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ISO14001:2015年度版(EMS)規格改定「環境側面」規格解釈

スタッフ写真
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2019年6月14日

ISO14001:2015(EMS)6.1.2項「環境側面」について書いていきたいと思います。

まず、JISQ14001:2015(ジスキュー14001:2015)に何と書いてあるか確認してみましょう。

基本の「き」、環境側面

まず、少し基本に立ち返り、「環境側面」とは一体何のことを指しているのかを考えて行きたいと思います。新規格の「3定義」では、「環境側面」(及び「環境」)は以下のように定義されています。

3.2.1 環境
大気、水、土地、天然資源、植物、動物人及びそれらの相互関係を含む、組織(3.1.4)の活動をとりまくもの。
注記1 とりまくものは組織内から、近隣地域、地方及び地球規模のシステムにまで広がり得る。
注記2 とりまくものは、生物多様性、生態系、気候又はその他の特性の観点からあらわされることもる。

3.2.2 環境側面
環境(3.2.1)と相互に作用する、又は相互に作用する可能性がある、組織(3.1.4)の活動又は製品又はサービスの要素。
注記1 環境側面は、環境影響(3.2.4)をもたらす可能性がある。著しい環境側面は、一つ又は複数の著しい環境影響を与える又は与える可能性がある。
注記2 組織は、一つ又は複数の基準を適用して著しい環境側面を決定する。

3.2.4 環境影響
有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に組織(3.1.4)の環境側面(3.2.2)から生じる、環境(3.2.1)に対する変化。

これを見ると、「環境側面」とは「企業の活動や製品、サービス」と「環境」との関係性のことを指していることが分かります。この関係性を少し言い換えると、『繋がり』と言えるため、「企業の活動や製品サービスが、環境にどのような影響を与えるのか?」という繋がりのことを「環境側面」と呼ぶことができます。

少し具体的に考えて見ましょう。

例えば「企業の活動や製品、サービス」として、「営業業務」で「車を走らせる」という活動があったとします。この「営業業務」で実際に「車を走らせる」ためには、当然、「ガソリン」が必要になってきます。(ガソリン使用車の場合)そしてこの「ガソリン」というのは、どこか遠い国で採取された原油が採取されることで存在しています。つまり御社の「車を走らせる」という活動と、地球規模の「原油が減る」という事象とは、なんらかの関係で繋がっていると言えるのです。

それではどんな関係で繋がっているのでしょう?これに先程の「ガソリンの使用」という事項が出てきます。つまり、「車を走らせる」という「企業の活動や製品、サービス」と、「原油が減る」という「環境」は、「ガソリンの使用」という事項で繋がっているのです。従って、この繋がりであると言える、「ガソリンの使用」が「環境側面」になるということです。

またそれとは別に、車が走ることで「ガス」が排出されるでしょう。(この傾向は減ってきていますが・・・)このガスには、「窒素酸化物」が含まれており、「窒素酸化物」は大気を汚染する成分とされています。そう考えると、「車を走らせる」ことで「ガスが排出」され「大気が汚染する」ということになるため、先程の例と同じように、「車を走らせる」という「企業の活動や製品、サービス」と、「大気が汚染する」という「環境」は、「ガスが排出」という事項で繋がっていると言えます。従って、「ガスが排出」は「環境側面」であるということです。

このように、「企業の活動や製品、サービス」は様々な「環境」との繋がりをもっており、この繋がりを「環境側面」と呼んでいるのです。

新たなISO14001:2015(EMS)

新たなISO14001:2015(EMS)では、環境側面を特定する際にライフサイクルの視点を考慮することを求めています。

「製品やサービスのライフサイクル」を一緒に捉えておくと、色々な角度から「環境側面」を考えることが出来ます。大手企業では、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」という分析手法を実施している場合もありますが、ここではそこまで複雑に考える必要はなく、単に資源採取から製造,流通,使用,廃棄にいたるまでの製品の一生涯である「ライフサイクル」を捉えておくだけで地球規模での環境との接点をより正確に、漏れなく抽出することができます。

例えば前述の「車を走らせる」という活動で「ガソリンの使用」が環境側面として抽出されていました。このガソリンは、実際には原油が採取され、保管され、そこから日本に輸入されます。その後、レギュラーガソリン等に加工され、さらに各ガソリンスタンドに運搬され、ガソリンスタンドで保管されます。そこで初めて「車を走らせる」ためのガソリンとして使用できる事になります。その後ガソリンは「車を走らせる」ことで燃焼し、ガスとなって大気に排出されるという「ライフサイクル」が存在しています。

つまり、「車を走らせる」という活動は、ガソリンの「ライフサイクル」の1部であり、地球規模の視点で考えるためには、原油が採取されるところから廃棄させるところまでを考えなければならないのです。また、先程は「大気が汚染する」というところでとどめましたが、実際には、大気の汚染により酸性雨が発生し、野生生物にも影響が及ぼされます。そう考えるとただ「車を走らせる」というところだけを見ていても、中々地球規模の「環境」までを考えることはできないのです。

このように、実際には自社の活動や製品、サービスが、どのように生み出され、どのように廃棄し、環境と関わっていくのかを考えるためには、それらのライフサイクルを捉えてみることで、「環境側面」を考えるために有効活用することができるのです。

ISO14001:2015(EMS)になったことで変更された点は規格の項番が変更になったことぐらいなので、6.1.2項「環境側面」については既存のマニュアルの内容を変更することなくISO14001:2015(EMS)に対応することが可能です。少し環境側面を考える際に、頭の片隅において頂きたいのが、新規格の「内部、外部の課題」「リスク及び機会」も考える必要があります。

例えば、社内担当者の高齢化の状況を「内部の課題」とし、これが将来的には「好ましくないリスク」として捉えた結果、若手人員の投入をしたとします。当然、力量不足の方が担当することになります。環境側面として「不良品発生の発生」が考えられます。そしてこれ自体が、さらなる「好ましくないリスク」とも言えそうです。つまり、環境側面自体が課題やリスクを考えるきっかけを伴う点だけ注意しましょう。

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