2025年8月29日

目次
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- 1. 個人情報保護方針とは、企業が示す「情報保護への基本姿勢」
- 1-1 個人情報保護方針の定義と目的
- 1-2 「個人情報保護マネジメントシステム(PMS)」との関連性
- 1-3 個人情報保護方針に記載すべき主な項目
- 2. プライバシーポリシーとは、ユーザーへの「情報取り扱いに関する具体的な約束」
- 2-1 プライバシーポリシーの定義と目的
- 2-2 個人情報保護法との関連性
- 2-3 プライバシーポリシーに記載すべき主な項目
- 3. Pマーク(プライバシーマーク)と個人情報保護方針
- 3-1 Pマーク制度の概要と取得メリット
- 3-2 Pマーク取得における個人情報保護方針の役割
- 3-3 Pマーク取得事業者における情報開示のポイント
- 4. 個人情報保護方針とプライバシーポリシーの決定的な違い
- 4-1 対象者と目的の比較
- 4-2 使い分けと連携の重要性
- 5. なぜ必要?個人情報保護方針とプライバシーポリシーを定める重要性
- 5-1 企業の社会的信頼性の向上
- 5-2 個人情報保護法遵守のリスク軽減
- 5-3 ユーザーへの安心感提供とエンゲージメント強化
- 6. 企業における使い分け事例
- 6-1 Pマーク取得企業A社(ECサイト運営)の場合
- 6-2 一般企業B社(BtoB SaaS提供)の場合
- 6-3 誤用例:個人情報保護方針とプライバシーポリシーを混同しているケース
- 7. 作成・見直し時のチェックポイント
- 7-1 対象読者を意識した表現のトーン
- 7-2 網羅性と具体性のバランス
- 7-3 定期的な更新の必要性
- 8. 違反した場合のリスクと実務上の対策
- 8-1 信用失墜・ブランドイメージの毀損
- 8-2 法的リスク(行政指導・罰則・損害賠償)
- 8-3 Pマーク審査での指摘例とその回避策
- 9. まとめ
企業活動において、顧客や取引先の個人情報を適切に取り扱うことは、もはや必須の要件です。
しかし、「個人情報保護方針」と「プライバシーポリシー」という言葉を耳にすると、「同じようなものでは?」と混乱してしまう方も少なくないのではないでしょうか。
実はこの二つ、似て非なるものであり、それぞれの役割と目的を正しく理解することが、企業の信頼性向上はもちろん、Pマーク(プライバシーマーク)の適切な運用にも直結します。
このコラムでは、個人情報保護方針とプライバシーポリシーの明確な違いを解説し、具体的な記載内容や作成・見直しのポイント、さらにはPマーク取得企業での実践的な活用事例まで掘り下げていきます。
本コラムを最後までお読みいただくことで、個人情報保護のプロフェッショナルとして、Pマークの運用をさらに確実なものにするための具体的な知識が身につきます。
適切な運用を実現し、組織の信頼性を高める第一歩を踏み出してください。
1. 個人情報保護方針とは、企業が示す「情報保護への基本姿勢」

「個人情報保護方針」は、企業が個人情報をどのように取り扱うか、その基本的な考え方や理念を示すものです。会社の経営層が、個人情報保護への強いコミットメントを社内外に表明する、いわば「旗印」のようなものです。
1-1 個人情報保護方針の定義と目的
個人情報保護方針とは、企業が個人情報の保護を事業活動における重要課題と位置づけ、そのための行動規範や指針を定めたものです。その主な目的は、個人情報を取り扱うすべての役員・従業員が遵守すべき行動基準を明確にし、個人情報の適切な保護を組織全体で推進することにあります。
また、社外に対しても、企業が個人情報保護に対して真摯に取り組んでいる姿勢を示すことで、信頼を獲得する役割も担っています。
1-2 「個人情報保護マネジメントシステム(PMS)」との関連性
個人情報保護方針は、「個人情報保護マネジメントシステム(PMS)」の最も根幹に位置づけられる文書です。
PMSとは、個人情報を適切に管理するための組織体制、計画、実施、運用、監視、見直しといった一連の仕組みのことを指します。個人情報保護方針は、このPMSを構築・運用する上での最高規範となり、「私たちはこのように個人情報を保護していきます」という原則を定めたものです。PMSの具体的な手順やルールは、個人情報保護方針に沿って策定されます。
1-3 個人情報保護方針に記載すべき主な項目
一般的に、個人情報保護方針には以下の項目を記載することが求められます。
これらの項目を通じて、企業が個人情報保護に本気で取り組んでいる姿勢が伝わるように作成しましょう。
| 【個人情報保護方針:項目】 | |
| 策定の目的と適用範囲 | なぜこの方針を定めるのか、誰に(全従業員など)、どの個人情報に適用されるのかを明記する。 |
| 個人情報保護の原則 | 取得、利用、提供、保管、廃棄など、個人情報のライフサイクル全体における基本的な考え方(例:目的外利用の禁止、適正な取得など)。 |
| 法令遵守 | 個人情報保護法をはじめとする関連法令やガイドラインを遵守することを宣言する。 |
| 安全管理措置 | 個人情報への不正アクセス、紛失、破壊、改ざん、漏洩などのリスクに対する安全対策を講じることを明示する。具体的な対策(例:アクセス制限、暗号化)に言及することもある。 |
| 苦情・相談への対応 | 個人情報に関する苦情や相談を受け付ける窓口とその対応体制について記載する。 |
| 継続的改善 | 個人情報保護体制を定期的に見直し、改善していくことを表明する。 |
| 制定日・改定日、会社名、代表者名 | 方針がいつ制定され、いつ改定されたか、そしてどこの会社の方針であるかを明確にする。 |
2. プライバシーポリシーとは、ユーザーへの「情報取り扱いに関する具体的な約束」
一方、「プライバシーポリシー」は、企業がユーザーからどのような個人情報を取得し、どのように利用し、誰に提供するのかといった、具体的な取り扱い内容を明確に説明するものです。ユーザーが安心してサービスを利用できるように、透明性の高い情報開示を行うための文書と言えます。Webサイトのフッターなどに設置されていることが多いです。
2-1 プライバシーポリシーの定義と目的
プライバシーポリシーとは、企業が自社のサービスやウェブサイトを通じて取得する個人情報について、その取得方法、利用目的、管理方法、第三者提供の有無、開示・訂正・削除の請求方法などをユーザーに対して具体的に説明する文書です。
その主な目的は、個人情報保護法に基づき、情報主体であるユーザーに対して、自身の個人情報がどのように取り扱われるかを明確に伝え、同意を得ることにあります。これにより、ユーザーは安心して個人情報を提供でき、企業は透明性の高い事業活動を行うことができます。
2-2 個人情報保護法との関連性
プライバシーポリシーは、日本の個人情報保護法において、個人情報取扱事業者に課せられた「公表等」義務を果たすための手段です。
個人情報保護法第21条では、個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たって、あらかじめその利用目的をできる限り特定し、それを公表することが義務付けられています。また、第27条では、個人データの第三者提供を行う場合の同意取得や情報公開についても定められています。
プライバシーポリシーは、これらの法律上の要件を満たすために不可欠な文書です。
2-3 プライバシーポリシーに記載すべき主な項目
プライバシーポリシーには、ユーザーが自身の情報について理解を深められるよう、以下の項目を具体的に記載します。
これらの項目を、ユーザーに分かりやすい言葉で、具体的に、かつ網羅的に記載することが、信頼されるプライバシーポリシー作成の鍵となります。
| 【プライバシーポリシー:項目】 | |
| 個人情報の取得 | どのような個人情報(氏名、住所、メールアドレス、電話番号、購買履歴、閲覧履歴など)を、どのような方法(Webフォーム、クッキー、ログ情報、オフラインでの取得など)で取得するのかを明記する。 |
| 個人情報の利用目的 | 取得した個人情報を何のために利用するのかを、できる限り具体的に記載する。例えば、「商品発送のため」「サービス改善のため」「キャンペーン情報の送付のため」など。 【ポイント】漠然とした表現ではなく、具体的であるほどユーザーは安心します。 |
| 個人情報の第三者提供 | 個人情報を第三者に提供する場合、その旨、提供される個人情報の項目、提供の方法、提供先の情報などを明記し、原則としてユーザーの同意を得る旨を記載する。 |
| 個人情報の共同利用 | グループ会社間などで個人情報を共同利用する場合、その旨、共同して利用される個人情報の項目、共同利用する者の範囲、共同利用する者の利用目的、個人情報の管理責任者の氏名または名称を明記する。 |
| 個人情報の安全管理 | 取得した個人情報を保護するための安全管理措置について、概要を記載する。 |
| 個人情報の開示・訂正・ 利用停止等の請求 | ユーザーが自身の個人情報の開示、訂正、利用停止などを求める際の手続き方法、問い合わせ窓口を明記する。 |
| クッキー(Cookie)等の 技術利用 | Webサイトでクッキーやアクセス解析ツールなどを利用する場合、その目的やユーザーが設定を変更できる旨などを記載する。 |
| お問い合わせ先 | プライバシーポリシーに関する問い合わせや、個人情報に関する相談を受け付ける窓口(部署名、連絡先など)を明記する。 |
| 制定日・改定日 | プライバシーポリシーがいつ制定され、いつ改定されたかを示し、情報の透明性を高める。 |
3. Pマーク(プライバシーマーク)と個人情報保護方針
Pマーク(プライバシーマーク)は、個人情報の適切な取り扱いを行っている企業・団体を評価し、その証として付与されるマークです。Pマーク取得を目指す企業にとって、個人情報保護方針は単なる理念ではなく、PMS運用の出発点として非常に重要な位置づけとなります。
3-1 Pマーク制度の概要と取得メリット
Pマーク制度は、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が運営する、JIS Q 15001「個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に基づき、個人情報を適切に管理するための体制や仕組みを整備・運用している事業者を認定する制度です。
Pマークを取得するメリットは多岐にわたります。
- 社会的信頼性の向上: 顧客や取引先に対し、個人情報保護に対する意識が高く、体制が整備されていることを客観的にアピールできます。
- 企業の競争力強化: 個人情報保護への取り組みを重視する企業との取引機会が増えたり、入札の条件になったりする場合があります。
- 従業員の意識向上: Pマーク取得のプロセスを通じて、従業員一人ひとりの個人情報保護に対する意識が高まります。
- 法的リスクの軽減: 個人情報保護法に準拠した体制が構築されるため、情報漏洩などのリスクが低減し、万が一の事態が発生した際にも適切な対応が可能になります。
3-2 Pマーク取得における個人情報保護方針の役割
Pマーク取得の審査では、個人情報保護方針がJIS Q 15001の要求事項に合致しているか、そしてそれが組織全体に浸透し、実行されているかが厳しくチェックされます。
個人情報保護方針は、PMSの最上位文書として、以下の重要な役割を担います。
- PMS構築の指針: 方針に示された個人情報保護への理念に基づき、具体的なルールや手順が策定されます。
- 経営者のコミットメント: 方針に経営者の氏名が明記され、その意思が明確に示されることで、組織全体で個人情報保護に取り組む姿勢が強調されます。
- 従業員への周知徹底: 方針は社内に掲示されたり、教育訓練を通じて従業員に周知されたりすることで、個人情報保護意識の醸成に貢献します。
- 外部への宣言: 企業のWebサイトなどで公開され、顧客や取引先に対して個人情報保護への取り組みをアピールします。
Pマーク取得においては、単に形式的に方針を作成するだけでなく、その内容が実態に即しており、組織全体で実行されていることが何よりも重要です。
3-3 Pマーク取得事業者における情報開示のポイント
Pマーク取得事業者は、個人情報保護法に加え、Pマーク制度が求める情報開示の要件も満たす必要があります。
特に以下の点に留意して情報開示を行いましょう。
- 個人情報保護方針の常時公開: 企業のWebサイトの分かりやすい場所に個人情報保護方針を掲載し、誰でもいつでも閲覧できるようにします。
- 個人情報に関する問い合わせ窓口の明確化: 苦情や相談、開示請求などを受け付ける専用窓口(電話番号、メールアドレス、担当部署など)を明確に記載し、迅速に対応できる体制を整えます。
- 利用目的の明確化: 取得する個人情報の利用目的を、個人情報保護法とPマークの要求事項に従って、具体的に特定し、公表します。特に、直接書面で個人情報を取得する際には、利用目的を明示することが義務付けられています。
- 安全管理措置の概要説明: 個人情報の安全管理のために講じている措置の概要を公表することが推奨されます。具体的にどのような対策(例:入退室管理、アクセスログ管理、暗号化など)を実施しているかを示すことで、より信頼性が高まります。
Pマーク取得企業は、これらの情報開示を徹底することで、高いレベルでの個人情報保護を実現していることを証明し、企業価値を高めることができます。
4. 個人情報保護方針とプライバシーポリシーの決定的な違い
ここまでそれぞれの概要を見てきましたが、ここで両者の決定的な違いを明確にしましょう。
ポイントは「誰に向けて」発信している文書なのか、そして「何を」示しているのか、という点です。
4-1 対象者と目的の比較
| 項目 | 個人情報保護方針 | プライバシーポリシー |
| 主な対象者 | 企業全体、従業員、株主、取引先など (広義のステークホルダー) | サービス利用者、Webサイト訪問者など(個人情報の主体) |
| 主な目的 | 企業全体の個人情報保護への経営姿勢・ 理念の表明 | ユーザーに対する個人情報の具体的な 取り扱い内容の説明と同意形成 |
| 表現のトーン | 理念的、原則的、抽象度が高め | 具体性、透明性、分かりやすさを重視した説明的 |
4-2 使い分けと連携の重要性
これら二つの文書は、それぞれ異なる目的を持つため、適切に「使い分け」ることが重要です。
個人情報保護方針は、企業全体の個人情報保護への覚悟を示す文書として、コーポレートサイトのトップページや会社概要ページなど、企業全体を代表する箇所に掲載します。
一方、プライバシーポリシーは、個別のサービスやWebサイトごとに、そこで取得する個人情報の取り扱いに関する詳細を記載し、サービス利用規約やお問い合わせフォームの近くなど、ユーザーが情報を提供する直前に参照できる場所に設置します。
しかし、単に使い分けるだけでなく、両者が「連携」していることも不可欠です。プライバシーポリシーは、個人情報保護方針で示された理念に基づき、具体的な行動を規定するものです。
例えば、プライバシーポリシーで「取得した個人情報は、法令および個人情報保護方針に従い、適切に管理します」といった一文を挿入することで、両者の連携を明確にできます。
5. なぜ必要?個人情報保護方針とプライバシーポリシーを定める重要性
「法律で決まっているから」というだけでなく、個人情報保護方針とプライバシーポリシーを適切に定めることは、企業にとってもメリットがあります。
5-1 企業の社会的信頼性の向上
企業のブランド価値を高めるためには、個人情報保護方針やプライバシーポリシーを通じて透明性と誠実さをアピールすることが大切です。これにより、顧客や取引先からの信頼を得ることができます。
情報漏洩や不適切な情報利用が日々報じられる中、企業が個人情報保護に真摯に取り組む姿勢を示すことは、CSR(企業の社会的責任)の重要な要素であり、社会的信頼性の向上につながります。
5-2 個人情報保護法遵守のリスク軽減
個人情報保護法は、企業の個人情報取り扱いに対して厳しい規制を設けています。適切な個人情報保護方針とプライバシーポリシーを策定し、それに従って運用することで、法的な義務を果たすことができ、違反による行政指導、罰則、損害賠償請求といったリスクを大幅に軽減できます。特に、利用目的の特定・公表、第三者提供の同意取得などは、プライバシーポリシーなしには適切に実行できません。
5-3 ユーザーへの安心感提供とエンゲージメント強化
プライバシーポリシーを通じて、取得する情報の種類、利用目的、管理方法などを分かりやすく具体的に説明することで、ユーザーに安心感を提供できます。この安心感は、サービスへの信頼を生み出し、ユーザーのエンゲージメント(結びつき)を強化します。結果として、長期的な顧客関係の構築に繋がり、サービスの利用頻度向上や口コミの促進にも寄与します。ユーザーが「この会社なら安心して情報を提供できる」と感じることが、企業の成長に大きく貢献します。
6. 企業における使い分け事例
では、実際に企業は個人情報保護方針とプライバシーポリシーをどのように使い分けているのでしょうか?
Pマーク取得企業と一般企業の事例、さらには誤用例も交えて見ていきましょう。
6-1 Pマーク取得企業A社(ECサイト運営)の場合
【個人情報保護方針】
コーポレートサイトのフッターに「個人情報保護方針」としてリンクを設置。その中で、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の運用、法令遵守、安全管理措置の実施、苦情相談窓口の設置、継続的改善への取り組みなど、企業全体の個人情報保護への経営姿勢を宣言しています。これは、Pマークの要求事項である「個人情報保護方針の策定と公表」を満たすものです。
【プライバシーポリシー】
ECサイトの会員登録ページや商品購入時の同意事項、お問い合わせフォームなど、個人情報を入力する画面の近くに「プライバシーポリシー」としてリンクを設置しています。ここでは、会員情報、購買履歴、閲覧履歴、クレジットカード情報といった具体的な個人情報の種類、それらを「商品の発送」「新商品のレコメンド」「キャンペーン情報の配信」といった具体的な利用目的、決済代行会社や運送会社への第三者提供の有無と内容、ユーザーからの開示・訂正・削除請求への対応方法などを詳細に記述しています。
このA社のように、経営理念と個別のサービスでの具体的な情報取り扱いを明確に分けることで、ユーザーへの説明責任を果たしつつ、企業としての統制も取れています。
6-2 一般企業B社(BtoB SaaS提供)の場合
【個人情報保護方針】
会社の情報セキュリティに関する基本方針をまとめた文書の一部として、イントラネット内で従業員に周知。社外公開はせず、主に社内向けに個人情報保護への姿勢を示すものとして運用しています。ただし、一部の取引先からセキュリティチェックを求められた際には、この方針の抜粋や概要を提示することがあります。
【プライバシーポリシー】
自社SaaSサービスの利用規約と一体化させる形で「個人情報の取り扱いについて」という項目を設け、実質的なプライバシーポリシーとして公開しています。ここでは、顧客企業の担当者情報や、SaaSサービスを通じて顧客企業が入力するデータ(これ自体はB社の個人情報ではないことが多いが、一部個人情報を含む可能性も考慮)の取り扱いに関する詳細なルール(利用目的、アクセス権限、セキュリティ対策、データ保管場所、契約終了時のデータ消去など)を記載しています。
B社のように、必ずしも「個人情報保護方針」という名称で社外公開していなくても、その役割を他の文書で担っているケースもあります。ただし、Pマーク取得を目指す場合は、明確な方針の策定と公開が必須となります。
6-3 誤用例:個人情報保護方針とプライバシーポリシーを混同しているケース
稀に、「個人情報保護方針」と「プライバシーポリシー」の区別が曖昧な企業を見かけます。
【ケース1】
コーポレートサイトのフッターに「個人情報保護方針」というリンクがあるが、中身は取得する個人情報の種類や利用目的、第三者提供の有無など、プライバシーポリシーで記載すべき内容が中心になっている。
問題点: 企業全体の個人情報保護への姿勢やPMSの概要が見えにくく、ユーザーは企業全体の理念を理解しづらい。また、Pマーク取得を目指す際に、方針としての要件を満たせない可能性がある。
【ケース2】
サービスサイトに「プライバシーポリシー」がなく、全ての情報が「個人情報保護方針」にまとめられている。
問題点: サービスごとに取得する情報や利用目的が異なるにも関わらず、一括りにされているため、ユーザーは自分の情報がどう扱われるのか具体的に理解しづらい。特に、複数のサービスを展開している場合、それぞれの特性に応じたポリシーが求められる。
これらの誤用は、企業の透明性や信頼性を損ねるだけでなく、個人情報保護法遵守の観点からもリスクとなり得ます。明確な使い分けと、それぞれの役割に応じた情報提供が重要です。
7. 作成・見直し時のチェックポイント
個人情報保護方針とプライバシーポリシーは、一度作ったら終わりではありません。法令改正や事業内容の変化に応じて、定期的な見直しが不可欠です。
7-1 対象読者を意識した表現のトーン
【個人情報保護方針】
経営層の意思を反映した、毅然とした、しかし分かりやすい言葉遣いを心がけましょう。専門用語は避け、一般のステークホルダーにも意図が伝わるように工夫します。
【プライバシーポリシー】
ユーザーが「自分ごと」として理解できるよう、平易で具体的な言葉で記述します。法律用語を羅列するのではなく、例えば「あなたの氏名は、商品の発送のために利用します」のように、主語と目的を明確にします。子供向けのサービスであれば、さらに分かりやすく噛み砕いた表現にするなどの配慮も必要です。
7-2 網羅性と具体性のバランス
【個人情報保護方針】
企業としての基本的なスタンスを網羅的に記載しつつ、抽象的すぎず、何を重視しているかが伝わるようにします。「法令を遵守します」だけでなく、「個人情報保護法、関連ガイドラインを遵守します」のように具体性を加えるのも良いでしょう。
【プライバシーポリシー】
ユーザーが不安なく情報提供できるよう、具体的な情報の種類、利用目的、提供の有無などを詳細に記述します。しかし、あまりにも専門的すぎたり、膨大な文章になったりすると、ユーザーは読み飛ばしてしまう可能性があります。箇条書きや図表を活用し、視覚的にも理解しやすい工夫が求められます。
7-3 定期的な更新の必要性
少なくとも年に一度は定期的な見直しを行うことを推奨します。また、重要な変更があった場合は、その旨をユーザーに適切に告知することも忘れてはなりません(例:Webサイト上のお知らせ、メールでの通知など)。
- 法令改正への対応: 個人情報保護法は、数年ごとに改正が行われます。法改正のたびに、自社の個人情報保護方針やプライバシーポリシーが最新の法令に対応しているかを確認し、必要に応じて修正します。
- 事業内容・サービス変更への対応: 新しいサービスを開始したり、既存のサービス内容を変更したり、新しい個人情報の取得方法を導入したりした場合は、プライバシーポリシーの見直しが必須です。利用目的や第三者提供の範囲が変わる場合があるため、ユーザーへの説明義務を果たしましょう。
- 内部統制の変化: 組織体制の変更、PMSの運用方法の改善など、内部統制の変化があった場合も、個人情報保護方針や関連文書を見直す必要があります。
8. 違反した場合のリスクと実務上の対策
個人情報保護方針やプライバシーポリシーに違反した場合、企業はさまざまなリスクに直面します。それらを回避し、適切に対応するための実務上の対策を見ていきましょう。
8-1 信用失墜・ブランドイメージの毀損
最も直接的なリスクは、顧客や社会からの信用を失うことです。情報漏洩やプライバシーポリシーに反する情報利用が発覚した場合、企業イメージは大きく損なわれ、顧客離れ、売上減少、採用活動への悪影響など、計り知れない損害が発生します。一度失った信用を取り戻すのは容易ではありません。
8-2 法的リスク(行政指導・罰則・損害賠償)
- 行政指導・罰則: 個人情報保護法に違反した場合、個人情報保護委員会から指導、勧告、命令を受け、最悪の場合、罰金や刑事罰の対象となる可能性があります。特に、利用目的の特定・公表義務違反や、同意を得ない第三者提供などは厳しく監督されます。
- 損害賠償請求: 情報漏洩などにより個人に損害を与えた場合、当該個人から損害賠償請求を受ける可能性があります。集団訴訟に発展すれば、賠償額は莫大になることもあります。
8-3 Pマーク審査での指摘例とその回避策
Pマーク取得企業は、JIS Q 15001に適合しているかを定期的に審査されます。方針やポリシーの不備は、審査で厳しく指摘されるポイントです。
【よくある指摘例と回避策】
- 指摘例①
- 個人情報保護方針が最新の法令に対応していない。
- 回避策①
- 法改正の情報を常にキャッチアップし、少なくとも年に一度は方針の見直しを行い、必要に応じて改定する。改定履歴を明確に記録しておく。
- 指摘例②
- プライバシーポリシーの利用目的が曖昧で、ユーザーに具体的に伝わらない。
- 回避策②
- 「事業活動のため」のような漠然とした表現ではなく、「お問い合わせへの対応のため」「新サービスの開発および改善のため」のように、できる限り具体的に利用目的を特定する。
- 指摘例③
- 個人情報の開示・訂正・利用停止等の請求方法が分かりにくい。
- 回避策③
- 問い合わせ窓口(担当部署名、電話番号、メールアドレスなど)を明確に記載し、請求手続きのフローを分かりやすく説明する。実際に請求があった際に、迅速かつ適切に対応できる体制を整える。
- 指摘例④
- 個人情報の第三者提供について、同意取得のプロセスや情報提供の内容が不明確。
- 回避策④
- 第三者提供を行う場合は、提供先の種類、提供する個人情報の項目、提供方法などを具体的に記載し、ユーザーからの明確な同意(オプトイン)を得るプロセスを設ける。
【実務上の対策】
- 情報セキュリティ教育の徹底: 全従業員に対し、個人情報保護方針やプライバシーポリシーの内容、個人情報保護法に関する教育を定期的に実施し、意識の向上を図ります。
- PMSの継続的改善: 個人情報保護マネジメントシステム(PMS)を形骸化させず、定期的な内部監査や見直しを通じて、常に改善を図ります。
- 緊急時対応計画の策定: 万が一、情報漏洩などのインシデントが発生した場合に備え、被害の拡大防止、原因究明、関係機関への報告、顧客への説明といった一連の対応手順を定めた計画を策定し、訓練を行います。
- 外部専門家との連携: 個人情報保護に関する専門家(弁護士、コンサルタント)と連携し、法改正やトラブル発生時のアドバイスを受けられる体制を構築することも有効です。
9. まとめ
本記事では「個人情報保護方針」と「プライバシーポリシー」について解説しました。
要点を以下にまとめます。
【個人情報保護方針について】
- 個人情報保護方針は、企業が個人情報保護に対する基本的な考え方や理念を示すもので、経営層のコミットメントを表明する「旗印」のような役割を果たします。
- 主な目的は、従業員が遵守すべき行動基準を明確にし、組織全体で個人情報保護を推進すること。また、社外に対して信頼を獲得する役割も担います。
- 個人情報保護方針は、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の根幹を成す文書であり、PMSの構築・運用における最高規範となります。
【プライバシーポリシーについて】
- プライバシーポリシーは、ユーザーに対して個人情報の取得方法、利用目的、管理方法、第三者提供の有無などを具体的に説明する文書です。
- 主な目的は、個人情報保護法に基づき、ユーザーに情報の取り扱い内容を明確に伝え、同意を得ることです。
- プライバシーポリシーは、個人情報保護法の「公表等」義務を果たすための重要な手段であり、ユーザーに安心感を提供し、信頼を構築する役割を果たします。
【両者の違いと使い分け】
- 個人情報保護方針は、企業全体の理念や姿勢を示すもので、主に従業員や取引先など広義のステークホルダーを対象とします。
- プライバシーポリシーは、サービス利用者やWebサイト訪問者を対象に、具体的な情報取り扱い内容を説明するものです。
- 両者は目的や対象者が異なるため、適切に使い分けることが重要です。
個人情報保護方針とプライバシーポリシーは、企業の個人情報保護における重要な柱です。それぞれの役割を理解し、適切に策定・運用することで、企業の信頼性向上や法的リスクの軽減、ユーザーとの良好な関係構築に繋がります。本記事を参考に、貴社の個人情報保護体制の整備にお役立てください。
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