2023年12月20日
ISO9001マニュアルは、企業の品質マネジメントシステムを適切に運用するための重要なツールです。
ISO9001マニュアルを「使える」マニュアルにするためには、業務内容が適切に反映されていることや、普段従業員が使用している分かりやすい言葉で記載することが大切です。
1.ISO9001マニュアルの必要性と役割
ISO9001マニュアルは、企業が品質マネジメントシステムを適切に運用するための「取扱説明書」のようなものです。
企業の品質方針や目標、組織構造、業務プロセス、品質管理の手順などを明確に記載します。
ISO9001マニュアルは、組織の従業員のためのものです。
従って、実際の業務内容が適切に反映されていることや、普段従業員が使用している分かりやすい言葉で記載することが大切です。
このような9001マニュアルを作成することで、従業員の教育の場で活用できることはもちろんですが、全従業員が共通の理解を持つことで、組織全体の品質向上を図ることができます。
2.ISO9001マニュアルに記載する規格要求事項
ISO9001マニュアルには、ISO9001規格の要求事項を満たすための企業の取り組みを記載します。
具体的には、品質方針、品質目標、組織構造、業務プロセス、品質管理の手順、内部監査の方法、改善活動の進め方などが含まれます。
- 総則
- 適用規格
- 用語の定義
- 組織の状況(当社全体に関すること)
- リーダーシップ
- 計画(事業計画)
- 支援(品質目標達成のためのサポート)
- 運用(行動、日々の業務)
- パフォーマンス評価(結果の評価)
- 改善(業務の改善)
引用:JISQ9001:2015
3.2015年版規格書にて重要なこと
ISO9001の2015年版規格書において重要なことは以下の3つです。
⑴リスクを考慮したアプローチ
企業がビジネスを行う上でのリスクを積極的に評価し、そのリスクを管理するためのアプローチを取ることを求めています。つまり、単に品質を保つだけでなく、その品質を維持するために何がリスクとなり得るのかを考え、それをどう対策するかを計画することが重要とされています。
⑵文書化された情報の管理
企業が品質マネジメントシステムを運用する上で必要な情報をどのように管理するか、ということについての要求です。具体的には、どの情報をどのような形で文書化し、それをどのように管理・保管するかということを明確にする必要があります。
⑶組織の文脈
企業が存在する社会的、文化的、法的、技術的な環境を理解し、それを品質マネジメントシステムの運用に反映させることを意味します。
4.そもそもマニュアルは必要なのか
2015年版のISO9001では、品質マニュアルの作成は必須ではなくなりました。しかし、マニュアルがないと、企業の品質マネジメントシステムの全体像を把握するのが難しくなるため、依然として多くの企業がマニュアルを作成しています。
また、ISO9001:2015では、品質マネジメントシステムの運用を支援するために必要な文書化した情報を維持することが要求されています(4.4.2項)。
つまり、組織は自身の品質マネジメントシステムを効果的に運用するために、どのような文書を作成し、どの程度文書化するかを考える必要があります。
5.業務で「使える」マニュアルの作り方
「使える」マニュアルを作成するためには、以下の3つの要素が重要となります。
⑴全従業員が理解できるように、専門用語を避けて平易な言葉で書くこと
全ての従業員が理解できるように、専門的な用語を避け、日常的な言葉を用いて書きましょう。
これにより、マニュアルが社員全員にとって理解しやすいものとなり、その結果、業務の効率化やミスの減少につながります。
⑵全体像を把握しやすくすること
業務プロセスを図や表を用いて業務の流れを示すことで、社員は全体像を把握しやすくなります。
これにより、各自の業務が全体の中でどのような位置づけにあるのかを理解しやすくなり、業務の意義や目的を明確にすることができます。
⑶マニュアルを定期的に見直すこと
マニュアルを定期的に見直し、現場の変化に合わせて更新することです。
業務環境は常に変化しています。そのため、マニュアルもそれに合わせて柔軟に変化させる必要があります。
これにより、マニュアルは常に最新の状況を反映したものとなり、社員が適切な業務を行うための指針となります。
6.品質マニュアル作成時、気を付けるべきポイント
品質マニュアルを作成する際には、以下の点に注意することが重要です。
まず、マニュアルが現場の実態を反映していること。
次に、マニュアルが全社員にとって使いやすい形になっていること。
最後に、マニュアルがISO9001の要求事項を満たしていることです。
前述した通り、使いやすさのポイントとして「全従業員が理解できるように、専門用語を避けて平易な言葉で書くこと」があげられます。
品質マニュアルを読む人の多くは従業員です。従業員の人たちが理解できるように、平易な言葉づかいで分かりやすい文章で表現するようにしましょう。
7.ISO9001マニュアル作成のよくある失敗例
ISOマニュアル作成のよくある失敗例は、前述した”業務で「使える」マニュアルの作り方”や”気を付けるポイント”を無視したケースです。
⑴マニュアルが難解すぎる
専門用語が多すぎて、一般の社員が理解できないマニュアルは、まさに「棚上げ」される運命にあります。マニュアルは、全社員が理解し、活用できるものでなければなりません。
そのためには、平易な言葉を使い、視覚的な図表を活用するなど、わかりやすさを追求することが大切です。
⑵マニュアルが現場の声を反映していない
マニュアル作成は、上層部だけで行うものではありません。現場の声を取り入れ、現場のニーズに合わせた内容にすることが重要です。
現場の意見を無視したマニュアルは、現場で活用されることはありません。
⑶マニュアルが更新されていない
ビジネスの世界は日々変化しています。その変化に対応するためにも、マニュアルは定期的に見直し、必要に応じて更新することが求められます。
更新されていないマニュアルは、時代遅れの情報しか提供できません。
8.まとめ
ISO9001マニュアルは、企業の品質マネジメントシステムを適切に運用するための重要なツールです。
しかし、マニュアルをただ作成するだけではなく、全社員が理解しやすく、現場の実態を反映した「使える」マニュアルを作ることが求められます。
品質マニュアルを読む人の多くは従業員です。従業員の人たちが理解できるように、平易な言葉づかいで分かりやすい文章で表現するようにしましょう。
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