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食品業界で実践すべき品質管理の5つの視点|現場で使える取り組みも合わせて解説

2025年7月30日

食品業界で実践すべき品質管理の5つの視点|現場で使える取り組みも合わせて解説

「異物混入をどう防げばいいのかわからない」

「品質トラブルが起きたときの対応に自信がない」

結論からお伝えすると、食品の品質を守るためには、製造工程ごとのリスクを見える化し、それぞれに対して具体的な対策と運用ルールを整えることが必要です。

なぜなら、品質トラブルの多くが、決まっていない、伝わっていない、守られていないという3つの不足から起きているからです。

逆に言えば、作業ごとのルールを決めて、従業員がいつでも確認できる状態をつくることで、未然にトラブルを防ぐことができます。

この記事を読むことで、食品現場で実践できる品質管理の考え方と具体策がわかり、現場の安全性を高めることができるはずです。

現場のリーダーや品質管理担当の方はもちろん、これから学びたい方にもおすすめの内容です。

1.食品業界にとっての品質管理の重要性

食品を扱う企業にとって、品質管理は安全と信頼を守る生命線といっても過言ではありません。

品質管理における重要なポイントは、以下の4つです。

  • 安全性の確保
  • 品質の一貫性
  • 法律や国際規格への対応
  • トラブルへの対応力の向上

従業員一人ひとりが、これらの重要性を理解し、日々の作業を正しく行うことで、食品業界は社会の信頼を得ることができます。

(1)安全性の確保

食品業界において、品質管理の最大の目的は安全性の確保です。

どれだけ見た目が美しく、おいしい商品であっても、食べた人の健康を害してしまえば意味がありません。

とくに注意が必要なのは、食中毒や異物混入などの事故です。

ほんのわずかな油断や確認不足から起こることが多く、企業にとっては信用の失墜や場合によっては損害賠償など、重大な影響をもたらします。

つまり、食品の安全を守ることは、消費者に安心して商品を選んでもらうための最低条件なのです。

(2)品質の一貫性

食品業界では品質の一貫性を保つことが、信頼されるブランドづくりには欠かせません。

もし商品ごとに味が違ったり、見た目にばらつきがあったりすると、「品質に問題があるのでは?」と不安を与えてしまうでしょう。

たとえ安全であっても、品質が安定していなければ、選ばれる商品にはなりません。

とくにリピーターや取引先との関係を維持するうえで、品質のばらつきは大きなマイナス要素になってしまいます

品質の一貫性を守ることは、消費者の期待に応え、信頼を積み重ねていく上でとても重要な役割なのです。

(3)法律や国際規格への対応

食品を国内外に安心して届けるには、食品衛生法などの国内法だけでなく、HACCPやISO 22000といった国際規格にも対応した管理体制を整えることが重要です。

各国の規制は年々、厳格化しており、記録や証明が不十分なまま輸出停止や取引中断のリスクが高まります。

とくにHACCPの制度が始まってから、危害要因の分析と重要管理点の監視を示せない企業はビジネスとしてのチャンスを逃しがちです。

一方で、国際認証を取得すれば監査の手間が軽くなり、品質要求を共通言語で伝えられるため、交渉コストの削減につながります。

このように、法令と国際基準の両方を満たす仕組みを整えることは、リスク低減と販路拡大の両立を可能にすることができます。

(4)トラブルへの対応力の向上

製造データを詳しく記録し、すぐ原因を追究できる体制を持つことで、食品工場のトラブル対応力を大きく引き上げます。

異物混入や温度ずれといった事故は、発生の瞬間よりも発見の遅れが被害を広げます。

そこで原料の入庫時刻、加熱温度、包装ラインの速度などを時系列で残しておくと、問題が起きてもいつ、どこで、なにが、ずれたかを即座に絞り込めるはずです。

原因が特定できれば、対象ロットの回収範囲も最小限で済み、再発防止策もピンポイントで打てます。

日頃から細かな製造データを残し、解析の手順を決めておくことで、被害拡大を防ぎ、品質とブランドを守ることにつながるのです。

2.食品業界における品質管理の取り組み

食品業界における品質管理の取り組みには、大きく分けて以下の6つあります。

  • 安全な食品をつくるために衛生管理を徹底する
  • 品質検査を行って安全性と規格をチェックする
  • 品質向上のために製造方法や原料を見直す
  • 原材料の受け入れ時に品質を管理する仕組みを整える
  • 製品の保管・輸送中の品質を守る
  • 作業員への教育を通して品質意識を高める

現場ですぐに活かせる内容を中心に、具体例も交えながら解説していきます。

(1)安全な食品をつくるために衛生管理を徹底する

衛生管理は、食品の品質だけでなく、企業の信頼を守るための基本的な取り組みです。

工場や調理場では、作業員の手洗いやマスクの着用、道具や機械の消毒、室内の清掃などを丁寧に行うことで、菌や異物の混入を防ぎます。

とくに食品を扱う場所では、一つの油断が大きな事故につながることがあるため、作業前・作業中・作業後それぞれのタイミングでチェックが必要です。

具体的なチェック内容は以下のとおりです。

タイミングチェック内容内容・ポイント
作業前手洗い・消毒の実施正しい手順で手洗い・アルコール消毒が行われているか
作業服・帽子・マスクの着用異物混入を防ぐために正しく装着されているか
体調確認発熱、下痢、咳などの症状がないか自己・上司で確認
設備・器具の清掃確認機械・作業台・器具が洗浄・消毒されているか
作業中異物混入の防止髪の毛、体毛、衣類の繊維、ボタンなどの異物混入がないか
交差汚染の防止生肉と調理済み食品の接触など、交差汚染のリスクがないか
温度管理の徹底食材の保管温度、調理時の中心温度が適切か
衛生的な作業手順の遵守調理器具の洗浄・消毒、手洗いの徹底など、正しい作業手順が守られているか
作業後清掃・消毒の実施使用した設備・器具、作業場所の清掃・消毒が適切に行われているか
排水口・床の清掃食材くずや汚れを取り除き、虫の発生を防ぐ対策がされているか
記録の記入と確認手洗い・温度・清掃などの記録が正しく記入・確認されているか
異常・不備の報告作業中のトラブルや不備が記録・共有されているか

 

また、衛生ルールは文字だけでなく、写真や図を使って誰でも理解できるように整備し、外国人スタッフや初心者にも分かりやすく伝える工夫も重要です。

(2)品質検査を行って安全性と規格をチェックする

品質検査は、目に見える部分だけでなく、成分や細菌のような見えない要素も対象になります。

具体的なステップは以下のとおりです。

①外観検査(見た目の確認)

製品の色、形、大きさなどが、あらかじめ決められた基準どおりであるかを目で見て確認します。

②官能検査(味やにおいの確認)

実際に味を見たり、においをかいだりして、人の感覚でおかしな点がないかを調べます。この検査では、品質のばらつきや異常を早く見つけることができます。

③安全性の検査(微生物・異物の確認)

食中毒を防ぐために、製品に菌が含まれていないか、異物が混じっていないかを機械や専用の試薬を使って検査します。

④検査結果の記録と対応

検査した内容と結果はすべて記録に残します。もし基準を満たさない製品が見つかった場合は、ただちに出荷を止めて原因を調査します。

このように、品質検査は安全で安定した食品を提供するために欠かせない工程です。正しく検査を行い、記録を残し続けることで、品質の高い食品づくりを行えます。

(3)品質向上のために製造方法や原料を見直す

品質管理では、現状の品質を維持するだけでなく、継続的な見直しと改善によって、よりよい品質を目指していく活動も含まれます。

つまり、製造方法や使う原料を定期的に見直すことで、不良の原因を減らし、品質の安定につながるのです。

たとえば、同じ温度でも加熱時間を少し変えるだけで、食感や風味が大きく変わることがあります。

冷凍ハンバーグを例に上げると、

  • 改善前:中心部まで加熱するのに時間がかかり、外側が硬くなる
  • 改善後:スチーム加熱を導入し、加熱時間を1分短縮。中心まで均一に火が通り、食感がやわらかくなった

結果として、塩加減や浸かり具合の調整がしやすくなり、安定した味を実現できました。

また、原料の種類や産地を変えることで、見た目や保存性が改善されることもあります。

このような改善には、現場の声やお客様からの意見を取り入れることが大切です。

試作を重ねて、どの方法や材料が最も良いかを比べることで、品質のばらつきを防ぐことができます。

変更した内容は、作業手順書や記録にきちんと反映し、全員が同じやり方で作業できるようにしましょう。

(4)原材料の受け入れ時に品質を管理する仕組みを整える

食品の品質と安全を守るためには、工場に届いた原材料の状態を確認するだけでなく、その確認を仕組み化することが大切です。

担当者によって判断が分かれたり、確認漏れが起きたりしないよう、誰が見ても同じように運用できる標準手順を定めましょう。

たとえば、原材料受け入れチェックには以下のような手順があります。

①書類照合

伝票と規格書を見比べ、品名・数量・ロット番号が一致しているか確認。

②外観と包装の点検

色や形に異常がないか、異臭がしないかを目視と嗅覚で確認。包装の破れや汚れ、漏れがないかも合わせて確認。

③鮮度・温度の確認(生鮮品)

野菜や魚などは変色や乾燥がないかをチェック。冷蔵・冷凍品は温度計で中心温度を測定し、基準内かを記録。

④記録と判定

チェックリストに結果を記入し、規格外がないか最終判定。合格品は所定の保管場所へ移動する。

⑤異常発見時の対応

不良が見つかった場合は使用を中止し、隔離保管する。仕入先と上長へ報告し、原因調査と再発防止策を実施。

このように、確認する内容や方法を決め、記録と判断を仕組みにすることが、安全な食品づくりには欠かせません。

早い段階で問題を見つけることで、不良の拡大を防ぎ、安定した品質を保つことにつながります。

(5)製品の保管・輸送中の品質を守る

食品の品質を安定させるためには、製造後の保管や輸送の段階でも、適切な温度や衛生状態を保つことが重要です。

冷蔵や冷凍が必要な製品は、定められた温度で保管しなければなりません。

そのために、冷蔵庫や冷凍庫には温度計を設置し、常に記録を取って温度の変化にすぐ気づけるようにします。

また、先に製造したものから順番に出荷する「先入先出」のルールを守ることで、品質の劣化や賞味期限切れを防げます。

輸送中も温度が保たれているか、振動や衝撃で製品が傷んでいないかをチェックすることが欠かせません。

なお、運送会社と連携し、輸送中の温度記録や事故時の連絡体制を整えることも品質を管理する上ではとても大切です。

(6)作業員への教育を通して品質意識を高める

作業員一人ひとりが正しい知識と意識を持って作業するためには、教育や研修などの取り組みが必要です。

品質トラブルの多くは、人の不注意や知識不足によって起こります。

たとえば、手洗いの手順を守らなかったり、衛生ルールを知らずに作業を進めたりすると、思わぬ事故の原因になる場合があります。

このような事態を防ぐには、入社時だけでなく、定期的に衛生や品質に関する研修を行うことが大切です。

研修以外にも、現場ではイラスト入りの手順書やポスターを使って、誰でもわかりやすく学べる環境をつくる工夫も行いましょう。

また、作業員から改善案を出してもらうなど、参加型の教育にすることで、自分ごととして品質について考える姿勢も育っていきます。

3.食品業界で直面する品質管理の5つの問題点

食品業界における品質管理では、以下のような課題を抱えている事業所も少なくありません。

  • パート・アルバイト従業員による衛生意識のばらつき
  • 衛生管理マニュアルの未整備
  • 製造工程での異物混入リスクの見落とし
  • HACCPや各種認証制度への対応コストの負担
  • 品質トラブル発生時の対応体制の不十分さ

しかし、これらの問題を理解し、あらかじめ対策を講じておくことで、現場での品質トラブルやクレームの発生を未然に防ぐこともできます。

ひとつずつ見ていきましょう。

(1)パート・アルバイト従業員による衛生意識のばらつき

食品工場などの現場では、パートやアルバイトの従業員が多く働いています。

そのため、全員が同じように衛生ルールを理解し、ちゃんと守れているとは限りません。この意識の差が品質リスクにつながる場合があるのです。

正社員に比べて、パート・アルバイトの多くは短期間で入れ替わることがあり、十分な教育が行き届かないまま現場に出ることも少なくありません。

また、年齢や経験の違いにより、衛生への理解や意識の高さにも差が出やすくなります。

たとえば、手洗いやマスクの着用が不十分なまま作業を始めてしまう、清掃の基準が人によって違う、といったケースが見られます。

このようなばらつきがあると、思わぬ異物混入や食中毒のリスクにつながってしまうかもしれません。

(2)衛生管理マニュアルの未整備

食品工場や店舗では、衛生管理マニュアルが整っていないと、作業方法にばらつきが生まれ、結果として衛生事故の原因になることがあります。

現場では、手洗いの手順、作業着の着用方法、清掃の頻度など、細かなルールを決めておく必要があります。

しかし、マニュアルがない、もしくは古くなって現場の実態と合っていない場合、作業員ごとにやり方が違ってしまい、異物混入や衛生トラブルが発生しやすくなるでしょう。

また、文字だけの難しいマニュアルでは、アルバイトや外国人スタッフが理解しづらく、形だけの管理になってしまうこともありえます。

(3)製造工程での異物混入リスクの見落とし

食品を製造する工程では、髪の毛や金属片、プラスチックなどの異物が混入する危険はつきものです。

異物の混入は、作業員の身だしなみの不備や設備の劣化、清掃不足など、さまざまな原因から発生します。

たとえば、帽子から髪の毛が出ていたり、ひび割れた機械の部品が落ちたりすることで、製品に異物が入る可能性があります。

小さな異物だったとしても、クレームや自主回収といった大きな問題に発展するため、現場全体で細かな注意が必要です。

(4)HACCPや各種認証制度への対応コストの負担

食品業界では、HACCPや各種の認証制度への対応が必要です。

しかし、その導入や運用には人手や費用がかかるため、とくに中小企業にとって大きな負担となっているのが実情です。

HACCPでは、製造工程のすべてを見直し、危険を予測・管理する必要があります。

これに伴い、マニュアルの整備や記録の作成、設備の導入、従業員の教育など、時間と費用の両方がかかります。

さらに、ISOやFSSCなどの国際認証を取得する場合は、外部監査や定期更新も求められ、専任の担当者がいなければ対応をすることは難しいでしょう。

とくに人員に余裕のない小規模な事業所では、日々の業務をこなしながらこれらの準備を進めることが難しく、対応が遅れる原因となっています。

しかし、対応しないままでいると、取引停止や信頼の低下につながるため、避けて通ることはできないのです。

(5)品質トラブル発生時の対応体制の不十分さ

食品の品質トラブルが発生したとき、すぐに適切な対応が取れない体制は、大きなリスクにつながります。

品質に問題が発生した際には、製品の回収、原因の調査、関係先への連絡など、多くの対応が必要になります。

しかし、誰が対応を指示し、どのような手順で進めるかが決まっていない場合、現場が混乱し、対応が遅れてしまうこともあるでしょう。

たとえば、異物が見つかった際に、対象製品の特定や出荷先の確認がすぐにできなければ、苦情が広がる原因になります。

また、従業員に対応方法が共有されていないと、報告や記録が不十分になり、根本的な改善につながらないことにもつながります。

4.食品業界で押さえるべき品質管理の5つの視点

前章で紹介した課題を解決するためのポイントは、以下の5つです。

  • 衛生教育を定期に実施する
  • 衛生管理マニュアルを整備する
  • 製造工程ごとのリスク評価と異物混入対策を徹底する
  • HACCP制度を段階的に導入する
  • 品質トラブル時の初動対応フローを確立する

基本を見直したい方も、これから整備を進めたい方も役に立つ内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。

(1)衛生教育を定期に実施する

食品の安全を守るには、衛生管理のルールを単に知識として知っているだけでなく、現場で正しく実行できることが大切です。

そのためには、定期的な衛生教育を行い、全従業員の意識と行動をそろえる必要がおうあります。

衛生に関するルールは、一度学べば終わりというものではありません。

手洗いの方法や作業服の着用、清掃の手順など、日々の業務で守るべき内容は多く、慣れや油断からミスが生まれやすくなります。

とくに、アルバイトや新人は経験が浅く、ルールの理解が不十分なまま作業に入ることもあるため、定期的な教育が欠かせません。

また、食中毒や異物混入の事故は、小さな衛生意識のゆるみが原因となることも多く、教育によって自分ごととして意識を持たせることが大切です。

動画や図を使ったわかりやすい教材、実習を取り入れた研修など、理解しやすい工夫も効果的です。

(2)衛生管理マニュアルを整備する

誰が作業しても同じことができるようにするためには、衛生管理マニュアルを整備しておくことが重要です。

衛生管理には、手洗いや消毒、清掃、服装など、細かな作業ごとに決めておくべき内容が多く存在します。

しかし、これらが曖昧なままでは、人によって判断や手順が異なり、衛生状態に差が出てしまう恐れがあります。

とくに、新人や経験の少ない従業員にとっては、ベテランの感覚に頼った指導だけでは理解が難しく、間違った方法で覚えてしまうこともあるでしょう。

そのため、文章だけでなく写真や図を交えて、誰が見てもすぐに理解できるマニュアルにする工夫が必要です。

(3)製造工程ごとのリスク評価と異物混入対策を徹底する

安全な食品を届けるためには、製造の各工程にどのような危険があるかを事前に把握し、適切な対策を行うことが欠かせません。

とくに異物混入は消費者の信頼を大きく損なうため、工程ごとのリスク評価と防止策を徹底することが必要です。

製造中に起こりやすい異物混入には、髪の毛や金属片、プラスチックなどがあります。

これらは、作業員の身だしなみの不備、設備の劣化、清掃不足など、さまざまな原因から発生します。

そのため、原料投入・加熱・包装など、各工程でどのような異物が混入する可能性があるのかを洗い出し、それぞれに応じた対策を講じることが大切です。

具体的には以下のような方法があります。

  • 金属探知機を使って金属片をチェックする
  • エアシャワーで毛髪やホコリを除去する
  • 作業エリアのゾーニングで交差汚染を防ぐ
  • 道具の色分け・番号管理で破損品を早期発見する
  • 点検と報告のルールを決めて対応を早くする

このように製造工程ごとのリスクを見える化し、異物混入を未然に防ぐ対策を行うことが品質管理には重要です。

(4)HACCP制度を段階的に導入する

食品の製造・加工、調理、販売など、食品に関わる事業者は、HACCP制度を導入し、製造の各工程で危険を管理することが義務付けられています。

HACCPとは、食品をつくる過程でどのような危険があるかを事前に洗い出し、その対策を決めて、記録しながら管理していく仕組みです。

たとえば、「加熱が足りないと菌が残る」というリスクに対して、「何度で何分加熱するか」を定め、毎回チェックして記録を残すといった流れになります。

しかし、HACCPをいきなりすべての製品や工程に適用するのは現実的ではありません。

まずは代表的な製品や重要な工程から始め、記録の取り方や点検の流れに慣れてから、少しずつ範囲を広げていく方法がおすすめです。

社内で担当者を決め、手順書の作成や教育を進めていくとよいでしょう。

(5)品質トラブル時の初動対応フローを確立する

万が一、食品に関する品質トラブルが発生した場合、被害を最小限におさえるためには、初動対応の流れをあらかじめ決めておくことが重要です。

異物混入や表示ミス、賞味期限切れなどのトラブルは、いつ発生するか予測できません。

対応が遅れれば、製品の回収やお客様対応が後手に回り、企業の信用を大きく損なう恐れがあります。

そのため、まずは現場で異常を発見したときに、どの部署へ報告するのか、どの書類に記録するのかといった基本的な流れを整備しましょう。

次に、製品の隔離、原因調査、関係者への連絡、再発防止策の検討までを段階的に整理し、一覧表などにして社内で共有します。

年に1回程度は模擬訓練を行い、緊急時でも慌てず対応できる体制をつくっておくことが大切です。

5.まとめ

今回は、食品業界における品質管理の重要性と、その現場で実践すべき5つの視点について解説しました。

具体的には、衛生教育の定期実施、マニュアルの整備、製造工程ごとのリスク評価と異物混入対策、HACCP制度の段階的導入、品質トラブル時の初動対応フローの確立について、それぞれの目的や取り組み方を紹介しました。

これらの視点を押さえることで、品質のばらつきや事故のリスクを減らし、安心・安全な食品づくりにつなげることができます。

本記事が、現場の課題を見直し、品質管理体制の改善につなげる一助となれば幸いです。

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