切削油は危険!?ISO14001におけるリサイクル・廃棄の区別の仕方とは?
2025年11月12日

目次
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1. 切削油は危険物
ISO14001では法令遵守が求められますが、その法令遵守には「消防法」も含まれています。
切削油は消防法において、危険物に該当するものです。
切削油について詳しく見ていきましょう。
(1)切削油とは

切削油(せっさくゆ)とは、金属などの切削加工を行う際に、摩擦の抑制と冷却のために使用する油のことです。
切削油は皮膚に付着すると刺激やかぶれを引き起こす可能性があり、目に入ると炎症を起こす危険性があります。また、飛散した切削油には切りくずが含まれる場合があるため、皮膚の露出を防ぐ作業服や手袋の着用が重要です。
消防法では、火災発生や拡大、消火の困難性が高い物質を「危険物」として規制しています。
切削油もその対象となる場合があり、危険物の部類で第四類の引火性液体に該当します。(それぞれの油種により引火点が異なり、その引火点により第四類の第○石油類などのように種類が分れ指定数量が決められています)
| 分類 | 引火点 | 主な該当例 | 指定数量(非水溶性) | 指定数量(水溶性) |
| 第2石油類 | 21℃〜70℃未満 | 灯油、軽油、一部の切削油 | 1,000L | 2,000L |
| 第3石油類 | 70℃〜200℃未満 | 重油、多くの切削油 | 2,000L | 4,000L |
| 第4石油類 | 200℃〜250℃未満 | ギヤー油、一部の切削油 | 6,000L | (区分なし) |
ただし、「引火点」によって分類が変わることから、使用中の切削油の引火点は必ず確認しましょう。
消防法についてはこちらもご覧ください。
(2)指定数量超過時の届出・設備対応
切削油の保管・使用量が指定数量(※)を超える場合、消防法の規制対象となり、以下の対応が必要です。
- 消防署への「許可申請」(危険物貯蔵所・取扱所として)
- 危険物取扱者(乙種4類など)の配置
- 防油堤、防火壁、消火設備など、基準に適合した設備の設置
- 定期点検(年次点検など)の実施と記録の保存
これらの許可や設備基準を満たさない場合、行政処分や罰則の対象となります。
(※)指定数量未満(1/5以上)の場合は、消防法ではなく市町村条例に基づき「届出」が必要となるのが一般的です。
2. 切削油のリサイクル対応と不向きな油の判断
ISO14001では、廃油のリサイクル可能性を見極め、環境負荷低減とコスト削減の両立が求められます。
(1)リサイクル可能なケース
水分・金属粉など不純物を除去できるものであったり、酸化・腐敗の進行が軽微で、塩素系添加剤が含まれていない油はリサイクル可能です。
VOC排出規制に抵触していなかったり、安定した性状が保たれている油もリサイクル可能な油に該当します。
リサイクル業者の仕様により、有価で引き取られるため、現場コストと環境負荷両方にメリットがあります。
(2)リサイクルに向いていない油の条件
水分・乳化・腐敗など著しい劣化があったり、塩素系成分が多く含まれていたりする油はリサイクルに不向きです。
また、金属粉などの不純物が除去困難であったり、微生物処理や蒸留では成分分離が難しい油も不向きです。
このような油はリサイクルが難しく、廃棄となるので注意しましょう。
3. リサイクル不可時は産業廃棄物として処理する
リサイクルできない切削油は、「廃油」として産業廃棄物処理法に基づき処理されます。
ここでは委託・許可・マニフェストの要件を整理します。
(1)委託契約の要件(排出事業者責任)
収集運搬・処分許可を持つ業者との書面契約か(許可証写し付き)、保管・収集・運搬・処分の過程が法令に則っているか、廃油に関しては「委託契約」および「マニフェスト管理」で一貫して管理されているか、以上の要件を厳守します。
許可証・契約書・処理実績は5年間以上の保存義務があります。
(2)マニフェスト運用
産業廃棄物管理票(マニフェスト)により、廃油が最終処分場へ届くまでの経路と処理実績の確認が行われます。
不正行為や行方不明などがあると、排出元企業も罰則対象になります。
(3)環境事故防止対策
環境事故防止対策として、従業員への漏洩事故対応・緊急処理マニュアル教育であったり、排水設備やグリストラップなどの保守、そして廃油貯蔵エリアの標識設置・漏洩防止措置を徹底することが挙げられます。
4. ISO14001で求められる法令順守体制と定着化
ISO14001では、「法的要求事項の順守」が重要項目です。
特に切削油は、その保管(消防法)、廃棄(廃棄物処理法)、排水(水質汚濁防止法)など、多くの法律に密接に関係しています。
これらを守るために、現場の仕組みとして定着させることが求められます。具体的には、以下のような活動が軸となります。
(1)法規制リストの整備
関連法令(消防法・廃掃法・水質汚濁防止法など)を台帳化し定期更新しましょう。
(2)SDSによる分類と保管管理
SDSを利用して切削油の性状の判別や危険物性・廃棄分類を明記した管理台帳を構築していくことが大切です。
(3)手順書・教育体制の整備
切削油の扱い・廃棄対応・緊急時対応を手順書化や新任・定期教育および事故対応訓練を実施していく必要があります。
(4)記録とレビュー(PDCA)
委託契約・マニフェスト・点検記録・教育履歴などを文書管理したり、さらに年次内部監査や経営層レビューに含め、改善活動の根拠にするなど、PDCAを回していきましょう。
5. 法令違反リスクとISO・社会的ペナルティ
もし切削油の管理不備によって法令違反が起きてしまったら、どのような事態が待っているのでしょうか。
- 指定数量超過の未届出や無許可委託が発覚した場合
- 罰則やその事実が公表されます。
- 廃油不正処理や流出した場合は
- 刑事罰、監督指導、操業停止命令となります。
- 監査における法的順守不備が発覚した場合
- 不適合判定とみなし修正または改善を要求します。
- 違反内容が深刻な場合
- 審査不合格や認証剥奪の可能性があります。
法令違反をしてしまうと、企業イメージの失墜となり、顧客取引停止、自治体指導、取引停止リスクなどにも影響します。
単なる現場の問題ではなく、企業全体の信頼と存続に関わる重大なリスクであることを、改めて認識する必要があります。
6.まとめ
本コラムでは、ISO14001の取り組みにおいて、なぜ切削油の管理が重要なのかを見てきました。
切削油は、単に「作業を支える素材」というだけではありません。管理方法を間違えれば、「環境問題」あるいは「法令違反」に直結しかねない、非常にデリケートな物質です。
ISO14001では、こうした環境への影響や、守るべき法律、働く人の安全など、様々なルールへの対応が求められます。これらの対応を「ISOのルールだから仕方なく守る」という受け身の姿勢で捉えてしまうのは、非常にもったいないことです。
ISO14001の取り組みを、切削油の管理体制を根本から見直す良いチャンスと捉えてみませんか?「やっただけ」で終わらせず、環境と経営の両方を良くしていく効率的な運用を目指しましょう。
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