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ISO9001とQMSの違いを完全解説。関係性から導入・運用までまるわかりガイド

2025年9月9日

ISO9001とQMSの違いを完全解説。関係性から導入・運用までまるわかりガイド

「ISO9001とQMSの違いがよくわからない」

「ISO9001とQMSは、結局何が違うの?」

このような疑問をお持ちではないでしょうか。

ビジネスにおいて品質管理の重要性が高まるなか、ISO9001認証取得を検討する企業が増えています。

しかし、ISO9001とQMSの関係性を十分に理解しないまま、認証取得を進めてしまうと、形式的な運用に陥ってしまうリスクがあります。

この記事では、ISO9001とQMSの基本的な違いから、両者の関係性、実際の運用方法まで体系的に解説します。

最後までお読みいただくと、ISO9001とQMSの違いを完全に理解し、自社に最適な品質マネジメントシステム(QMS)を構築・運用できるようになります。

ビジネスの信頼性を高める第一歩を踏み出してください。

1.ISO9001とは

ISO9001は、組織が安定して「顧客要求と法規制を満たす製品・サービス」を提供できるようにするための国際規格です。

要求事項は、組織の状況把握、リーダーシップ、計画、支援、運用、評価、改善という流れで構成され、プロセスアプローチとリスクベース思考を核にしています。

現行の版は「ISO9001:2015」で、以下のポイントが特徴です。

  • 要求事項ベース:必ず行うべき「何を達成するか(要求)」を示し、「どう実施するか(手段)」は組織の裁量に任されます。
  • プロセスアプローチとPDCA:プロセス間の相互作用を管理し、計画(P)→実行(D)→評価(C)→改善(A)を回すことを重視します。
  • リスクベース思考:リスクと機会を識別して対処することが求められます。
  • 文書化の柔軟性:2015改訂以降は「品質マニュアルの必須化」はなくなり、「必要な文書化した情報(documented information)」を整備すれば良いとされています。

JIS Q 9001は、ISO9001を日本の国家規格として翻訳・同等採用したものです。要求事項は同一で、国内での引用や契約書、審査書類でJIS表記が使われる場合があります。認証書には「ISO9001」だけ、または「JIS Q 9001/ISO9001」と併記されることがありますが、実務的な運用や審査の観点は同じです。

2.QMS(品質マネジメントシステム)とは

QMSは組織が品質をマネジメントするための仕組み全体を指します。

具体的には以下を含みます。

  • 品質方針・品質目標
  • プロセスと手順(受注、設計、購買、生産、出荷、アフターサービスなど)
  • 役割と責任(トップマネジメント、品質責任者、各プロセスオーナー)
  • 測定・監視(不適合件数、顧客満足度、納期遵守率などのKPI)
  • 内部監査、是正処置、継続的改善の仕組み

重要なのは「QMSは組織ごとに異なる」点です。

業種・規模・提供する製品・サービスに合わせて設計します。

【具体例】

  • 製造業の場合:製造工程のチェックリスト、不良品発生時の報告・対策手順、検査基準など
  • サービス業の場合:顧客対応マニュアル、サービス提供後のアンケート、クレーム対応手順など

3.QMSとISO9001の関係

QMS(品質マネジメントシステム)とISO9001の関係は、「仕組み」と「基準」の関係に例えられます。

QMSは、組織が独自に構築し運用する「仕組み」そのものであり、ISO9001はそのQMSが満たすべき「国際的な要求事項(ルールブック)」です。言い換えると、ISO9001は「設計図」、QMSはその設計図に基づいて建てられた「建物」、そして日々の運用が「暮らし」にあたります。

ISO9001に適合したQMSを構築し、実際に運用した上で、その実効性が第三者機関による審査で確認されると「ISO9001認証」が発行されます。

ただし、QMSを作れば必ず認証が得られるわけではなく、ISO9001の要求事項に沿った運用が求められます。この関係性を理解することが、ISO9001とQMSの違いを正しく把握する上で重要となってきます。

4.ISO9001とQMSの違いとは?

観点ISO9001QMS実務の意味
性質国際規格(要求事項)組織固有の運用システム規格は「何を」、

QMSは「どうやるか」

目的適合の基準提供と共通言語品質と顧客満足の実現目的は一致、役割が異なる
導入・取得認証を受ける構築・運用するまずQMSを作り、結果として認証へ
審査第三者審査で適合を確認内部監査で有効性を確認外部は適合、

内部は有効性に重点

柔軟性要求事項は固定

(変更不可)

業務に合わせて設計可能現場に合う最小限で十分に効果

つまり、「ISO9001はQMSを構築するための基準であり、QMSはISO9001の要求事項を満たすように構築された具体的なシステムである」という関係です。

5.ISO9001とQMSの違いを混同しやすい理由とよくある誤解

ISO9001とQMS(品質マネジメントシステム)の違いを混同しやすい理由は、多くの企業がISO9001の認証取得を目的としてQMSを構築するため、「ISO9001=QMS」という誤解が広まっていることにあります。

以下に、よくある誤解と正しい理解をまとめます。

(1)よくある誤解と正しい理解

①誤解:ISO9001 = QMSそのもの  

    正解:ISO9001はQMSが満たすべき要求事項を定めた規格であり、QMSは各組織が独自に構築・運用する仕組みです。

②誤解:ISO9001を導入するには、細かな手順書やマニュアルが必須

   正解:ISO9001は細かな手順を規定していません。必要な「文書化した情報」を業務に応じて用意すればよく、品質マニュアルも必須ではありません。ただし、全体像を共有するために簡潔なマニュアルは有用です。

③誤解:ISO9001認証を取得すれば、品質が自動的に向上する

 正解:認証は「仕組みがある」ことを確認するものであり、品質向上は日々の運用と継続的な改善の結果です。認証取得はゴールではなくスタートラインです。

④誤解:ISO9001は製造業や大企業向けで、小規模事業には不要

 正解: ISO9001は業種や規模を問わず適用可能です。むしろ、小規模事業にとっては業務の整備やリスク低減、取引機会の拡大に役立ちます。

⑤誤解:ISO9001認証=高品質な製品・サービス

 正解:認証は「品質を管理する仕組みがある」ことを証明するものであり、製品やサービスそのものの品質を直接保証するものではありません。

(2)注意点

  • ISO9001は「最低限必要な要件」を示す規格であり、認証取得後も継続的な改善が求められます。
  • 文書は運用を支えるための最小限でよく、現場で活用されない文書は価値を生みません。
  • 自社に不適用な要求事項(例:設計開発がない場合)は、正当に除外することが可能です。

ISO9001認証を取得する際は、これらの誤解を避け、QMSを自社の業務に適した形で構築・運用することが大切です。

6.QMSでは何をするのか

QMSの運用は、組織の規模や事業内容によって異なりますが、ISO9001の要求事項に基づき、主に以下の活動を行います。

(1)品質方針・目標の設定

具体例:

「不良品発生率を〇〇%削減する」

「顧客アンケート満足度を〇〇点まで向上させる」といった具体的な目標を定める。

(2)文書化と記録の管理

具体例:業務マニュアル、作業手順書、検査記録、教育記録などを作成し、適切に保管する。

(3)PDCAサイクルの実施

  • 計画(Plan):品質目標を達成するための計画を立てる。
  • 実行(Do):計画に基づき、日々の業務を遂行する。
  • 評価(Check):計画通りに実施されているか、目標は達成できているかを内部監査やマネジメントレビューで確認する。
  • 改善(Act):評価結果を基に、不具合の原因を特定し、再発防止策を講じる。

(4)内部監査の実施

自社のQMSがISO9001の要求事項を満たしているか、また適切に運用されているかを定期的にチェックします。

(5)マネジメントレビューの実施

経営層がQMSの有効性を評価し、改善の指示や方針の見直しを行います。

7.ISO9001を導入するメリットとQMS運用の効果

ISO9001の認証取得は、対外的な信頼性の向上だけでなく、組織内部にも大きな効果をもたらします。

顧客・取引先からの信頼性向上

国際規格に適合した品質管理体制が証明され、新規取引の獲得や競合他社との差別化につながります。

【具体例】

入札条件にISO9001認証が含まれる場合がある

組織内の業務標準化・効率化

業務プロセスが明確になり、担当者による品質のばらつきを防ぎます。

【具体例】

新入社員の教育がスムーズになる、担当者不在時でも業務が滞らない

継続的な改善の文化の醸成

PDCAサイクルが定着し、全従業員が品質向上に主体的に取り組むようになります。

【具体例】

業務改善提案が活発化し、生産性向上につながる

企業価値の向上

社会的信頼性が高まり、ブランドイメージの向上や優秀な人材の確保につながります。

【具体例】

投資家や金融機関からの評価が高まる可能性がある

8.ISO9001認証取得までの流れと具体的な進め方

ここでは、現場で活用できる工程表や目安スケジュール、重要なタスクについてご紹介します。

中小企業向けに、実践的で現実的な例を示します。

(1)概要ステップ(16ステップ)

 ①経営判断と範囲の決定(適用除外の明確化)
 ②プロジェクト体制の確立(プロジェクトリーダー、品質責任者、プロセスオーナー)
 ③現状把握(ギャップ分析)
 ④品質方針・品質目標の策定
 ⑤必要なプロセスの定義(プロセスマップ作成)
 ⑥文書化(手順書、記録様式の作成)
 ⑦教育・周知(全員へ方針・手順の説明)
 ⑧運用開始(記録収集と運用)
 ⑨内部監査の実施(是正処置の実施)
 ⑩マネジメントレビューの実施
 ⑪予備審査(任意のプレ審査)
 ⑫認証機関選定・申請(見積取得、日程調整)
 ⑬文書審査
 ⑭現地審査
 ⑮不適合対応(指摘事項の是正)
 ⑯認証取得・サーベイランス(定期監査)

(2)スケジュール例(中小企業向け、目安)

  • 準備期間(計画〜文書化):1〜2か月
  • 運用定着期間(記録収集、内部監査まで):2〜4か月
  • 認証申請〜審査:1〜2か月(認証機関のスケジュールに依存)

合計:おおむね 3〜8か月が多い。

   ただし業務が複雑、設計開発が多い、外部要員が少ない場合は 9〜12か月を見込む。

(3)認証審査のポイント

【文書審査】

スコープ、品質方針、プロセスマップ、主要手順、記録の保管場所が確認されます。

この段階で「文書が実際に運用されているか」を確認し、現地審査に進むかどうかが判断されます。

【現地審査】

現場での運用証拠(職員インタビュー、記録、工程確認)を重点的に確認されます。

トップマネジメントの関与や改善の実績を示すことが重要です。

(4)認証準備で用意すべき書類・記録チェックリスト(実務用)

  • 会社概要と適用範囲の定義(スコープ文書)
  • 品質方針・品質目標(最新)
  • プロセスマップと各プロセスのフロー図
  • 手順書/作業指示(主要工程)
  • 内部監査計画と監査報告書(過去12か月分)
  • マネジメントレビュー議事録(過去12か月分)
  • 是正処置記録(不適合の記録・原因分析・対策)
  • 顧客苦情記録・対応履歴
  • 受入検査・出荷検査記録、検査設備の管理記録
  • 教育・訓練記録、資格証明(必要なら)
  • 購買管理(発注書、受入検査、仕入先評価)

(5)認証監査でよく指摘される項目と対策

①指摘:トップマネジメントの関与が形式的。

対策:経営層が品質方針・目標に対して実行した具体的事例(レビューでの決定、資源配分、目標達成のフォロー)を提示する。

②指摘:是正処置の根本原因が不十分。

対策:5 Why 等で深掘りした分析資料と再発防止の仕組みを示す。

③指摘:記録がない/サンプリングしかない。

対策:監査日前にサンプル記録を準備し、いつでも提示できる状態にしておく。

9.まとめ

本記事では、「ISO9001とQMSの違い」をテーマに解説しました。

要点をまとめておきましょう。

ISO9001について、以下を解説しました。

  • 国際規格であり、品質マネジメントシステムに「何をすべきか」という要求事項を定めたものです。
  • JIS Q 9001は、ISO9001を日本国内向けに翻訳したもので、内容は同一です。
  • 2015年版以降、リスクベース思考や文書化の柔軟性が重視されています。

QMS(品質マネジメントシステム)について、以下を解説しました。

  • 組織固有の「仕組み」であり、ISO9001の要求事項に基づいて各社が独自に構築・運用するものです。
  • 品質方針・目標の設定から、PDCAサイクル、内部監査、マネジメントレビューまで、具体的な運用活動全体を指します。

ISO9001とQMSの違いについては、以下のとおりです。

  • ISO9001は「規格」、QMSは「実体」です。ISO9001はあくまで「設計図」であり、QMSがその「建物」にあたります。
  • ISO9001認証は「仕組みがある」ことを第三者が証明するもので、認証取得はゴールではなくスタートラインです。

認証取得と運用のポイント

  • ISO9001の要求事項を自社の業務に合った形で適用することが重要です。
  • 認証取得までの期間は中小企業の場合、3〜8か月程度が目安です。
  • 審査では、トップマネジメントの関与や是正処置の実効性など、運用の実態が特に重視されます。

本記事を参考に、ISO9001とQMSの関係性を正しく理解し、自社のQMSを効果的に運用してビジネスの成長に繋げていただければ幸いです。

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