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ISO9001におけるプロセスの妥当性確認が品質の要である理由

2025年11月5日

ISO9001におけるプロセスの妥当性確認が品質の要である理由

「ISO9001におけるプロセスの妥当性確認とは何?どんなものが当てはまるの?」

「ISO9001におけるプロセスの妥当性確認と検証の違いは?」

「ISO9001におけるプロセスの妥当性確認」と一概に言われても、なかなか意味や役割を説明できない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、プロセスの妥当性確認こそが、私たちが日々安心して使っている製品の「見えない品質」を保証し、企業の信頼を守るための、大切な仕組みなのです。

なぜなら、プロセスの妥当性確認とは、顧客が求めている製品が実現できているかの最終チェックとも言われているからです。

この記事では、ISO9001におけるプロセスの妥当性確認の意味や役割、検証との違いやどういった工程で使われるのかなどをご紹介します。

読み終えていただければ、なぜプロセスの妥当性確認が必要なのか、そしてそれが企業にとってどれだけ大切なものかがわかるかと思います。

1.ISO9001におけるプロセスの妥当性確認とは計画通りの結果を確実に出せることを証明する工程

結論からいうと、ISO9001においてプロセスの妥当性確認がきちんとできていないと、顧客の要望に沿った製品が作られているのか、証明できていないことになります。

顧客の要望に沿った製品を作るためにも、「きちんと作ったこと」の証明を行う必要があります。

例えば、顧客の手に依頼した製品が届いても、思っていたものと違っていたり、製品に不具合が発生していては、顧客の満足には繋がりません。

顧客に満足してもらうためには、きちんとした手順を踏んだ仕様書や手順書で、顧客が求めている製品を作る必要があるのです。

(1)ISO9000のプロセスの妥当性確認の定義とは

ISO9000は、国際標準化機構(ISO)が決めた、品質マネジメントシステムに関する基本的な考えと用語を解説する参考規格文書のことをいいます。

その参考規格文書であるISO9000において、プロセスの妥当性確認は次のように定義されています。

3.8.13 プロセスの妥当性確認(validation)

客観的証拠(3.8.3)を提示することによって、特定の意図された用途又は適用に関する要求事項(3.6.4)が満たされていることを確認すること。

引用元:ISO9000(JIS Q9000:2015)

ISO9001におけるプロセスの妥当性確認の対象となる、特定の意図された用途などは、顧客が本来要求している用途や使い勝手などの、仕様書や手順書には現れにくいことも含まれます。

簡単にいうと、顧客が「こんな製品が欲しい」と思ったことが実現できているかを確認するのがISO9001におけるプロセスの妥当性確認と言えます。

(2)ISO9001におけるプロセスの妥当性確認は重要なステップ

ISO9001におけるプロセスの妥当性確認は、製造条件が適切であり、それが一貫して製品の品質基準を満たしていることを証明する重要なプロセスです。

妥当性確認では、製品の製造工程が適正であるかを評価し、工程に潜むリスクの特定とその対策を講じた上で、試作品を製造し、理想通りの製品が得られるかを検証します。

その後、試作した製品の製造工程から得られるデータを基に、組織が求める品質基準を満たした製品が適切に生産されていることを確認します。製造が適切であると判断された場合は、その妥当性確認の結果を文書化することが求められます。

特に、安全性や性能に直接影響を与える製品の場合、この妥当性確認のプロセスは、製品が規制要件や顧客の期待を満たすことを保証するために極めて重要な役割を果たします。

2.なぜ特殊工程で妥当性確認が必要なのか?ISO9001の視点から解説

製品の製造を行うにあたり、特殊工程が発生する場合があります。

「7.5.2 製造およびサービス提供に関するプロセス」におけるISO9001のプロセス妥当性確認については、以下のように記載されています。

製造の結果がその後に検査できない工程、または引渡し後にしか不具合がわからない工程(特殊工程)については、製造部担当者がプロセスの妥当性確認を行う。プロセスの妥当性確認により、これらの工程から計画どおりの結果が得られることを実証する。製造部担当者は、特殊工程を以下の通り管理する。

(1)特殊工程の適切性・妥当性・有効性を判定するための基準、および承認するための基準を定める。

(2)承認された設備の使用、および資格認定された作業者による作業を行う。

(3)「QC工程表」「作業手順書」に定められた方法、手順を適用する。

(4)作業者、作業日、使用設備、作業方法、作業条件などを「特殊工程記録」に記録する。

(5)また時間の経過とともに必要と判断した場合は、プロセスの妥当性の再確認を行い、

手順を見直す。

引用元:ISO9001 7.5.2製造に関するプロセスのプロセスの妥当性確認

したがって、先ほど述べたISO9001におけるプロセスの妥当性確認は、特殊工程において最も重要な要素となります。

(1)特殊工程にプロセスの妥当性確認が必要な理由

ISO9001におけるプロセスの妥当性確認の必要性を深く理解するためには、「特殊工程」という概念を知ることが不可欠です。

ISO9001においてプロセスの妥当性確認が必要なのは、製品の完成後に品質の良し悪しを判断することが非常に難しい、あるいは不可能である「特殊工程」が存在する為です。

 一般的な製品であれば、完成後に検査や測定を行うことで、設計図通りに作られているか、求められる品質を満たしているかを検証できます。

しかし、特殊工程では、完成品を壊したり、特殊な装置を使ったりしない限り、その工程が適切に行われたかどうかが判断できません。

もし、問題のある製品が市場に出てしまえば、企業に多大な影響を与え、大きな問題に発展し、企業の信頼を損ねてしまいます。

したがって、特殊工程が存在する企業では、プロセスの妥当性確認が必要不可欠となるのです。

(2)特殊工程の代表例を紹介

特殊工程の代表例として、以下のようなものがあります。

  • 溶接
  • 塗装
  • 表面処理
  • 接着
  • 熱処理

これらの特殊工程では、最終的な検査だけでは品質の保証ができないため、工程そのものが常に正しい結果を出せるように、プロセスの妥当性確認を通じて能力を保証する必要があるのです。

3.ISO9001における「検証」と「プロセスの妥当性確認」の違い

ISO9001において、プロセスの妥当性確認と混在されやすいのが「検証」です。

しかし、検証とプロセスの妥当性確認は似て非なるものです。

その違いを理解していれば、作業工程でより確実な評価をすることができます。

それでは、どのような違いがあるのか見ていきましょう。

(1)混在しやすい「検証」と「プロセスの妥当性確認」

ISO9000では検証とプロセスの妥当性確認は次のように定義されています。

3.8.12 検証(verification)

客観的証拠(3.8.3)を提示することによって,規定要求事項(3.6.4)が満たされていることを確認すること。

3.8.13 プロセスの妥当性確認(validation)

客観的証拠(3.8.3)を提示することによって,特定の意図された用途又は適用に関する要求事項(3.6.4)が満たされていることを確認すること。

引用元:ISO9000(JIS Q9000:2015)

上記からわかる通り、検証とは、規程の要求事項が満たされているかを確認する活動で、プロセスの妥当性確認は、意図した用途についての要求事項が満たされているかを確認する活動を指します。

簡単に説明すると、以下のような内容になります。

  • 検証:「計画通りに作れたか?」を確認すること。
  • プロセスの妥当性確認:「顧客の求める目的を達成できるか?」を確認すること。

このように、検証とプロセスの妥当性の違いをきちんと理解しておきましょう。

(2)「検証」と「プロセスの妥当性確認」2つの確認活動

先ほど述べたように、検証もプロセスの妥当性確認も、製品についての確認や評価をすることは同じですが、明らかな違いがあります。

それは、評価をする目的とタイミングです。

①検証を行う目的とタイミング

  • 目的: 製品が設計図や仕様書通りのものかを確認。
  • タイミング: 製品完成後、または製造の途中で行う。

②プロセスの妥当性確認を行う目的とタイミング

  • 目的: 製品がお客様の期待通りの性能や目的を達成できるかを確認。特に、完成後に品質の良し悪しが分かりにくい「特殊工程」で行われることが多い。
  • タイミング: 製造工程の開始前や、プロセスの設計段階で実施し、継続的に確認。製品完成後にも行う。

ISO9001では、製品の品質を保証するために行っている「検証」と「プロセスの妥当性確認」ですが、似ているようで異なる活動となります。

この違いを理解することが、品質管理の要となります。

4.まとめ

本コラムでは、ISO9001におけるプロセスの妥当性とは何か、どのような工程で使われるのか、そして、ISO9001を理解するうえで混在しやすい「検証」と「プロセスの妥当性」の違いについて解説しました。

要点は、以下の通りです。

まず、プロセスの妥当性確認がきちんとできていないと、顧客の要望に沿った製品が作られているのか、証明できていないことになります。

証明するには、下記のステップを踏み、製品の品質が守られていることをきちんと証拠として残す必要があります。

  1. 製造工程において不備はないか
  2. 起こりうるリスクの特定と対策
  3. 実際の試作で不備はないか
  4. 試作によるデータ収集と分析
  5. すべてを文書化する

また、「特殊工程」があるからこそ、ISO9001においてプロセスの妥当性確認が不可欠であることも理解できたのではないでしょうか。

よって、プロセスの妥当性確認は、目に見えない、あるいは完成後に確認が難しい「特殊工程」の品質を保証するための、非常に重要な仕組みとなっています。

そして、ISO9001において混在しやすい「検証」と「プロセスの妥当性」について、「検証」が「計画通りに作れたか」を確認するのに対し、プロセスの妥当性確認は「顧客の期待する目的を果たせるか」を確認する、という点で違いがあるということが理解できたと思います。

本コラムを通じて、ISO9001における「プロセスの妥当性確認」が、私たちの身の回りの製品の「見えない品質」を支える大切な役割を担っていることを理解していただけたら幸いです。

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