2025年3月28日

2024年2月23日、ISO9001を含む多くのマネジメントシステム規格に「気候変動への配慮」が追加される追補改正が行われました。
この改正により、すでにISO9001認証を取得している企業はマネジメントシステムの見直しが求められます。具体的には、気候変動リスクの特定と評価を行い、その対策を立案し、システムに組み込む必要があります。
目次
- 1. なぜ今、気候変動が注目されているのか
- (1)ISO9001に「気候変動への配慮」が追加
- (2)近年の気候変動と企業への影響
- 2. ISO9001ってそもそも何?
- 3. ISO9001と気候変動リスクにはどんな関係があるの?
- 4. 気候変動リスク対策の手順
- (1)気候変動リスクの特定と評価
- (2)リスクベース思考による対策の立案
- (3)ISO9001におけるリスク管理の仕組み
- 5.気候変動に関連する自然災害への具体的な対策事例
- (1)リスク及び機会への取り組み(ISO 9001:2015 6.1)
- (2)事業継続計画(BCP)の策定
- (3)外部及び内部の課題の理解(ISO 9001:2015 4.1)
- (4)緊急事態への準備及び対応(ISO 9001:2015 8.4.3)
- (5)教育及び訓練(ISO 9001:2015 7.2)
- (6)供給者管理(ISO 9001:2015 8.4)
- (7)モニタリング及び測定(ISO 9001:2015 9.1)
- (8)継続的改善(ISO 9001:2015 10.3)
- 6. ISO9001導入によるメリット
- 7.まとめ
1. なぜ今、気候変動が注目されているのか
(1)ISO9001に「気候変動への配慮」が追加
2024年2月、多くのマネジメントシステム規格に「気候変動への配慮」に関する記述が追加されました。
これは気候変動が世界的な課題であり、企業がその影響を考慮し、対策を講じる必要があるという認識の高まりを反映しています。
ISO9001では「4.1 組織及びその状況の理解」と「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」の箇条に、以下の文言が追加されました。
4.1項「組織は,気候変動が関連する課題かどうかを決定しなければならない」
4.2項「注記:関連する利害関係者は,気候変動に関する要求事項をもつ可能性がある」
「ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」
これらの追加により、組織は自社の事業活動が気候変動に与える影響、または気候変動が自社の事業に与える影響を考慮し、その対策を講じることが求められるようになりました。
(2)近年の気候変動と企業への影響
近年、異常気象や海面上昇、生物多様性の損失など、気候変動による影響が顕著になってきています。企業は、これらの影響によって以下のようなリスクに直面しています。
- 物理的なリスク:洪水、干ばつ、暴風雨などによる施設の損害、サプライチェーンの断絶
- 移行リスク:規制の強化、消費者意識の変化、技術革新などによるビジネスモデルの変化
- 法的リスク:気候変動に関する法規制への不遵守による罰則
2. ISO9001ってそもそも何?
ISO9001は、製品やサービスの品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
この規格に沿って経営することで、顧客満足度の向上、業務効率の改善、リスク管理の強化などを図ることができます。
ISO9001について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
3. ISO9001と気候変動リスクにはどんな関係があるの?
ISO9001は、製品やサービスの品質を安定的に提供するための国際規格ですが、実は気候変動対策にも役立ちます。
ISO9001はリスク管理の仕組みを備えているため、気候変動リスクを特定し、対策を講じるための有効なツールとなりえます。
また、組織全体の意識改革を促し、持続可能な経営を実現するための基盤となります。
4. 気候変動リスク対策の手順
それでは、ISO9001の仕組みを活用して気候変動リスクを減らす対策の手順を見ていきましょう。
(1)気候変動リスクの特定と評価
まずは自社の状況を把握しましょう。
事業活動が気候変動に与える影響(排出量など)と、気候変動が自社の事業に与える影響(物理的リスク、移行リスクなど)を特定します。
そして、その発生確率と影響度を定量的に評価し、重要度を決めましょう。
特に、物理的リスクとしては洪水、干ばつ、暴風雨などによる施設の損害やサプライチェーンの断絶、移行リスクとしては規制の強化、消費者意識の変化、技術革新などによるビジネスモデルの変化が挙げられます。
(2)リスクベース思考による対策の立案
特定されたリスクに対して、コストと効果を比較しながら、最適な対策を立案します。
- リスク低減策:温室効果ガス排出量削減、再生可能エネルギー導入、サプライチェーンにおける環境負荷低減など
- リスク転嫁策:保険加入、リスク共有など
- リスク回避策:事業縮小、事業撤退など
(3)ISO9001におけるリスク管理の仕組み
PDCAサイクルを用いて、リスク管理を継続的に行います。
- 計画(Plan):リスク評価の結果に基づき、対策目標を設定し、具体的な行動計画を策定
- 実行(Do):計画を実行し、進捗状況をモニタリング
- 確認(Check):定期的にリスク評価を行い、目標達成状況を確認
- 改善(Act):必要に応じて計画を修正し、改善を行う
このように、ISO9001を活用することで、体系的に気候変動リスクを管理することができます。
5.気候変動に関連する自然災害への具体的な対策事例
気候変動がもたらす自然災害は、企業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。ISO9001を運用する企業にとって、これらのリスクに対処し、事業の継続性を確保することは重要な課題です。
ここでは、ISO9001の規格要求事項に基づき、気候変動に関連する自然災害への具体的な対策事例を紹介します。これらの事例を参考に、組織のリスク管理や事業継続計画の強化にお役立てください。
(1)リスク及び機会への取り組み(ISO 9001:2015 6.1)
事例:自然災害(例: 台風、洪水、地震)による業務停止リスクを特定し、事前に対策を講じる。
対策:洪水リスクが高い地域では、重要な設備やデータセンターを高層階に移設する。
対策:地震リスクに備え、耐震性の高い建物を使用し、緊急時の避難計画を策定。
(2)事業継続計画(BCP)の策定
事例:自然災害発生時における事業継続のための計画を策定。
対策:台風や地震による停電に備え、非常用発電機を設置する。
対策:サプライチェーンの中断リスクを軽減するため、複数の供給元を確保する。
(3)外部及び内部の課題の理解(ISO 9001:2015 4.1)
事例:気候変動や自然災害が組織に与える影響を分析する。
対策:気候変動による豪雨の頻発を考慮し、排水設備の強化や防水対策を実施する。
対策:地域の自然災害リスクを評価し、事業所の立地選定に反映する。
(4)緊急事態への準備及び対応(ISO 9001:2015 8.4.3)
事例:自然災害時の緊急対応手順を整備する。
対策:地震発生時の従業員の安全確保手順をマニュアル化する。
対策:洪水時の重要書類やデータの保護手順を策定する。
(5)教育及び訓練(ISO 9001:2015 7.2)
事例:自然災害に備えた従業員教育を実施する。
対策:防災訓練を定期的に実施し、従業員が緊急時に適切に対応できるようにする。
対策:気候変動リスクに関する意識向上のための研修を実施する。
(6)供給者管理(ISO 9001:2015 8.4)
事例:サプライチェーンの中断リスクを軽減する。
対策:自然災害リスクが高い地域に拠点を持つ供給者の代替供給者を確保する。
対策:供給者と連携して、災害時の緊急対応計画を策定する。
(7)モニタリング及び測定(ISO 9001:2015 9.1)
事例:自然災害リスクに関連する指標をモニタリングする。
対策:気象データを定期的に収集し、災害リスクを予測する。
対策:設備の老朽化や耐久性を定期的に点検し、災害時の被害を最小限に抑える。
(8)継続的改善(ISO 9001:2015 10.3)
事例:自然災害発生後の教訓を活かし、対策を改善する。
対策:過去の災害時の対応を振り返り、BCPや緊急対応手順を見直す。
対策:災害後の復旧プロセスを効率化するための改善活動を実施する。
6. ISO9001導入によるメリット
ここまで、ISO9001を活用することで、気候変動リスクを軽減させることができるとお伝えしてきました。
その他にも、ISO9001を導入して気候変動への配慮を行うことで、企業には様々なメリットがあります。
- 事業継続性の向上:気候変動による災害や規制の変化などに対応し、事業を継続することができます。
- ブランドイメージの向上:環境に配慮した企業として、社会的な評価を高めることができます。
- 投資家からの評価向上:ESG投資の観点から、投資家からの評価が向上する可能性があります。
- 業務効率の向上:品質マネジメントシステムの構築を通じて、業務が効率化されます。
- 顧客満足度の向上:品質の高い製品やサービスを提供することで、顧客満足度が向上します。
7.まとめ
ISO9001は、品質管理の枠を超えて、気候変動対策にも有効なツールとして活用されています。
ISO9001を導入することで、企業は気候変動リスクを低減し、持続可能な社会の実現に貢献することができます。
この情報を参考に、貴社もISO9001の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
より詳しい情報や、貴社の状況に合わせた具体的なアドバイスが必要な場合は、お気軽にご相談ください。
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