2025年8月7日

目次
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- 1.製造業における品質管理とは
- 2.製造業での品質管理の具体的な内容
- (1)品質を保つために工程管理を徹底する
- (2)品質検査を正しく行い不良品を防ぐ
- (3)品質改善を進めて不良の再発を防ぐ
- 3.製造業における品質管理の課題5選
- (1)熟練作業者の減少による品質のばらつき
- (2)品質不良の原因特定に時間がかかる
- (3)現場と管理部門間での品質情報の共有不足
- (4)海外拠点との品質基準のずれによる品質不良の発生
- (5)品質管理に必要なITシステムの導入の難しさ
- 4.製造業にて品質管理を実施する6つのポイント
- (1)作業標準書を整備し品質のばらつきを防止する
- (2)品質不良の原因を見える化する
- (3)検査工程を自動化し属人化を解消する
- (4)品質情報を共有できる仕組みをつくる
- (5)品質基準を統一するための教育とマニュアルを作成する
- (6)ITツールを段階的に導入する
- 5.まとめ
品質管理がうまくいかない」
「工程や検査が属人化していて、不具合の原因がすぐにわからない」
結論からお伝えすると、現場のばらつきやトラブルを減らすためには、工程や検査、改善活動を仕組み化し、ITや標準書を使って情報を見える化することが必要です。
なぜなら、感覚や経験に頼ったやり方では、人によって判断が分かれたり、情報が共有されなかったりして、品質が安定しないからです。
仕組みを整えることで、誰でも同じように作業でき、品質のばらつきを防げるようになります。
この記事では、製造業における品質管理の定義から、よくある課題とどのように解決すればいいのかについて解説します。
この記事を読むことで、現場で起きている小さな不良やなんとなく気づいている問題を、根本から見直すヒントが見つかるはずです。
品質を安定させ、現場をもっと効率よくしたいと考えている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
このように品質管理は単なる検査ではなく、工程全体で品質を作り込む活動といえるでしょう。
1.製造業における品質管理とは
製造業における品質管理とは、製品が定められた基準を確実に満たすように材料の受入れから出荷まで、すべての工程を計画的に監督する取り組みのことです。
不良を未然に防ぎ、安定した品質を保つことが第一の目的となります。
具体的には、作業標準書を整え、誰が作業しても同じ結果を得られるように整備しましょう。
さらに、温度や寸法などの測定値を記録し、異常を早期に発見できる仕組みを設けることが重要です。
集めたデータを分析して原因を特定し、計画・実行・確認・見直しのサイクルを継続的に回すことで改善が進んでいきます。
2.製造業での品質管理の具体的な内容

製造業における品質管理の内容は、大きく分けて以下の3つに整理できます。
- 品質を保つために工程管理を徹底する
- 品質検査を正しく行い不良品を防ぐ
- 品質改善を進めて不良の再発を防ぐ
ここからは、品質を守るために欠かせない工程管理、品質検査、品質改善の視点から、実際にどのような取り組みが必要かを解説していきます。
(1)品質を保つために工程管理を徹底する
工程管理を徹底すれば、誰が作業しても同じ品質の製品ができ、不良や手戻りを最小限に抑えられます。
まず作業標準書を用意し、温度・速度・圧力など重要な条件を数字で明記します。
現場では測定値を記録し、設定値から外れたら直ちにラインを止めて原因を調べる体制を整えましょう。
さらに、生産データをグラフ化して変化の傾向を見える化できれば、問題の芽を素早く把握できます。
朝礼やタブレットで情報を共有すれば、交代作業でも認識のずれを防ぐことができます。
(2)品質検査を正しく行い不良品を防ぐ
品質検査とは、製品が決められた基準どおりに作られているかどうかを確認する作業のことです。不良品を見逃さず、信頼できる製品を出荷するためには欠かせない作業です。
品質検査には、大きく分けて以下の3つの検査があります。
- 原材料の受け入れ検査
- 工程内での中間検査
- 完成品の最終検査
それぞれの工程で決められた検査項目を確認し、異常があればただちに報告し、原因の特定と対策を行うことが重要です。
また、検査方法が作業者ごとに異なってしまうと、不良品を見逃す恐れがあります。
検査基準やマニュアルを明確に決め、全員が同じ手順で対応できるよう教育することも必要です。
(3)品質改善を進めて不良の再発を防ぐ
品質改善を進めると、不良の再発を防ぎ、製品の品質を保つことができます。
品質不良が発生したときは、「なぜ起きたのか」を正確に調べる必要があります。
その際、現場の状況、使用した材料や設備、作業手順などを細かく確認し、原因を特定しましょう。
原因がわかったら、ただちに再発を防ぐための改善策を講じ、必要であれば標準書やマニュアルを見直します。
また、改善内容を関係する部署や作業者にしっかり伝えることも忘れてはいけません。
改善後の効果を定期的に確認することも重要です。必要に応じて追加対応を行うことで、さらなる品質の向上につながります。
3.製造業における品質管理の課題5選
製造業の現場でとくによく見られる課題は、以下の5つに分けられます。
- 熟練作業者の減少による品質のばらつき
- 品質不良の原因特定に時間がかかる
- 現場と管理部門間での品質情報の共有不足
- 海外拠点との品質基準のずれによる品質不良の発生
- 品質管理に必要なITシステムの導入の難しさ
ひとつずつ解説していきます。
(1)熟練作業者の減少による品質のばらつき
熟練作業者の減少は、同じ製品でも仕上がりが一定にならず、品質のばらつきを招く大きな要因となります。
残念ながら、長年の経験で培われた勘どころや微妙な調整は、作業標準書だけでは完全に伝わりません。
ベテランが退職すると、若手は寸法の合わせ方や工具の扱い方に迷い、同じ手順でも細かな差が出やすくなります。
さらに、作業ごとに異なる判断が加わると測定値がふらつき、検査で不良が見つかるたびにラインを止めることにもなりかねないのです。
(2)品質不良の原因特定に時間がかかる
品質不良が発生した際に、その原因を特定するまでに時間がかかると、対応が遅れるだけでなく、同じ不良がくり返されるリスクがあります。
不良の原因を特定するには、製造記録や作業履歴、使用部品のロット情報など、さまざまなデータをもとに調査を行う必要があります。
しかし、現場での記録が紙ベースであったり、情報がバラバラに管理されていたりすると、確認に多くの時間がかかってしまうでしょう。
さらに、過去の不良データが共有されていない場合、同じ原因を一から調べ直すことにもなりかねません。
結果として、対策が後手にまわり、出荷停止や顧客クレームといった大きな問題に発展する可能性もあります。
(3)現場と管理部門間での品質情報の共有不足
現場と管理部門との間で品質に関する情報が十分に共有されていないと、トラブルへの対応が遅れたり、再発防止の対策がうまく機能しなかったりする原因となります。
現場では日々さまざまな気づきや不具合が発生しています。しかし、それらが正しく管理部門に報告されないと、全体の改善にはつながりません。
逆に、管理側が出す品質基準や改善指示が現場に伝わらない場合も、せっかくの対策が実行されずに終わってしまいます。
実際には情報が口頭やメモだけで伝えられることも多く、内容があいまいなまま流れてしまうこともあります。
そのような場合、同じミスが何度も起きたり、責任の所在が不明確になったりすることが起きてしまうのです。
(4)海外拠点との品質基準のずれによる品質不良の発生
海外拠点との間で品質基準にずれがあると、意図しない品質不良が発生しやすくなります。
とくに、製造拠点が海外にある場合、日本本社で定めた品質基準や作業手順が正しく理解されないことがあります。
たとえば、「きれいに仕上げる」や「少しのズレもなく」といった表現は、人によって感じ方が異なり、具体的な基準として伝わらないことがあるでしょう。
さらに、図面やマニュアルの翻訳ミス、用語の使い方の違いが誤解を生み、工程そのものに差が出てしまうこともあります。
こうした小さなずれが放置されると、完成品の品質に大きなばらつきが生じ、納品後のトラブルやクレームにつながる恐れがあります。
(5)品質管理に必要なITシステムの導入の難しさ
ざまなハードルがあり、すぐに現場へ定着させるのは簡単ではありません。
具体的には以下のとおりです。
- 初期費用や運用コストがかかるため、予算の確保が必要
- 現場の作業者が新しい仕組みに慣れるまで時間がかかる
- システムが複雑すぎると、かえって作業の負担になることがある
- 現場のニーズに合わず「使えないツール」と判断されてしまうことも
このように、品質管理にITシステムを導入するには、機能やコストだけでなく、現場の理解と協力が欠かせないのです。
4.製造業にて品質管理を実施する6つのポイント
製造業にて品質管理を実施するうえで大切なポイントは、以下のとおりです。
- 作業標準書を整備し品質のばらつきを防止する
- 品質不良の原因を見える化する
- 検査工程を自動化し属人化を解消する
- 品質情報を共有できる仕組みをつくる
- 品質基準を統一するための教育とマニュアルを作成する
- ITツールを段階的に導入する
これらをしっかり押さえておけば、誰が作業しても品質が安定し、現場全体の生産性や信頼性を高めることができるはずです。
順番に見ていきましょう。
(1)作業標準書を整備し品質のばらつきを防止する
作業標準書を整えることで、品質のばらつきを防ぐことに役立ちます。
作業標準書とは、誰が作業しても同じ品質で仕上げられるように、手順や注意点をわかりやすくまとめたルールブックのことです。
現場では、作業者ごとの経験や判断によって手順が少しずつ変わってしまうことがあります。
この差が積み重なると、製品の品質にばらつきが生まれ、結果として不良や手直しの原因となることも少なくありません。
作業標準書を使えば、作業の流れ、使用する道具、注意点などをわかりやすく記録でき、誰でも同じやり方で作業できるようになります。
とくに新人や派遣社員が多い職場では、標準書があることで教育のばらつきも防げ、品質を安定させるうえで大きな効果を発揮するはずです。
(2)品質不良の原因を見える化する
品質不良の原因を見える化すれば、問題の早期発見と再発防止につながります。
不良が発生したときに原因があいまいなままだと、対策も効果が出にくく、同じ不良が何度も起こることになりかねません。
そのためには、発生した日時、工程、作業者、使用した材料や設備などの情報を正確に記録し、関係者がすぐに確認できるようにしておく必要があります。具体的には以下のとおりです。
| 項目 | 記載内容の例 |
| 発生日時 | 2025年4月25日13時 |
| 工程名 | Aラインの組立工程 |
| 作業者 | 作業者B |
| 不良内容 | 製品にゆるみが発生 |
| 使用部品 | ネジ(ロット番号:12345-A) |
| 使用工具 | トルクレンチ(設定値:3.5N・m) |
| 記録媒体 | 写真(ゆるみ箇所)、動画(組立作業の様子) |
不良の内容や頻度をグラフや表で見える化すれば、どこで問題が起きやすいかが一目でわかります。
また、原因を特定する際は、ヒアリングや写真、動画を活用することで、現場の状況を客観的に把握することができます。
こうした見える化の積み重ねが、根本的な改善へとつながるのです。
(3)検査工程を自動化し属人化を解消する
検査工程を自動化することで、作業者ごとの判断の違いによる品質のばらつきを防ぎ、検査の正確性と効率を高めることができます。
目視検査や手作業による測定では、作業者の経験や体調によって判定結果が変わることがあります。
同じ製品でも、ある人は「合格」と判断しても、別の人は「不合格」と判断する場合もあり、品質のばらつきやミスにつながります。
そこで、カメラやセンサー、AIによる画像認識などを活用して検査を自動化すれば、一定の基準に基づいて正確な検査が可能です。それぞれの使い方や効果については、以下のとおりです。
| 技術 | 使い方の例 | 検査内容 | 効果 |
| カメラ | 製品表面の撮影・記録 | キズ・汚れ・変形の検出 | 見逃しのない外観検査が可能になる |
| センサー | 製品の寸法や重量を測定 | 長さ・幅・高さ・重さ | 手作業では測れない微細な違いも判定可能 |
| AI画像認識 | 学習したパターンと画像を照合 | 正常品と不良品の自動識別 | 経験に左右されない客観的な合否判断ができる |
つまり、検査工程の自動化をすることで、作業の効率と品質の安定化にもつながります。
(4)品質情報を共有できる仕組みをつくる
品質情報を関係者全員で正しく共有する仕組みを整えることも有効です
製造現場では、日々さまざまな品質に関する情報が発生しています。具体的には、不良の内容や発生場所、作業者の気づき、検査結果などです。
こうした情報が現場から管理部門、あるいは他の部署に正しく伝わらないと、せっかくの改善内容が伝わらなかったり、同じトラブルが繰り返されたりする原因にもなります。
そのため、タブレットやクラウドシステムなどを活用して、誰でも必要な情報にすぐアクセスできる仕組みが必要です。具体的な内容は以下のとおりです。
- タブレット入力で情報をリアルタイム記録
例:作業中に不良を見つけたら、すぐにアプリで報告 - クラウド上のダッシュボードに自動反映
例:管理部門が別拠点でも不良発生状況を確認可能 - 過去の対応履歴もひも付けて検索可能に
例:この不良は以前にも発生した→過去の原因と対策がすぐ見られる - ライン・日付ごとの不良傾向をグラフ化
例:特定のラインで不良が多発していることが一目でわかる
このように、不良の発生状況や対応履歴をアプリで入力すれば、その情報が即座に他の部署でも確認できるようになり、対応の遅れや伝達ミスを防ぐことができます。
(5)品質基準を統一するための教育とマニュアルを作成する
品質基準を全社で統一するためには、誰でも理解できるマニュアルを作成し、それに基づいた教育を行うことが欠かせません。
製造現場では、工程や製品ごとに細かな基準が存在します。
しかし、その内容が作業者に十分に伝わっていなかったり、人によって解釈が異なったりすると、同じ工程でも結果に差が出てしまいます。
たとえば、抽象的な表現と具体的な表現を比べると、以下のようになります。
表現方法 内容の例 問題点や効果 抽象的な表現 「しっかり締める」 人によって力加減や基準が異なり、ばらつきが発生する 具体的な表現 「トルクレンチを3.5N・mに設定し、クリック音が鳴るまで締める」 明確な基準により、誰が作業しても同じ結果が得られる
このように人によって理解が異なるのでなく、だれが見ても同じ作業ができるように、具体的でわかりやすいマニュアルを整備することが大切です。
さらに、マニュアルに基づいた教育を実施し、定期的に理解度を確認することで、新人や海外拠点の作業者にも同じ品質基準を伝えることができます。
つまり、品質基準を全社で統一するには、見てわかる、誰でも使えるマニュアルと、それを活用した教育が必要です。
(6)ITツールを段階的に導入する
品質管理を効率よく進めるには、ITツールの活用が有効です。ただし、一度にすべてを変えるのではなく、現場の状況に合わせて段階的に導入することがポイントです。
ITツールには、検査記録の自動化、作業データの集計、異常値のアラート通知など、品質を見える化し、管理しやすくするさまざまな機能があります。
しかし、慣れないうちに複雑なシステムを一気に導入してしまうと、かえって現場の混乱を招き、使いこなせないまま定着しないというケースも少なくありません。
段階的なIT導入の具体例は以下のとおりです。
- 紙のチェックシートをタブレット入力に変更
記入ミスの削減を狙い、書いた内容をすぐに共有できるようにする。 - 収集したデータを自動でグラフ化
数値の傾向が視覚的にわかり、不良の発生率や作業進捗が一目で確認できる。 - 異常値を検出する仕組みを追加
基準から外れた値を自動でアラートが鳴るように設定。問題の早期発見につながる。
ITツールの導入は、品質管理の効率化と精度向上に対してとても役立ちますが、無理なく段階的に進めることが重要なのです。
5.まとめ
今回は、品質管理の定義から製造業でよく見られる品質管理の課題と、その具体的な解決策について解説しました。
品質管理における主な課題には、熟練作業者の減少によるばらつき、原因特定に時間がかかること、情報共有の不足、海外拠点との基準のずれ、IT導入の難しさなどがあります。
これらの課題に対応するためには、作業標準書の整備や原因の見える化、検査工程の自動化、情報共有の仕組みづくり、基準統一のための教育、ITツールの段階的な導入といった内容が有効です。
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