2024年4月9日
ISO9001における校正は、一貫した品質の製品を顧客に提供するために重要であり、定期的に行うべきです。校正の証拠となる校正証明書や校正記録は、顧客から要求されることもありますので、大切に保管してください。
目次
- 1.ISO9001における機器の校正とは
- 2.校正をしなければならない理由
- 3.校正期限(校正周期)をどうするべきか
- 4.校正機器の管理方法
- 5.ISO9001で校正に触れる要求事項と概要
- 6.ISO9001の審査で見られるポイントと注意点
- (1)校正機器の適切な管理
- (2)校正機器の適切な使用
- (3)校正機器の状態と結果の追跡
- (4)校正機器の校正記録
- 7.審査で必要な校正証明書とは
- 8.校正についての審査での指摘事例
- (1)校正機器の管理が不十分
- (2)校正証明書の不備
- (3)校正プロセスの不適切な実施
- 9.使い捨て測定器の利用
- (1)適切な選択と使用
- (2)校正の必要性の評価
- (3)記録の管理
- (4)品質管理システムの一環としての管理
- 10.社内校正する上で必要なもの
- (1)標準器
- (2)適切な校正環境
- (3)校正の手順
- 11.メーカー校正ではなく外部(業者)校正でもよいのか
- まとめ
1.ISO9001における機器の校正とは
ISO9001における機器の校正とは、測定機器が正確な結果を出すように調整することを指します。
これは、製品の品質を確保するために重要なプロセスであり、機器が正確な測定を行うことを保証します。
具体的には、機器が指定された範囲内で正確に動作することを確認し、必要に応じて調整を行います。
これには、機器の性能を確認するためのテストや、機器が正確な結果を出すように設定を調整する作業が含まれます。
また、校正は定期的に行われるべきであり、その頻度や方法は機器の種類や使用状況によります。
校正の結果は記録され、機器の性能が時間とともにどのように変化したかを追跡するために使用されます。
2.校正をしなければならない理由
では、なぜ校正をしなければいけないのでしょうか。
校正が必要な理由は、時間の経過や使用により、機器の性能が変化する可能性があるからです。
したがって、定期的な校正により、機器が正確な測定をし続けることができるのかを確認します。
3.校正期限(校正周期)をどうするべきか
校正期限(校正周期)について、規格では”定められた間隔”と規定されており、具体的に校正をしなければいけない校正期限(校正周期)を定めてはいません。
校正期限(校正周期)は、機器の種類、使用頻度、使用環境などにより異なりますが、一般的には年1回が推奨されます。もちろんメーカー指定の校正期限(校正周期)もあります。
しかし、使用頻度が高かったり、精度の基準も厳しい製品に使用するとなれば、安全や品質を担保するために校正期限(校正周期)を短くする場合もあります。
使用する頻度や環境や、工数やかかる人員、コスト等を考慮しながら、製品の品質管理として問題がないと判断できる校正期限(校正周期)を決めることが大事です。
4.校正機器の管理方法
校正機器の管理方法としては、まず全ての機器に識別番号を割り当て、それぞれの機器の校正状況を追跡できるようにします。
また、校正結果を記録し、校正が必要な時期を計画するために使用します。
さらに、校正期間中に機器を使用しないよう、適切な手段で機器を管理します。
手段としては、校正が必要な機器を明確にマークする、または物理的に隔離するなどの方法があります。
5.ISO9001で校正に触れる要求事項と概要
ここで、改めてISO9001に規定された内容を見ていきたいと思います。
7.1.5 監視及び測定のための資源
⑴7.1.5.1 一般
要求事項に対する製品及びサービスの適合を検証するために監視又は測定を用いる場合,組織は,結果が妥当で信頼できるものであることを確実にするために必要な資源を明確にし,提供しなければならない。
組織は,用意した資源が次の事項を満たすことを確実にしなければならない。
a) 実施する特定の種類の監視及び測定活動に対して適切である。
b) その目的に継続して合致することを確実にするために維持されている。
組織は,監視及び測定のための資源が目的と合致している証拠として,適切な文書化した情報を保持しなければならない。⑵7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
測定のトレーサビリティが要求事項となっている場合,又は組織がそれを測定結果の妥当性に信頼を与えるための不可欠な要素とみなす場合には,測定機器は,次の事項を満たさなければならない。
a) 定められた間隔で又は使用前に,国際計量標準又は国家計量標準に対してトレーサブルである計量標準に照らして校正若しくは検証,又はそれらの両方を行う。そのような標準が存在しない場合には,校正又は検証に用いたよりどころを,文書化した情報として保持する。b) それらの状態を明確にするために識別を行う。
c) 校正の状態及びそれ以降の測定結果が無効になってしまうような調整,損傷又は劣化から保護する。
測定機器が意図した目的に適していないことが判明した場合,組織は,それまでに測定した結果の妥当性を損なうものであるか否かを明確にし,必要に応じて,適切な処置をとらなければならない。「ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」引用
お読みいただけましたでしょうか。規格要求事項は長く難しく書いているように感じます。
ISO9001の7.1.5項では、会社が製品やサービスの品質を確保するために必要な監視や測定方法について述べられています。
これには、適切な測定機器の選択、管理、校正などが含まれます。また、これらの資源は、その使用目的に適していることを確認し、必要に応じて校正または検証を行うことが求められます。
これらのプロセスは、組織が製品やサービスの品質を維持し、顧客の要求を満たすために重要です。
また、ISO9001の7.1.5項では“資源”という言葉が使われてますが、この“資源”には設備や機器といった物理的な物だけではなく、これらの機器や設備が正確に機能するための環境条件(例えば温度や湿度など)も管理対象となります。
これら全ての機器、設備、環境条件が適切に管理されていることを確認するために、定期的な校正や保守が必要となります。
6.ISO9001の審査で見られるポイントと注意点
ISO9001の審査では、以下4つのポイントが重視され、注意が必要です。
(1)校正機器の適切な管理
校正機器は定期的に校正され、その結果が記録されていることが求められます。
また、校正が必要な機器が明確に識別され、その校正状況が一目でわかるように管理されていることも重要です。
(2)校正機器の適切な使用
校正機器は、その性能や制限を理解した上で適切に使用されていることが求められます。
また、使用後の保管状況もチェックします。
(3)校正機器の状態と結果の追跡
校正機器が不適合だった場合、その影響を受けた製品やサービスの確認と対応が適切に行われていることが求められます。
(4)校正機器の校正記録
校正機器の校正結果とその校正を行った組織や個人の情報が記録として保管され、後々必要な際に確認できることが求められます。
これらのポイントを満たすためには、校正機器の管理体制を整備し、定期的な校正とその記録、適切な使用と保管、不適合時の対応などを徹底することが必要です。
また、ISO9001の7.1.5項では”資源”という言葉が使われてますが、この“資源”には設備や機器といった物理的な物だけではなく、これらの機器や設備が正確に機能するための環境条件(例えば、温度や湿度など)も管理対象となります。
これら全ての機器、設備、環境条件が適切に管理されていることを確認するために、定期的な校正や保守が必要となります。
7.審査で必要な校正証明書とは
ISO9001の校正における校正証明書とは、機器が正確に動作していることを証明するための文書のことを指します。
この証明書は、専門の校正機関が機器をテストし、その結果を記録したもので、機器が規定の基準に準拠していることを証明します。
審査では、この校正証明書を提出することで、機器の精度と信頼性を証明することが求められます。
8.校正についての審査での指摘事例
ISO9001の校正に関する審査での指摘事例としては、以下のような事例があります。
(1)校正機器の管理が不十分
例えば、校正機器の校正期間が過ぎているにも関わらず、そのまま使用している場合や、校正機器の管理記録が不十分な場合などがあります。
これらはISO9001の要求事項に違反しているため、審査で指摘される可能性があります。
(2)校正証明書の不備
校正証明書は、機器が正確に校正されていることを証明する重要な書類です。
しかし、証明書が発行されていない、または内容に不備がある場合、同じく審査で指摘される可能性があります。
(3)校正プロセスの不適切な実施
校正は、定められた手順に従って正確に行われるべきです。
しかし、手順が適切に実施されていない、または手順自体が不適切な場合、同様に審査で指摘される可能性があります。
9.使い捨て測定器の利用
使い捨ての測定機器は、一度使用した後に廃棄されるため、通常の校正手続きは必要ありません。ただし、以下の点に留意する必要があります。
(1)適切な選択と使用
使い捨ての測定機器を選ぶ際には、信頼性と精度が確保されていることを確認しましょう。
また、使用方法に従って正確に使用することも重要です。
(2)校正の必要性の評価
使い捨ての測定機器は通常、校正の必要性がないとされていますが、特定の状況や要件によっては校正が必要となる場合もあります。
例えば、法的要件や顧客要求によって校正が求められる場合があります。
(3)記録の管理
使い捨ての測定機器に関する情報や使用状況について、適切な記録を管理しておくことが重要です。
これにより、必要な場合に追跡や調査が行えます。
(4)品質管理システムの一環としての管理
使い捨ての測定機器は、品質管理システムの一環として適切に管理されるべきです。
これには、適切な選択、使用、廃棄、記録管理などが含まれます。
以上の点に留意しながら、使い捨ての測定機器を適切に利用し、品質管理の要件を満たすようにしましょう。
10.社内校正する上で必要なもの
(1)標準器
社内校正を行う際には、以下のような標準器が必要となります。
①温度計:温度を測定するための標準器。温度調節が必要な機器の校正に使用します。
②バーメータ:圧力を測定するための標準器。圧力調節が必要な機器の校正に使用します。
③バランス:重量を測定するための標準器。重量調節が必要な機器の校正に使用します。
④ボルトメータ:電圧を測定するための標準器。電圧調節が必要な機器の校正に使用します。
⑤アンペアメータ:電流を測定するための標準器。電流調節が必要な機器の校正に使用します。
これらの標準器は、それぞれの測定範囲や精度に応じて選択します。
また、これらの標準器自体も定期的に校正を行う必要があります。
(2)適切な校正環境
社内校正を行う際の適切な校正環境は以下のような要素が含まれます。
①温度と湿度:校正は一般的に、安定した温度と湿度の下で行われます。これは、温度や湿度の変化が測定結果に影響を及ぼす可能性があるためです。したがって、校正環境は温度と湿度が制御されているべきです。
②振動と雑音:振動や雑音も測定結果に影響を及ぼす可能性があります。したがって、校正環境は振動や雑音が最小限に抑えられているべきです。
③照明:適切な照明は、測定結果を正確に読み取るために重要です。したがって、校正環境は適切な照明が確保されているべきです。
④清潔さ:校正環境は清潔で、塵や汚れがないことが重要です。これは、塵や汚れが測定結果に影響を及ぼす可能性があるためです。
⑤校正機器:校正には、校正機器が必要です。これは、標準と比較して測定機器の精度を確認するためです。校正機器は定期的に校正され、その精度が確保されているべきです。
以上のような環境を整えることで、社内校正はより正確で信頼性の高い結果を得ることができます。
(3)校正の手順
社内校正の手順は以下のようなものがあります。
①校正計画の作成:校正する機器のリストを作成し、それぞれの機器の校正周期や校正方法を決定します。
②校正環境の準備:校正を行うための適切な環境を整えます。これには、温度や湿度などの環境条件をコントロールすることが含まれます。
③校正作業の実施:標準器を使用して機器の精度を確認し、必要に応じて調整を行います。
④校正結果の記録:校正の結果を記録し、それを保存します。これには、校正前後の値や調整の有無などの情報が含まれます。
⑤校正ラベルの貼付:校正した機器には校正ラベルを貼り、次回の校正日を明記します。
⑥校正結果の分析と改善:校正結果を分析し、必要に応じて校正方法や周期を見直します。
以上のような手順を踏むことで、機器の精度を維持し、品質管理を行うことができます。
11.メーカー校正ではなく外部(業者)校正でもよいのか
外部(業者)校正は、結論から申し上げると問題ありません。
ISO9001の規定によれば、校正機器はメーカー校正だけでなく、外部の認定された校正業者による校正も認められています。
ただし、外部業者に校正を依頼する場合でも、その業者が信頼できるものであること、そしてその業者が適切な校正手順を踏んでいることを確認する必要があります。
また、校正結果を示す校正証明書も必要となります。
まとめ
校正周期については要求事項では何ら明確に明示されていません。
「国際計量標準又は国家計量標準に対してトレーサブルである計量は、標準に照らして校正若しくは検証、又はそれらの両方を行う。」「そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いたよりどころを記録として残す。」とあります。
簡単に言いますと、計測機器は校正もしくは検証、またはその両方を行うとは書いておりますが、周期について触れておりません。
では、「そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いたよりどころを記録として残す。」と書いていますが、校正周期を決めなくて良いのか?と感じる方もいるでしょう。
校正周期については、ISOの規格要求以上に顧客からの要求を見て決めていただきたいです。
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