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【具体例付き】10分でわかるISO9001マネジメントレビューの基本と実施ポイント

2025年10月16日

【具体例付き】10分でわかるISO9001マネジメントレビューの基本と実施ポイント

ISO9001のマネジメントレビューは、定期的に経営陣がQMSを見直し、有効性評価・改善を行うプロセスです。
①定期的に実施できているか②適切なインプットとアウトプットができているか③アウトプットに対してしっかり行動ができているか、がポイントとなります。

目次

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ISO9001では、規格要求事項としてマネジメントレビューの実施が求められています。

これは単なる会議ではなく、組織のQMS(品質マネジメントシステム)を継続的に改善するために行います。

トップマネジメントがQMSの有効性を確認し、改善の方向性を決定することで、顧客満足の向上やリスク管理、経営資源の最適化につながるからです。

実際にISO9001の規格要求事項では、マネジメントレビューの「インプット(顧客満足度、監査結果など)」と「アウトプット(改善の機会、資源の必要性など)」が明確に定められており、審査でも必ず確認されます。

本記事では、ISO9001におけるマネジメントレビューの目的やメリット、インプット・アウトプットの具体例、審査員が見るポイントまでを詳しく解説します。

1.ISO9001のマネジメントレビューとは

ISO9001のマネジメントレビューとは、トップマネジメント(経営陣)が組織の品質マネジメントシステム(QMS)を定期的に確認し、その有効性を評価するとともに、必要に応じて改善を行うプロセスです。

単なる会議や報告の場ではなく、これまでの活動を振り返り、課題を整理し、改善策を検討して経営管理の仕組みをより良くしていくための重要な取り組みといえます。

マネジメントレビューは、ISO9001をはじめとする多くのマネジメントシステム規格で必須とされており、組織が継続的に成長・改善していくために欠かせない要素です。

(1)マネジメントレビューの目的は継続的改善を推進すること

マネジメントレビューの目的は、QMSを「継続的に改善」していくことにあります。

具体的には以下のような観点で実施されます。

  • 組織の仕組みやルールが、現状の業務環境や市場の変化に適しているかを確認する
  • 顧客の要求や期待に応え、顧客満足度の向上につながっているかを評価する
  • 改善の機会を見つけ出し、次のアクションに活かす

このプロセスを通じて、組織は品質の向上を実現し、変化する市場環境や顧客ニーズに柔軟に対応できる体制を整えることができます。

また、マネジメントレビューを単なる「形式的な会議」にしないためには、「QMSを常に改善し続ける」という本来の目的を意識することが何より大切です。

(2)マネジメントレビューの3つのメリット

ISO9001マネジメントレビューのメリットとして、以下の3点が挙げられます。

①継続的な改善の実現

マネジメントレビューの最大の特徴は、QMS(品質マネジメントシステム)の有効性を定期的に振り返り、改善の機会を見つけ出せる点にあります。

例えば、内部監査や顧客からのクレーム、日常業務で発生した不具合などのデータを基に「どの部分に改善が必要か」を分析し、具体的なアクションにつなげます。これを繰り返すことで、組織は常に仕組みを進化させることができます。

市場や顧客のニーズは年々変化しており、それに対応できなければ競争力を失ってしまいます。マネジメントレビューを継続的に実施することは、品質を高めるだけでなく、変化に強い柔軟な組織づくりにも直結します。

②経営陣の関与とコミットメント強化

ISO9001がマネジメントレビューを重視している理由のひとつは、経営層の積極的な関与を確保するためです。

レビューにはトップマネジメントが参加し、組織に必要なリソースの投入、方針の方向性、経営課題への対応などを直接検討します。

この場では、顧客満足度調査の結果、内部監査の指摘事項、業務プロセスの実績データなどが共有され、経営陣が戦略的な判断を行うための根拠となります。

結果として、現場だけに任せるのではなく、経営陣が組織全体の品質向上に責任を持つ体制が作られます。

経営陣の明確なコミットメントが示されることで、従業員のモチベーション向上や組織文化の醸成にもつながり、組織全体の一体感が生まれる効果も期待できます。

③リスク管理とビジネス目標の達成

マネジメントレビューは、組織に潜在するリスクを把握し、チャンスを活かす場でもあります。

外部環境の変化(法令改正、社会的要請、国際情勢など)や内部環境の変化(人材不足、工程上の不具合など)をレビューの場で共有することで、将来的に発生し得るリスクに先手を打つことが可能になります。

さらに、レビューでは単にリスクを洗い出すだけでなく、ビジネス目標の達成状況を確認し、次のステップに必要な戦略やリソース配分を検討します。

このように、マネジメントレビューは「品質向上の場」であると同時に、リスクマネジメントと経営計画を結びつける重要なプロセスでもあるのです。

ISO9001認証の維持においてもマネジメントレビューの実施は必須であり、第三者機関による審査を通じて自社の仕組みが客観的に評価されることで、QMSを高い水準で維持し続けることができます。

2.マネジメントレビューのインプット:トップマネジメントに報告する内容

マネジメントレビューのインプットとは、トップマネジメントがQMSの現状を正確に把握し、適切な経営判断を行うための報告内容を指します。

規格要求事項の9.3.2項では、マネジメントレビューを計画し実施する際に考慮すべきインプット事項が具体的に定められています。

規格上はa)からf)までの6つの主要な項目があり、c)の中にさらに7つのサブ項目が含まれています。

9.3.2 マネジメントレビューへのインプット

マネジメントレビューは,次の事項を考慮して計画し,実施しなければならない。

a) 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況

b) 品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化

c) 次に示す傾向を含めた,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報

 1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック

 2) 品質目標が満たされている程度

 3) プロセスのパフォーマンス,並びに製品及びサービスの適合

 4) 不適合及び是正処置

 5) 監視及び測定の結果

 6) 監査結果

 7) 外部提供者のパフォーマンス

d) 資源の妥当性

e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1 参照)

f) 改善の機会

引用:JISQ9001:2015(ISO9001:2015)

a) 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況

これは、前回のマネジメントレビューで決定されたアウトプット(改善策や変更点)に対して、実際にどのような行動が取られ、その結果どうなったのかを報告するものです。

b) 品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化

QMSの運用に影響を与える、外部(顧客要求、市場動向、法令改正、競合他社の動向など)および内部(組織構造や業務内容の変更など)の課題の変化や、新たな課題の発生について報告します。

c) 次に示す傾向を含めた,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報

1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック

顧客や関連する利害関係者からの意見、要望、苦情、ヒヤリハットなどの情報、および顧客満足度アンケートの結果などが含まれます。

2) 品質目標が満たされている程度

設定された品質目標の進捗状況や達成度、およびそれに関する課題を具体的な数値や事例で報告します。

3) プロセスのパフォーマンス,並びに製品及びサービスの適合

製造工程や業務プロセスが計画通りに運用されているか、製品やサービスが基準に適合しているかという品質状況の評価について報告します。

4) 監視及び測定の結果

品質に関して監視しているものがあれば、それらの結果を報告します。

5) 監査結果

内部監査や外部(顧客)監査の結果について報告します。

6) 外部提供者のパフォーマンス

仕入先などの外部提供者が期待に応えているか、その監視状況の結果(納期遵守率、受入検査合格率など)を報告します

d) 資源の妥当性

ヒト、モノ、カネの3つの側面において、資源が適切に利用されているか、不足がないか、現状の業務に対して十分かどうかを評価し報告します。

e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1 参照)

特定されたリスクと機会への取り組みが効果的に実施されているかどうかを評価し、継続的な改善に繋がるかを報告します。

f) 改善の機会

品質目標からのアウトプットや各プロセスで立案された改善点、従業員からの改善提案など、業務改善の余地や新たな取り組みの必要性について報告します。

3.マネジメントレビューのアウトプット:トップマネジメントからの決定・指示

マネジメントレビューのアウトプットにて、組織が品質向上や顧客満足をどのように目指すか、トップマネジメントが指示を出します。これにより、会社全体で品質改善に向けた取り組みが進められます。

9.3.3 マネジメントレビューからのアウトプット

マネジメントレビューからのアウトプットには,次の事項に関する決定及び処置を含めなければならな

い。

a) 改善の機会

b) 品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性

c) 資源の必要性

組織は,マネジメントレビューの結果の証拠として,文書化した情報を保持しなければならない。

引用:JISQ9001:2015(ISO9001:2015)

a) 改善の機会

品質目標の達成状況やその他のパフォーマンス状況から、QMSに関して改善すべきことはないか検討します。

b)品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性

内部・外部の課題の変化等から、QMSに変更が必要かどうかを検討します。

c) 資源の必要性

ヒト・モノ・カネの3つの内容について、過不足がないかを評価します。

4.マネジメントレビュー議事録の具体的な記載例

【インプット】

インプット項目内容(報告・検討事項)
a) 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況■改善の機会

前回決定したブランド認知度向上のため、業界専門誌に記事を掲載し、展示会への参加を増やしました。

販売代理店の製品理解を深めるため、説明会を継続して実施中です。現在、新規代理店2社と交渉しています。

■資源の必要性

前回決定した営業担当者2名の採用を完了し、現在研修を実施中です。

b) 品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化■外部の課題

・市場の変化: 顧客のニーズが多様化しており、既存の製品ラインナップだけでは対応が難しくなっている。

・コストの上昇: 主要な原材料の仕入れ価格が不安定で、製造コストが上昇傾向にある。

・法規制の変更: 新しい環境規制が導入され、製品の仕様を見直す必要がある。

■内部の課題

・人材の流動性: 若手従業員の離職率が前年より増加しており、技術継承が課題となっている。

・業務効率化: 部門間の情報連携が不足し、プロジェクトの進行に遅れが生じることがある。

・従業員のスキルアップ: 新しい技術やツールの導入に対し、従業員の知識習得が追いついていない。

■気候変動に関する課題

・事業への影響: 夏季の気温上昇により、工場の空調コストが増加している。

・サプライチェーン: 主要な部品供給元が集中豪雨による操業停止リスクを抱えている。

c) 次に示す傾向を含めた,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報

 1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック

・「売上管理表」にて管理を実施しており、大きなクレームもないため有効性はあると判断する。

・お客様への製品カスタム要望に応えているため、知名度が向上している。

 2) 品質目標が満たされている程度社外不良クレーム0件を目標としていたが、5件クレームが発生してしまった。

原因としては従業員の慣れによるヒューマンエラー。

従業員への教育の強化や作業工程の見直しで対処した。

 3) プロセスのパフォーマンス,並びに製品及びサービスの適合継続的な受注があるため、顧客満足度は高いと考える。
 4) 不適合及び是正処置社外クレームが5件発生したが、是正処置については完了している。
 5) 監視及び測定の結果「目標進捗管理表」にて社外クレームの監視を行っている。

社外クレーム0件を目標にしていたが、達成できなかった。

売上については増収増益で着地した。

 6) 監査結果■内部監査

推奨事項2件

品質マニュアル7.2項に伴い「予実管理表」を確認いたしました。

作成日や更新日の記載がないため、進捗を追えるように、作成日や更新日の記載をしてみてはいかがでしょうか。

→「予実管理表」に作成日と更新日の記載を行った

・マニュアルには「資格保有者一覧」にて従業員の力量を管理するとの記載があるが、

現状は「社員資格一覧」にて従業員の力量を管理しているとの事でした。

実態に合わせ、マニュアルの修正をお願いいたします。

→実態に合わせてマニュアルの修正を行った。

■ISO審査(外部)

教育訓練が行われていますが、更に品質マニュアル、文書管理台帳等との整合性を確認し、適切な運用を観察事項とします。

■顧客

該当なし。

監査ではないが、見学程度の来訪や化学物質に関するアンケート調査などはあった。

 7) 外部提供者のパフォーマンス「外部業者・委託一覧」にて状況を把握しており、納期遅れも発生しておらず特に問題はなし。
d) 資源の妥当性▼例

(ヒト)

・メンバー内で状況の情報共有が良く出来ており、コミュニケーションも充実している。

・繁忙期(例:年度末、新製品開発フェーズ)には、残業時間が月平均20時間を超え、作業員の疲労が増加している。

(モノ)

・設備の性能は現状十分。

(カネ)

・売上に関しては問題なく伸びている。

e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1 参照)(リスク)

・売上計画・予算の未達成

・人員不足による業務負担の増加

(機会)

・働き方改革の推進およびインセンティブ制度の導入により、優秀な人材の確保

・採用体制の強化

・営業体制の見直し強化

f) 改善の機会・人材の確保。

・他社との情報共有を行い、適正なリサイクルを行っていく。

・人材の確保を行い、得意先へのフォロー体制を整える。

 

【アウトプット】

アウトプット事項
■改善の機会

・グラスウールの高騰が予想されるため販売価格の見直しと顧客への交渉を行うこと。

・クレームの件数が増えてきているため、従業員の教育を行うこと。

アウトプット事項
■品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性

・内部監査の指摘により、品質マニュアルの改訂を行った。

アウトプット事項
■資源の必要性

〇ヒト

1名の採用を行うこと。

中間管理職雇用を検討すること。

5.ISO9001マネジメントレビューの流れ

マネジメントレビューの具体的な流れは、以下のステップで進められます。

①参加者・日程を決める

参加者を決め(経営陣(トップマネジメント)、品質管理担当者など)会議日程を調整しましょう

②事前準備

インプット(過去のレビュー結果、顧客満足度、内部監査結果など)とアジェンダを整理します。

参加者に事前に配布できるとより当日スムーズに進められるでしょう。

③開催当日

会議で各インプットを検討し、アウトプット(改善の機会、QMS変更の必要性、資源の必要性)を決定します。

④議事録にまとめる(文書化)

マネジメントレビューの結果を議事録にまとめ、関連部門に共有しましょう。

6.マネジメントレビューをする上での注意点

(1)トップマネジメントが参加すること

マネジメントレビューには、組織のリーダーや経営陣が参加することが重要です。

リーダーが参加することで、意思決定や支持が、組織全体の品質マネジメントシステムの有効性や継続的な改善に大きな影響を与えることができます。

(2)インプット情報を整理すること

トップマネジメントが客観的にQMSの効果を評価できるよう、インプットを整理しましょう。

前述のとおり、インプット事項はa) ~ g)まで7つの項目がありますが、7つの項目全てに該当する活動を実施してインプットしなければならないわけではありません。

インプット事項に該当する活動がなければ、「今回はインプット事項はなし」ということにしても問題ないのでQMSの活動の振り返りの参考材料として活用するとよいでしょう。

(3)定期的に実施すること

マネジメントレビューは定期的に実施しましょう。一般的には年に1度、もしくは半年に1度実施されることが推奨されます。組織の規模や業界の違いや、事業領域の変化等があれば、より頻繁に開催することが求められる場合もあります。

7.ISO9001マネジメントレビューで審査員が見るポイント

審査員が見るポイントは以下の3つです。

(1)定期的なマネジメントレビューの実施と記録があるか

マネジメントレビューが定期的に実施されているか、またその議事録や報告書が適切に保存されているかどうかを確認します。

(2)適切なインプットとアウトプットができているか

マネジメントレビューで取り扱われるべきインプット項目(前回のレビュー結果、品質目標、監査結果等)とアウトプット項目(改善の機会、QMS変更の必要性、資源の必要性)が適切に評価されているかどうかを確認します。

(3)アウトプット事項の実施状況について

マネジメントレビューでのアウトプットが適切に活用され、改善のために行動できているかどうかを確認します。

8.まとめ

ISO9001では、規格要求事項としてマネジメントレビューの実施が求められています。

マネジメントレビューの目的は、QMSを継続的に改善することです。

具体的には以下のような観点で実施されます。

  • 組織の仕組みやルールが、現状の業務環境や市場の変化に適しているかを確認する
  • 顧客の要求や期待に応え、顧客満足度の向上につながっているかを評価する
  • 改善の機会を見つけ出し、次のアクションに活かす

ISO9001マネジメントレビューのメリットとして、以下の3点が挙げられます。

  • 継続的な改善の実現
  • 経営陣の関与とコミットメント強化
  • リスク管理とビジネス目標の達成

ISO9001の規格要求事項ではマネジメントレビューを実施するために必要なインプットと、マネジメントレビュー実施時のアウトプットが求められます。

注意点は以下です。

  • トップマネジメントが参加すること
  • インプット情報を整理すること
  • 定期的に実施すること

また審査員が見るポイントは以下です。

  • 定期的なマネジメントレビューの実施と記録があるか
  • 適切なインプットとアウトプットができているか
  • アウトプット事項の実施状況について

これらのポイントと具体例を参考にマネジメントレビューを実施しましょう。

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