2023年6月29日
iso9001文書管理とは、ルールを管理することです。文書とは簡単に言うと、規程やルール、手順書のことであり、規程や手順書としてルールが記載されています。ルールは変わる前提なので、版数管理や最新版管理を実施し、最新のルールが組織全体で常に認識され、利用されるためにiso9001文書管理が必要となります。
1.文書管理とは
文書管理とは、文書の作成、制御、保管、改訂、配布、廃棄などのプロセスを指します。
また、文書とは簡単に言うと、規程やルール、手順書のことを指します。
ルールは変わる前提で改訂をしていくため、最新のルールを認識しておく必要があります。そのために文書管理が必要となります。
2.ISO9001の文書管理とは
⑴ISO9001とは
ISO9001とは、品質マネジメントシステム(品質のPDCA)のことです。
目的は顧客満足の追求です。商品やサービス自体の品質が良い悪いではなく、顧客が満足する商品、サービスを提供できる仕組みがある会社へ付与される国際規格です。
⑵ISO9001の文書管理
組織が品質マネジメントシステムを効果的に運用するための文書の作成、制御、保管、改訂、配布、廃棄などが求められます。文書の作成(文書化された情報の管理)〜廃棄において、必要なことをみていきましょう。
①文書化された情報の管理:
品質マネジメントシステムに関連する文書(例: ポリシー、手順書、規程、作業手順、記録など)を作成、管理、保管します。
②文書の制御:
作成された文書を適切に制御し、承認とリリースのプロセスを確立します。
変更管理手順を定義し、文書の改訂が正確に行われるようにします。変更が承認されるまでは、新しいバージョンの文書が使用されないようにします。
③文書の保管:
文書を適切な場所に保管し、アクセス可能な状態で保持します。
文書の保存期間、保管方法、機密性の管理などを定義し、必要に応じて保護措置を講じます。
④文書の改訂:
文書が必要に応じて改訂される場合、変更管理手順に従って変更を追跡し、文書の正確性と最新性を確保します。
改訂された文書については、関係者への通知や適切な内容の解説をする必要があります。
⑤文書の配布:
適切な関係者が必要な文書にアクセスできるようにします。
文書の配布方法や配布リストを定義し、関係者が最新の文書にアクセスできるようにします。
⑥文書の廃棄:
期限切れ、不要、または非有効となった文書を廃棄します。
廃棄される文書に関しては、適切な手続きに従って廃棄を行い、機密情報の保護に注意します。
3.文書管理することの3つのメリット
①情報の整合性と一貫性の確保:
文書管理を適切に行うことで、組織内の情報が整合性を持ち、一貫性が保たれます。正確で最新の情報を提供することで、意思決定や業務の効率化を図れます。
②リスク管理とコンプライアンスの向上:
文書管理は、リスク管理とコンプライアンスの向上に役立ちます。規制要件や法的義務に従い、文書の作成、変更、保管、廃棄を適切に管理することで、リスクを軽減し、法的トラブルや規制違反のリスクを最小限に抑えます。
③生産性と効率性の向上:
文書管理は生産性と効率性の向上に寄与します。組織内のプロセスや手順が明確に文書化されることで、作業の一貫性と効率化が図られます。従業員は正確な情報に基づいて作業を行い、ミスや重複作業を減らすことができます。
4.ISO9001文書管理の要求事項について
7.5.3文書化した情報の管理についての要求事項は以下になります。
7.5.3 文書化した情報の管理
7.5.3.1 品質マネジメントシステム及びこの規格で要求されている文書化した情報は,次の事項を確実にするために,管理しなければならない。
a) 文書化した情報が,必要なときに,必要なところで,入手可能かつ利用に適した状態である。
b) 文書化した情報が十分に保護されている(例えば,機密性の喪失,不適切な使用及び完全性の喪失からの保護)。7.5.3.2 文書化した情報の管理に当たって,組織は,該当する場合には,必ず,次の行動に取り組まなければならない。
a) 配付,アクセス,検索及び利用
b) 読みやすさが保たれることを含む,保管及び保存
c) 変更の管理(例えば,版の管理)
d) 保持及び廃棄品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書化した情報は,必要に応じて識別し,管理しなければならない。
ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項
適合の証拠として保持する文書化した情報は,意図しない改変から保護しなければならない。
注記 アクセスとは,文書化した情報の閲覧だけの許可に関する決定,又は文書化した情報の閲覧及び変更の許可及び権限に関する決定を意味し得る。
文書とはルールのことです。ルールが記載されているものが、規程やマニュアル、手順書です。
ルールは業務内容や時代背景、色々な影響により変化します。
そのため、変わる前提で一番最新のルールを常に管理し、そのルールが適用されるようにしておかなければなりません。
5.ISO9001文書管理での保管期間
ISO9001において、文書の保管期間は、文書の重要性や法的要件に応じて異なる場合があります。
一般的には、法的要件や規制に基づいて特定の文書を保管する必要がある場合があります。たとえば、税務関連の文書は一定期間保管する必要があります。
また、品質マネジメントシステムの運用においても、品質記録や品質評価の文書など、特定の期間保管する必要がある場合があります。これは、将来の品質監査や証明、証拠としての機能を果たすためです。
保管期間に迷った場合は、顧客要求があるのか、法的要求があるのか、社内で必要な期間はどのくらいかの観点で確認するようにしましょう。
6.文書の分類の仕方
文書とはルールのことですので、どんな種類のルールが何に記載されているのかをわかりやすく、見やすく、見つけやすくするためにも、文書の分類をしましょう。
・品質マニュアル
品質マニュアルは、組織の品質管理システムに関する全体的な指針を提供する文書です。品質ポリシー、品質目標、責任範囲、プロセスの相互関係、手順書の構成などを定義し、組織の品質マネジメントシステムの基本的な枠組みを示します。
・手順書
手順書は、特定のプロセスまたは活動を実行するための手順や方法を詳細に記述した文書です。これには、品質管理、購買、製造やサービス提供、維持、改善など、品質マネジメントシステムに関連するさまざまな分野が含まれます。
・作業指示書
作業指示書は、個々の作業やタスクを正確かつ効果的に実行するための具体的な指示を提供する文書です。これには、機器の操作方法、測定や検査の方法、適切な包装や標識、安全手順などが含まれます。
・記録
記録は、組織の品質マネジメントシステムの運用に関連する情報が記録された文書です。これには、品質検証、保守、校正、監査、問題解決の過程などが含まれます。
記録は、プロセスが適切に実行されたことを証明し、改善のためのデータを提供します。
・外部文書
外部文書は、組織の品質マネジメントシステムに関連する、組織の外部で作成された文書です。これには、法規制、業界標準、お客様の要件などが含まれます。
これらの文書は、組織が遵守する必要がある要件を確認するために重要です。
7.ISO9001文書管理を進める3ステップ
ステップ①文書の作成と承認
まず、組織はISO9001の要求事項に基づいて、品質マネジメントシステム関連の文書を作成する必要があります。
文書作成では、各文書の目的、内容、それに関連するプロセスや手続きが明確に記述されていることを確認します。文書が追加または改訂されると、適切な権限を持つ責任者によって承認される必要があります。
ステップ②文書の管理と保管
次に、作成および承認された文書を適切に管理し、保管するためのプロセスを確立する必要があります。これには、文書の分類、識別、バージョン管理、配布やアクセス制御などが含まれます。
関係者が必要な情報に簡単にアクセスできるよう、適切な場所で保管されていることが重要です。
ステップ③文書の改訂と廃棄
最後に、作成された文書が適切に更新および改訂され、時代遅れの情報や不要な文書が廃棄されているかを確認するプロセスが必要です。これには、文書のレビュー、更新、承認、配布の手続きを明確に定め、実行することが含まれます。
また、適切なタイミングで廃棄する文書を特定し、その方法と手続きを確立することも重要です。
これらの3ステップを通じて、ISO9001に基づく文書管理が進められ、組織全体で情報が適切に共有、保管、更新されます。
8.ISO9001文書管理とペーパーレスの関係性
紙での文書管理から、ペーパーレスを目指す企業もいるのではないでしょうか。ペーパーレスにした場合のメリットは以下のことが考えられます。
①効率化
ペーパーレス文書管理システムを使用することで、検索や閲覧が容易になり、手間や時間を大幅に削減できます。また、同時に複数の人がアクセスして共同作業ができることから、業務の効率化が図られます。
②文書変更のスピード対応
紙の文書の場合、変更や修正が発生したときに文書を再印刷し、再配布しなければならないことがあります。
一方、ペーパーレス文書管理システムでは、一度に全ての文書を更新し、すぐに利用者に配信することができます。これにより、変更に迅速に対応することが可能です。
③セキュリティとコンプライアンスの強化
ペーパーレス文書管理システムでは、アクセス権限やバージョン管理が容易に設定できます。これにより、不正アクセスや情報漏洩のリスクを減らし、ISO9001の要求するコンプライアンスを維持することが容易になります。
文書管理システムを入れるべきかと言うと必ずしもそういうわけではありません。
管理すべき文書の量が多すぎたり、最新管理が上手くいっていないなど、文書管理に関する課題、解決したい課題がある場合は、文書システムの利用を検討すべきです。
自社の状況、課題に合わせて文書管理の方法を決めましょう。
9.まとめ
文書とはルールのことです。ルールが記載されているものが規程や、マニュアル、手順書となります。
ルールは現場の改善や顧客の要求、時代の変化によって変化していきます。ルールは変わる前提で、見直しや変更しやすい文書体系を目指しましょう。
ルールが複雑すぎて、ルール変更がされず文書が変わっていないという状態にならないように、一度文書管理についても見直しをしてみましょう。
そもそも文書が多いと見直すことも多くなりますので、まずはスリム化を検討ください。
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