2025年9月25日
ISO9001における不適合製品の管理とは?
ISO9001規格は、企業の品質マネジメントシステム(QMS)の基本となる規格です。その中でも「不適合製品の管理」は品質保証の根幹を成す重要な要素であり、組織が提供する製品やサービスの品質維持に直接関わります。 不適合製 […]

2025年10月17日

「内部監査や是正処置で失敗してしまうのでは…」
このような不安をお持ちではないでしょうか。
ISOの運用において、内部監査と是正処置は組織の信頼性を高めるうえで欠かせないプロセスです。
しかし、監査の進め方や不適合への対応を正しく理解しないまま進めてしまうと、表面的なチェックや応急処置で終わってしまい、同じ問題を繰り返してしまうリスクがあります。
本コラムでは、内部監査の基本的な考え方から、不適合を正しく判断するポイント、そして是正処置を効果的に進めるための「5つのステップ」まで、体系的に解説します。
最後までお読みいただくことで、内部監査と是正処置を「義務」ではなく「組織改善のチャンス」として活用できるようになり、再発防止と継続的改善につなげる第一歩を踏み出していただけます。

ISOの内部監査は、単なる欠点探しではなく、組織のマネジメントシステムがISO規格の要求事項を満たし、効果的に機能しているかを確認し、継続的な改善を促すことを目的としています。
内部監査は「組織の健康診断」に例えられ、業務プロセスや仕組みに潜む問題点を見つけ、改善することで、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。
具体的には、規格要求事項や社内規程、顧客要求、法令順守の適合状況を確認し、マネジメントシステムの有効性を評価して改善の機会を明確化します。また、リスクと機会への対応が計画通り運用され、成果(KPIや目標)が達成されているかを確かめる役割も担います。
さらに、内部監査は経営層へ実態と課題を客観的証拠に基づいて報告し、資源配分や方針見直しにつなげる重要な役割を果たします。日常業務に埋もれがちなばらつきやムダ、属人化を可視化し、是正処置や予防措置の起点となることも狙いの一つです。
ただし、内部監査は“問題探し”ではなく、要求事項への適合性と有効性の確認を主眼に置くことが重要です。また、形骸化を防ぐため、年1回の形式的な実施にとどまらず、リスクの高いプロセスに重点を置いた監査計画を立てることが求められます。
内部監査と外部審査はよく混同されますが、明確な違いがあります。
外部審査は「試験」のようなもので、内部監査は「予習」や「模擬試験」と考えましょう。外部審査(=認証審査)で不適合を出さないためにも、内部監査で徹底的に自己点検し、是正処置を進めておくことが極めて重要です。
| 観点 | 内部監査 | 外部審査(=認証審査) |
| 目的 | 自社マネジメントシステムの適合性・有効性確認と改善 | 認証の維持・更新の可否判断 |
| 重点 | 会社の目標達成、リスク対応、業務改善 | 規格要求への適合確認 |
| 柔軟性 | 高い(重点プロセスへ配分可) | 限定的(審査プログラムに従う) |
| 成果物 | 不適合・観察事項・改善提案、是正処置要求 | 不適合・観察事項、是正処置要求 |
| 価値 | 自社の経営課題に直結する示唆 | 認証の客観的裏付け |
内部監査では、「監査基準」と「客観的証拠」を照らし合わせることが大切です。
ISO規格の要求事項、組織の規程やマニュアル、手順書、法規、契約・顧客要求、目標・KPI、リスク対応計画など、「何が正しい状態か」を示すルール。
記録、データ、帳票、ログ、画面、品物、会話の事実、観察結果など、「実際に何が起こっているか」を示す再現可能で検証可能な事実。
これらを基に、基準と実際の運用状況を比較し、不適合があれば指摘します。不適合の指摘は、必ず「客観的証拠に基づいているか」が問われます。
監査では、基準と証拠の合致/不一致を淡々と判定することが求められます。曖昧な表現(例:多分、だいたい etc.)は避け、具体的な事実に基づいて評価を行うことが大切です。
是正処置の目的は「再発防止」です。同じ問題が二度と起こらないよう、根本原因を突き止め、効果的な対策を講じることが重要です。そのためには、適合・不適合の正しい判断基準を理解し、適切に対応する必要があります。
例:「手順書通りに作業が行われていない」
「必要な記録が残されていない」
例:「記録は取れているが、フォーマットが手書きで読みにくい」
「データ入力の手順が複雑でミスを誘発しやすい」
いきなり不適合とするのではなく、まずは「なぜこの状態になっているか」を関係者にヒアリングし、事実関係を明確にすることが大切です。不適合の指摘は、感情や憶測を排除し、客観的な事実に基づいて行いましょう。
是正処置の目的は「再発防止」であり、根本原因を特定し、効果的な対策を講じることが重要です。以下の5つのステップで進めることで、是正処置を確実に実施できます。
不適合を特定し、具体的な内容を記録します。記録には以下を含めると効果的です。
「文書管理手順(版A、4.2)に“承認後は改訂履歴に記載”とあるが、2025/07/01〜2025/07/31の改訂3件(DOC-20250701-01/…-03)に履歴記載がない。」
「記録が不足している。」
表面的な原因ではなく、真の根本原因を探るために「なぜ?」を繰り返します。
例:「文書改訂履歴の未記載」
根本原因に基づき、具体的な対策を立案します。計画には以下の要素を含めると効果的です。
計画に基づき、是正処置を実施し、記録を残します。記録には以下を含めます。
是正処置の効果を確認し、再発防止が達成されているかを評価します。
是正処置は、単なる問題解決ではなく、組織全体の改善と成長につながる重要なプロセスです。適切な手順を踏むことで、再発防止と業務の効率化を実現できます。
「製品の出荷検査記録に記入漏れが多い」という不適合に対し、「担当者全員で気を付けるように」と注意喚起するだけで終了してしまう。
これは一時的な「応急処置」であり、根本原因(例:マニュアルの不備、教育不足)を解決していないため、再発のリスクが高い。
×「次回から注意」
○「承認ワークフローに“改訂履歴未記入時は承認不可”の制御を追加し、テストケース#01〜#05で期待どおり動作を確認」
是正処置を不適合を出した部署に丸投げし、進捗管理をしない。結果、現場で後回しにされ、完了が遅れる。
是正処置は組織全体で取り組むべき活動であり、個人や部署に任せきりでは形骸化する。
「出荷検査記録の記入漏れ」という不適合の是正処置として、原因となった「マニュアルの改訂」と「再教育の実施」を他部署にも適用する。
同様の問題が他部署でも発生している可能性があるため、一つの不適合から得た学びを「横展開」することで、組織全体のプロセスを効率的に改善できる。
これらの事例から、是正処置を単なる「応急処置」や「担当者任せ」で終わらせず、組織全体で取り組み、学びを横展開することが、継続的改善の鍵であることがわかります。
是正処置は、発生した問題への対応にとどまらず、再発防止や予防的な取り組みを通じて、組織全体のリスクを低減することが求められます。
例:「新入社員が配属される部署では、初任者研修に監査基準の理解度テストを導入する」
| 内容 | ✓ |
| 手順改訂時に関連ツール更新の観点がある | |
| 承認ゲートに自動チェックがある | |
| 重要記録はシステムで必須化されている | |
| 新任者向けオンボーディングに該当手順が含まれる | |
| KPIに逸脱率や再発率が定義されている |
ISOマネジメントシステムの本質は、継続的改善(PDCAサイクル)を通じて、組織のプロセスを進化させることにあります。
内部監査から是正処置、有効性レビュー、マネジメントレビューまでのPDCAを“数字で回す”ことが重要です。
再発率が下がらない領域に対して、要員、IT、教育などの資源を重点的に投入します。
現場からの改善提案を監査で拾い上げ、小さな是正(Quick Win)を積み上げることで、組織全体の改善を促進します。
このように、是正処置を単なる問題解決にとどめず、予防や継続的改善に結びつけることで、組織のマネジメントシステムをより強固なものにしていくことが可能です。
本コラムでは「ISO内部監査と是正処置で失敗しないための実務ポイント」を解説しました。要点をまとめておきましょう。
まず、内部監査について以下を解説しました。
次に、是正処置の実務ポイントについて解説しました。
さらに、ケーススタディを通じて以下を示しました。
最後に、是正処置を単なる対応で終わらせず、予防や継続的改善につなげる方法について解説しました。
本コラムを参考に、内部監査と是正処置を単なる「義務」ではなく「組織を成長させる仕組み」として活用し、失敗しない実践につなげていただければ幸いです。
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