の証拠
b) リリースを正式に許可した人(又は人々)に対するトレーサビリティ
「ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」引用
簡単にまとめると、「次工程への引き渡し」をするために、誰が合格を出したのかわかるように記録を残そうという意味です。
2.ISOにおいてのトレーサビリティとは
ISO9001:2015 (QMS) 「8.6 製品及びサービスのリリース」の要求事項の中に「トレーサビリティ」という言葉が出てきます。
ISOでいう「トレーサビリティ」とは、製品やサービスの開発・製造・配送・使用・廃棄等の各段階でその履歴や経路を明確に追跡することを指します。
ISO9001:2000年版では、7.5.3項識別及びトレーサビリティには、「トレーサビリティが要求事項となっている場合には、組織は、製品について固有の識別を管理し、記録すること。」とありました。
つまり、ISO9001認証を取得するにあたって、製品やサービスをリリースするまでの各段階の追跡プロセスを標準化し、製品の安全性・品質・信頼性を確保するための手法を確立しなければなりません。
3.8.6 製品及びサービスのリリース
(1)リリースの意味とは
8.6では、製品やサービスが顧客の要件に適合していることを確認し、リリースするための要件が示されています。
また、製品やサービスの品質を確保し、リリース前の適切な確認と文書化を行うことによって、顧客の要件を満たすことを目的としています。
これにより、不適合な製品やサービスが顧客に提供されるリスクを最小限に抑えることができます。
ISO9001:2008の「8.2.4 製品の監視及び測定」「7.4.3 購買製品の検証」がひとかたまりになりました。
製品・サービスの検査や出荷許可の手順の確立、記録の保持を求めています。
また、2008年版「~リリースを正式に許可した人を、記録しておかなければならない」から「〜許可した人に対するトレーサビリティを提供しなければならない」に変更されました。だれが許可したかわかるようになっていればよいです。
リリース、という言葉がまたもや拒絶反応やクエスチョンマークを呼びそうな規格。
ここで言うリリースとは、平たく言うと「次工程への引き渡し」を意味しています。
・ 受入検査=合格したから、在庫置き場や作業現場に持って行って良い
・ 工程内検査=合格したから、次の工程に持って行って良い
・ 最終・出荷検査=合格したから、客先へ出荷して良い
以上のように、検査という仕事を【リリースのための関門】として適切な内容で設計し、実施しなさいという要求事項です。
(2)材料・部品の受入検査は、必ず自社で抜き取り検査をしなくてはならないのか
材料や部品の受入検査に関する要求事項もありますが、自社での抜き取り検査を必ずしも行う必要はありません。
材料・部品メーカーが行った検査の記録を受け取るケースもあるため、いずれの場合も受け取った記録に、確認した者が捺印・サインする等して記録を残す必要があります。
受け入れた材料や部品が組織の規定要件を満たしていることを確認するための活動の必要性があることを示しており、抜き取り検査は、その一つの方法ですが、他の方法(例:サンプリング検査など)を使用することも可能です。
もちろん逆に言えば、品質のバラツキが大きい製品である場合や、厳しい基準への適合が求められる場合、または特殊な計測を行わないと品質が保証できないような製品については、より厳しい検査を自社で行う必要がある場合もあります。
その製品に求められる品質などによって、その必要性は異なります。そこを客観的に見極めてルール作りを行うことが、身の丈にあったシステム作りとしては大切なところです。
厳しい管理基準を設けた一部の製品の管理方法を、管理基準のゆるい製品にまで適用して、現場が立ち行かなくなったケース等もありますので、十分注意が必要です。
(3)受入検査では、必ず自社で寸法を測って記録しなくてはならないのか
受け取った記録に、確認した者が捺印・サインする等して記録を残す必要はありますが、寸法検査が必ず必要だというわけではありませんので、注意が必要です。
もちろん(2)と同様に、品質のバラツキが大きい製品である場合等、その製品に求められる品質などによって、ルールを決めて対応することも有効です。
必要性に応じてルールや基準を作りましょう。
まとめ
ISO9001 8.6 製品及びサービスのリリースについて、「次工程への引き渡し」をするために、誰が合格を出したのかわかるように記録を残す必要があります。
また、材料・部品の受入検査は、必ず自社で抜き取り検査をしなくても良いですし、必ず自社で寸法を測って記録しなくてもよいです。
いずれの場合も受け取った記録に、確認した者が捺印・サインする等して記録を残す必要はありますが、
抜き取り検査や寸法検査が必ず必要だというわけではありませんので、注意が必要です。
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