ISMSの教育はこう変わる!eラーニング導入の実践ノウハウ
2025年11月12日

目次
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- 1.ISMSにおける情報セキュリティ教育の重要性
- (1)なぜ教育が必要なのか
- (2)誰にどんな教育が必要か
- 2.ISMSの教育におけるeラーニングとは?従来の教育方法との比較
- (1)集合研修・資料配布との違い
- (2)eラーニング導入が増えている背景
- 3.eラーニングの相場と費用の内訳
- (1)初期費用・運用費用の一般的な目安
- (2)受講人数・機能(テスト、レポート機能など)による違い
- (3)クラウド型/オンプレミス型の相場の違い
- 4.無料で使える・低コストで始められるeラーニングサービス
- (1)無料で試せるサービス例
- (2)無料サービスを利用する際の注意点
- (3)自社でコンテンツを制作する工夫ポイント
- 5.有料eラーニングとの比較と選び
- (1)有料サービスのメリット
- (2)失敗しないための比較ポイント
- 6.導入効果を高める工夫と注意点
- (1)メリット・デメリットの整理
- (2)教育内容を毎年見直す必要性
- (3)受講管理・運用体制の整え方
- 7.まとめ
「ISMSの教育をしても従業員の意識が低ければ、効果がでないのでは?」
このような不安をお持ちではないでしょうか。
テレワークの普及やサイバー攻撃の巧妙化が進むなか、ISMSにおいて従業員教育の重要性はますます高まっています。
しかし、従来の集合研修や資料配布だけでは、教育コストがかさむ上に、従業員一人ひとりの理解度を把握できず、形だけの教育に終わってしまうリスクがあります。
この記事では、eラーニング導入によるISMS教育のメリットから、効果的なコンテンツの作り方、運用・改善のポイントまで、実践的なノウハウを解説します。
最後までお読みいただくと、ISMS教育の課題を解決する具体的な方法が身につき、従業員のセキュリティ意識を確実に向上させることができます。自社の情報資産を守り、企業価値を高めるための第一歩を踏み出してください。
1.ISMSにおける情報セキュリティ教育の重要性

(1)なぜ教育が必要なのか
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、組織の情報資産を守るための仕組みです。しかし、システムやルールだけでは十分ではなく、それを運用する「人」の意識と行動が極めて重要です。
情報漏洩やサイバー攻撃の多くは、従業員の不注意や知識不足による「ヒューマンエラー」が原因です。例えば、不審なメールの添付ファイルを開いてしまう、パスワードを使い回す、機密情報を公共の場で扱うなど、日常の些細な行動が重大な事故につながる可能性があります。
そのため、ISMSの国際規格であるISO27001でも、従業員への情報セキュリティ教育の実施は必須事項とされています。教育を怠ることは、ISMS認証審査において「不適合」と判断されるリスクにもつながります。
【教育の必要性とその理由】
| 項目 | 内容 |
| ISMSの目的 | 組織の情報資産を保護するための管理体制 |
| 教育の必要性 | システムやルールだけでは不十分。人の意識と行動が不可欠 |
| 主なリスク要因 | ヒューマンエラー(不注意・知識不足)による情報漏洩・事故 |
| 具体的な事例 | ・不審メールの添付ファイルを開封 ・パスワードの使い回し ・公共の場での機密情報の取り扱い |
| 教育の効果 | 従業員が正しい知識と行動を身につけ、事故を未然に防ぐ |
| ISMS認証との関係 | 教育・訓練の実施状況は審査対象。不実施は不適合リスクとなる |
定期的な教育を通じて、従業員一人ひとりが情報セキュリティの重要性を理解し、適切な行動を取れるようになることが、組織全体の安全性を高める最も効果的な手段となります。
(2)誰にどんな教育が必要か
ISMSを効果的に運用するためには、組織に関わるすべての人に対して、適切な情報セキュリティ教育を実施することが不可欠です。対象は正社員だけでなく、契約社員、アルバイト、派遣社員、業務委託先の関係者まで広く含まれます。
それぞれの立場や業務内容に応じて、教育すべき内容は異なります。全員に共通する基礎教育に加え、管理職やIT担当者などにはより専門的な内容が求められます。また、新入社員や短期雇用者には、早期に組織のルールを理解させる教育が必要です。
【教育対象ごとの内容一覧】
| 対象者 | 主な教育内容 |
| 全従業員 | ・情報セキュリティの基本原則(機密性・完全性・可用性) ・会社のポリシーと規程の理解 ・パスワード管理 ・ソーシャルエンジニアリング対策 ・機密情報の取り扱い ・SNS利用の注意点 ・個人情報保護の基本 |
| 一般社員 | ・メール利用の注意点 ・情報持ち出しの制限 ・在宅勤務時のセキュリティ対策 |
| 管理職 | ・部下への教育・指導方法 ・インシデント発生時の対応手順 ・リスクマネジメントの考え方 |
| IT担当者/システム管理者 | ・システム脆弱性対策 ・サイバー攻撃の種類と対策(マルウェア、DDoSなど) ・ログ監視とアクセス制御 ・権限設定 ・セキュリティパッチの適用 |
| 新入社員・派遣社員 | ・入社時の基礎教育 ・組織ルールの早期理解と定着 |
情報セキュリティ教育は「一律」ではなく、「役割に応じた最適化」が大切です。これにより、組織全体のセキュリティレベルが向上し、ヒューマンエラーによるリスクを最小限に抑えることができます。
2.ISMSの教育におけるeラーニングとは?従来の教育方法との比較
(1)集合研修・資料配布との違い
情報セキュリティ教育をはじめとする社内教育では、従来「集合研修」や「資料配布」が主流でした。しかし、これらの方法には「時間・場所の制約」や「学習効果・受講管理の不透明さ」といった課題があります。
一方、eラーニングはインターネットを活用し、時間や場所を問わずに学習できる柔軟な教育手法です。動画やクイズ形式で理解度を高められるほか、受講履歴やテスト結果を自動記録できるため、教育の実施状況を客観的に把握することが可能です。ISMSの審査においても、教育の証跡として活用できます。
【教育手法の比較表】
| 項目 | eラーニング | 集合研修 | 資料配布 |
| 場所・時間 | いつでもどこでも受講可能(在宅勤務にも対応) | 指定された日時・場所に集合 | 資料を読むだけで、学習タイミングは任意 |
| コスト | 低コスト(システム導入のみ) | 会場費・講師手配・交通費など高コスト | 印刷費・郵送費などが発生 |
| 教育効果 | ・動画・クイズ形式で理解度向上 ・テストで習熟度を把握可能 | ・講師への質問は可能 ・個人差が出やすい | ・読んだかどうか不明 ・理解度の確認が困難 |
| 管理 | ・受講履歴・テスト結果を自動記録 ・審査用エビデンスになる | ・出欠確認のみ ・習熟度の記録は困難 | ・誰が読んだか把握できない |
(2)eラーニング導入が増えている背景
近年、多くの企業が情報セキュリティ教育やコンプライアンス教育の手法として「eラーニング」を導入しています。その背景には、社会や働き方の変化、法規制の強化、そして業務効率化へのニーズがあります。
従来の集合研修では、時間や場所の制約が大きく、講師の手配や会場準備などに多くのコストがかかっていました。また、資料配布型の教育では、受講状況や理解度の把握が困難でした。
eラーニングは、これらの課題を解決する柔軟で効率的な教育手法として注目されており、特にISMSやプライバシーマーク(Pマーク)などの認証制度においても、教育記録の保存が求められることから、導入が加速しています。
【eラーニング導入が進む主な理由】
①働き方の多様化
- テレワークやシフト勤務の普及により、集合研修の実施が困難に
- eラーニングなら自宅や外出先でも受講可能
②法規制・認証要件の強化
- 個人情報保護法や各種ガイドラインの改定により、継続的な教育が必要
- ISMSやPマークでは教育記録の保存が必須
③効率化・コスト削減
- 講師派遣費や会場費が不要
- 数百人規模でも一斉に教育可能
- 受講履歴を一元管理でき、教育担当者の負担軽減
eラーニングは、柔軟性・効率性・法令対応力の三拍子が揃った教育手法です。今後も企業の教育体制の中核として、ますます重要性が増していくと考えられます。
3.eラーニングの相場と費用の内訳
(1)初期費用・運用費用の一般的な目安
eラーニングは柔軟で効率的な教育手法として多くの企業に導入されていますが、その費用はサービスの形態、機能、受講人数、コンテンツの有無などによって大きく異なります。
導入時には「初期費用」「月額費用」「コンテンツ制作費用」の3つが主なコスト要素となります。
以下に、それぞれの費用の目安と内訳を整理しました。
【eラーニング費用の構成と相場】
| 項目 | 費用目安 | 内訳・補足説明 |
| 初期費用 | 0円〜50万円 | ・システム環境構築 ・サービスセットアップ ・アカウント登録など初期設定関連費用 |
| 月額費用 | 2万円〜30万円程度 または1ユーザーあたり300〜1,000円 | ・サービス利用料 ・受講人数に応じた課金 ・機能(テスト、動画、管理画面など)によって変動 |
| コンテンツ制作費用 | 1テーマあたり10〜30万円(外注時) | ・オリジナル教材の制作 ・動画、クイズ、ナレーションなどの制作費用 |
【費用を抑えるポイント】
- 既存コンテンツの活用:外注せず社内資料をベースにすることで制作費を削減可能
- 定額制サービスの選定:受講人数が多い場合は、定額制プランの方が割安になることも
- 段階的導入:まずは一部部署から導入し、効果を見て全社展開する方法も有効
(2)受講人数・機能(テスト、レポート機能など)による違い
eラーニングの導入費用は、企業規模(受講人数)や導入する機能の内容によって大きく変動します。多くのサービスでは「従量課金制」が採用されており、受講者数が増えるほど費用は上がりますが、一定規模を超えると「ボリュームディスカウント」が適用され、1人あたりの単価が下がるケースもあります。
また、テスト機能、レポート機能、修了証発行、多言語対応、SCORM対応、SSO(シングルサインオン)などの高度な機能を追加すると、費用はさらに上昇します。企業の目的や運用体制に応じて、必要な機能を選定するようにしましょう。
【受講人数・機能別の費用目安】
| 規模・条件 | 月額費用の目安 | 備考・特徴 |
| 小規模企業(〜100人) | 約2万〜5万円程度 | ・クラウド型サービスで十分 ・基本機能のみで運用可能 |
| 中規模企業(〜500人) | 約10万〜20万円程度 | ・受講人数に応じた課金 ・一部機能追加で教育効果向上 |
| 大規模企業(1,000人以上) | 30万円以上〜 | ・ボリュームディスカウントあり ・1人あたり数百円まで低減可能 |
| 機能追加オプション | 別途加算 (数万円〜数十万円) | ・テスト、レポート、修了証発行 ・SCORM対応、SSO連携、多言語対応などで費用上昇 |
eラーニングは、企業の規模や目的に応じて柔軟に設計できる教育手法です。費用対効果を最大化するためには、必要な機能を見極め、適切なサービスを選定することがポイントです。
(3)クラウド型/オンプレミス型の相場の違い
eラーニングの導入には、大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つの方式があります。それぞれに特徴や費用、適した企業規模が異なり、導入目的やセキュリティ要件に応じて選択する必要があります。
クラウド型は、サービス提供会社のサーバーを利用する形態で、初期費用が低く導入が容易なため、中小企業に適しています。
一方、オンプレミス型は自社サーバーにシステムを構築する方式で、初期費用は高額ですが、セキュリティ要件に応じた柔軟なカスタマイズが可能なため、大企業や機密性の高い業務を扱う組織に向いています。
【クラウド型vsオンプレミス型 比較表】
| 項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
| 特徴 | ・外部サービス会社のサーバーを利用 ・インターネット経由で提供 | ・自社サーバーにシステム構築 ・社内ネットワークで運用 |
| 初期費用 | 0円〜10万円程度(または無料) | 数百万円〜(200万円以上が一般的) |
| 月額費用 | 月額課金制(受講人数に応じて変動) | 月額費用は基本なし(自社運用) |
| メリット | ・導入が容易 ・運用・保守の負担が少ない ・中小企業に最適 | ・セキュリティ要件に応じたカスタマイズが可能 ・大企業向け |
| デメリット | ・カスタマイズ性に制限あり ・外部依存のリスク | ・導入コスト・運用負担が大きい ・ITインフラの整備が必要 |
クラウド型はスピーディな導入と低コスト運用が魅力で、特に中小企業や初めてeラーニングを導入する企業におすすめです。一方、オンプレミス型は高いセキュリティ要件や複雑な業務フローに対応できる柔軟性があり、長期的な運用を見据えた大企業に適しています。
4.無料で使える・低コストで始められるeラーニングサービス
予算が限られている場合は、まずは無料で試せるサービスから始めるのが良いでしょう。
(1)無料で試せるサービス例
eラーニングの導入を検討する際、まずは無料で利用できるサービスを活用して、小規模な教育環境を構築することが可能です。これにより、初期投資を抑えつつ、教育効果や運用の手間を確認することができます。
Google ClassroomやEdmodoなどの教育支援ツール、さらにはPowerPointとYouTubeを組み合わせた自作教材の配信など、無料でも十分に活用できる選択肢があります。また、Moodleのようなオープンソース型LMS(学習管理システム)を使えば、より本格的な運用も可能です。
【無料で使えるeラーニングサービス一覧】
| サービス名 | 特徴・機能 | 注意点・制限事項 |
| Google Classroom | ・Googleアカウントで無料利用可能 ・教材配布、課題提出、テスト実施が可能 | ・受講履歴の管理機能は限定的 |
| Edmodo | ・教育向けSNS型ツール ・資料共有、クイズ機能が充実 ・シンプルで使いやすい | ・日本語対応や企業向け機能は限定的 |
| PowerPoint+YouTube | ・自作スライドを動画化し、YouTubeで限定公開 ・手軽に教育コンテンツを配信可能 | ・受講管理や理解度確認は別途工夫が必要 |
| YouTube+Googleフォーム | ・動画視聴+フォームでテスト実施 ・完全無料で簡易eラーニング環境を構築可能 | ・LMSのような一元管理機能はなし |
| Moodle (オープンソース) | ・自社サーバに導入可能な本格LMS ・教材配布、テスト、受講履歴管理など多機能 | ・導入・運用に専門知識が必要 ・サーバ環境の準備が必要 |
これらの無料サービスは、eラーニング導入の「お試し」や「小規模運用」に最適です。まずは手軽な方法から始めて、運用の課題やニーズを明確にした上で、有料サービスへの移行を検討するのも効果的です。
(2)無料サービスを利用する際の注意点
無料で利用できるeラーニングサービスは、初期費用をかけずに教育を始められる手軽さが魅力です。Google ClassroomやYouTube+Googleフォームなどを活用すれば、教材配信や簡易テストも可能です。
しかし、無料サービスにはいくつかの制約があるため、導入前に注意すべきポイントを把握しておくことが重要です。特に「機能の制限」「サポート体制の不在」「セキュリティ対策の自己責任」などは、企業運用においてリスクとなる可能性があります。
【無料サービス利用時の主な注意点一覧】
| 注意点 | 内容・詳細 |
| 機能制限 | ・進捗管理やテストの自動採点ができない場合あり ・詳細なレポート機能が非搭載のことが多い |
| 管理機能の限界 | ・受講状況を一覧で把握できない ・履歴管理や修了証発行などができないケースもある |
| サポート体制 | ・専門的なサポートが提供されない ・トラブル時は自力で対応する必要がある |
| セキュリティ | ・外部プラットフォーム利用による情報漏えいリスク ・アクセス制御やログ管理は自社で工夫が必要 |
無料サービスは「まず試してみる」段階には非常に有効ですが、企業として本格的に運用するには、機能やサポート、セキュリティ面での限界を理解した上で、必要に応じて有料サービスへの移行を検討することが望ましいです。
(3)自社でコンテンツを制作する工夫ポイント
eラーニングを導入する際、外部サービスに頼らず自社でコンテンツを制作することで、コストを抑えつつ自社の実情に合った教育が可能になります。特に社内規程や業務ルールをベースにした教材は、実践的かつ即効性が高く、従業員の理解促進に効果的です。
制作にあたっては、PowerPointを活用した動画化や、Google Formsなどの無料ツールを使ったテストの組み込みが有効です。また、毎年の更新を行うことで、最新の事故事例や法改正、社内ルールの変更にも対応できます。
【自社制作コンテンツの工夫ポイント】
ポイント①:社内規程の動画化
- PowerPointに音声ナレーションを追加
- mp4形式で書き出せば、簡単に動画教材が完成
ポイント②:理解度テストの導入
- Google Formsなどを活用してクイズや小テストを作成
- 学習効果を測定し、定着度を確認可能
ポイント③:定期的な更新
- 毎年一部を改訂し、最新の事故事例や法令・社内ルールの変更を反映
- 教育内容の鮮度を保つ
ポイント④:コスト削減と柔軟性
- 外注不要で低コスト
- 自社の業務や文化に即した内容を自由に構成できる
自社制作のeラーニングコンテンツは、現場に即した教育を実現できるだけでなく、継続的な改善によって教育効果を高めることができます。まずは小さなテーマから始めて、徐々に拡張していくのもおすすめです。
5.有料eラーニングとの比較と選び
ISMSの教育を本格的に実施するには、無料サービスだけでは限界があります。より高い教育効果と運用効率を求めるなら、有料eラーニングサービスの導入を検討する必要があります。
有料サービスは、専門的なコンテンツがあらかじめ用意されており、教材制作の手間を省けるだけでなく、受講者の進捗管理や理解度測定、レポート作成などの機能が充実しています。また、導入から運用まで専任のサポートが受けられるため、トラブル対応や設定作業も安心です。
さらに、ISMS認証取得企業での導入実績が豊富なサービスであれば、信頼性も高く、審査対応にも有効です。
(1)有料サービスのメリット
有料サービスは、教育の質・管理の効率・法令対応のすべてを高水準で実現できる選択肢です。特にISMS認証取得を目指す企業にとっては、教育の信頼性と継続性を確保するための重要な投資となります。
【有料eラーニングサービスの主なメリット一覧】
①専門的なコンテンツ
- ISMSや情報セキュリティに特化した教材が提供される
- 法改正や最新インシデント事例も反映済み
②機能の充実
- 受講履歴の記録
- 進捗状況の可視化
- 多様なテスト形式
- 修了証発行や受講者管理が可能
③サポート体制
- 導入から運用まで専任担当者が対応
- 設定やトラブル時の相談が可能
④実績と信頼性
- ISMS認証取得企業での導入実績が豊富
- 審査対応のエビデンスとしても活用可能
(2)失敗しないための比較ポイント
eラーニングサービスを導入する際、価格や知名度だけで選ぶと、運用後に「機能が足りない」「サポートが不十分」「管理が煩雑」といった問題が発生することがあります。そこで、導入前に以下の観点から比較・検討することが重要です。
特にISMSや情報セキュリティ教育など、制度対応が求められる分野では、機能の充実度やサポート体制、運用のしやすさ、導入実績などが教育の質と継続性に直結します。
【eラーニングサービス比較ポイント一覧】
| 比較項目 | チェックポイント |
| 機能 | ・テスト機能、修了証発行、レポート抽出、受講管理、通知機能など ・必要な機能がすべて揃っているか |
| サポート体制 | ・導入支援の有無 ・電話・メール・チャット対応 ・マニュアルやFAQの充実度 |
| 運用体制 | ・管理者の負担を軽減できるか ・システムの使いやすさ ・コンテンツの更新頻度や柔軟性 |
| 料金体系 | ・受講人数や利用期間に応じた料金設定 ・自社の予算に合っているか |
| 導入実績 | ・同業他社での導入事例があるか ・ISMS認証取得企業での活用実績があるか |
これらのポイントを事前に整理して比較することで、自社に最適なeラーニングサービスを選ぶことができ、導入後のトラブルや手戻りを防ぐことができます。
6.導入効果を高める工夫と注意点
eラーニングは導入するだけで完結するものではなく、継続的な運用と改善によって初めて効果を発揮します。特にISMSや情報セキュリティ教育など、組織全体の意識向上を目的とする場合は、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで、適切な対策を講じる必要があります。
例えば、学習履歴の管理やコスト削減といった利点がある一方で、受講者のモチベーション維持やコンテンツの最適化には工夫が必要です。定期的なアンケートの実施や、リアルな場での補完的な交流を組み合わせることで、学習効果を高めることができます。
(1)メリット・デメリットの整理
【メリット】
- どこでも学習可能(時間・場所の制約なし)
- 教育コストの削減
- 学習履歴の記録・管理が容易
- 理解度の可視化による教育効果の向上
【デメリット】
- 一方的な学習になりがち
- 受講態度やモチベーションにばらつきが出る
- 自社に最適なコンテンツが不足する場合あり
- システム運用に一定の負荷がかかる
【効果を高めるための工夫】
- アンケートの活用:受講者の満足度や理解度を定期的に把握し、改善に活かす
- リアル研修との併用:オンラインだけでなく、対面でのディスカッションやワークショップを組み合わせる
- コンテンツの最適化:自社の業務やルールに合わせた教材を定期的に更新する
- 運用サポートの整備:管理者の負担を軽減するため、操作マニュアルやFAQを整備する
eラーニングは「導入して終わり」ではなく、「運用して育てる」ものです。継続的な改善と工夫によって、組織全体の学習文化を育てることができます。
(2)教育内容を毎年見直す必要性
ISMSを運用する企業にとって、教育内容の定期的な更新は不可欠です。ISMSの審査では「教育内容が最新かどうか」が厳しくチェックされるため、古い情報のままでは不適合と判断されるリスクがあります。
また、サイバー攻撃の手口は日々進化しており、SNSの使い方やクラウドサービスの利用方法など、従業員が日常的に接する技術や環境も変化しています。こうした変化に対応するためには、教育コンテンツを少なくとも年1回は見直し、最新の脅威や法改正、社内ルールの変更を反映させる必要があります。
【教育内容の見直しの必要性とポイント】
| 項目 | 内容・理由 |
| ISMS審査対応 | ・教育内容が最新であるかが審査項目 ・更新されていないと不適合リスクが高まる |
| サイバー攻撃の進化 | ・攻撃手法が日々高度化・巧妙化 ・古い事例では実効性が低下する可能性あり |
| 社会・技術の変化 | ・SNSの新しい使い方、クラウド利用、BYODなどの普及 ・従業員の行動に合わせた教育が必要 |
| 教育効果の維持 | ・最新事例を盛り込むことで関心を引きやすい ・従業員の意識を高く保つことができる |
| 更新頻度の目安 | ・最低でも年1回の見直しが推奨 ・法改正やインシデント発生時は随時更新が望ましい |
教育は「一度やれば終わり」ではなく、「継続的に育てるもの」です。最新の情報を反映した教育を行うことで、従業員の意識を高く保ち、組織全体のセキュリティレベルを維持・向上させることができます。
(3)受講管理・運用体制の整え方
eラーニングは導入するだけでなく、継続的に運用し、効果的に管理することが大切です。特にISMSなどの認証制度に対応する場合、教育の実施状況を明確に記録・管理し、審査時に即座に提示できる体制が求められます。
そのためには、受講ルールの明確化、進捗状況の定期確認、社内担当者の配置など、運用体制を整える必要があります。これにより、受講漏れの防止や教育の質の維持、審査対応の迅速化が可能になります。
【受講管理・運用体制の整備ポイント一覧】
| 項目 | 内容・具体策 |
| 受講ルールの明確化 | ・受講期限や達成基準を設定 ・従業員に周知徹底し、教育の重要性を共有 |
| 進捗状況の確認と対応 | ・システムで定期的に進捗を確認 ・未受講者には個別にリマインド通知を送付 |
| 社内担当者の配置 | ・問い合わせ対応やシステム管理を担う担当者を明確化 ・運用の属人化を防ぎ、スムーズな対応を実現 |
| 履歴・証跡の管理 | ・修了証や受講履歴をファイルで保存 ・ISMS審査時に即提示できるよう、整理・保管しておく |
このような体制を整えることで、教育の実施状況を可視化し、組織全体のセキュリティ意識を高めるとともに、外部審査にも対応できる強固な教育基盤を構築できます。
7.まとめ
情報セキュリティ教育は、ISMSを運用する上で欠かせない継続的な取り組みです。全社員を対象に、最新の脅威や法改正に対応した教育を定期的に実施することで、組織の情報資産を守る力が高まります。
eラーニングは、働き方が多様化する現代において、効率的かつ効果的に教育を行うための最適な手段です。受講履歴の管理や理解度の測定が可能で、ISMS認証の審査エビデンスとしても活用できます。
まずは、本コラムで紹介した無料サービスから始めてみるのも一つの手です。そして、より本格的な運用を目指す際は、自社の予算やニーズに合った有料サービスを比較検討し、ISMS認証取得に向けた最初の一歩を踏み出してください。
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