2022年3月11日
ISO14001とSBT認定は直接的な関係性はありませんが、環境目標として設定することもできるため親和性があります。
ISO14001の認証取得を目指す企業、既に取得している企業はSBT(5年~15年先を目標として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標)を参考に環境目標を設定してみてもいいかもしれません。
1.SBTとは?
SBTとは、2015年に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議にて採択されたパリ協定が求める水準(世界の気温上昇を産業革命前と比べ、2℃を十分に下回るように抑え、1.5℃に抑えることも目指す)をもとに、5年~15年を目標として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。
SBTでは、サプライチェーン排出量の削減が求められています。
サプライチェーン排出量とは、事業者(企業)自らの排出だけでなく、事業活動に関係する排出を合計した温室効果ガス量のことをいいます。
また、サプライチェーン排出量は、Scope1、Scope2、Scope3の合計値で算出されます。
Scope1=事業者(企業)自らが直接排出する温室効果ガス量
(例:燃料の燃焼や工業プロセス
Scope2=他社から共有された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出の温室効果ガス量
Scope3=Scope1、Scope2以外の間接排出の温室効果ガス量
(活動例:従業員の通勤や出張、原材料の調達、廃棄物の処理、販売した製品の使用等)
2.SBTに取り組むメリット
SBTに取り組むことは企業としてもメリットがあります。
取り組むメリットとしては、SBTはパリ協定が求める基準に整合するため、SBTに取り組む企業は持続可能な企業であることを利害関係者にアピールすることができます。
利害関係者別のアピールポイントは下記になります。
・投資家:SBT認定を受けている企業は、持続可能性をアピールすることができ、CDPスコアの採点等で評価され、ESG投資の呼び込みに役立ちます。
・顧客:持続可能な企業であるということで、リスク意識の高い声に答えることとなり、ビジネス展開におけるリスクの低減や機会の獲得につながる可能性があります。
・社員:温室効果ガスの削減目標による、省エネ、業務効率化、働き方改革等の生産性向上を推進するための動機づけとなります。
3.SBTの運営機関
SBTは、下記4つの機関によって共同運用されています。
①CDP
②UNGC 【UN Global Compact(国連グローバル・コンパクト)】
③WRI 【World Resources Institute(世界資源研究所)】
④WWF 【World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)】
4.SBTの対応企業
SBTに参加する日本企業は、2021年7月27日時点でSBT認定企業は121社、コミット企業は27社、合計で148社となっています。
認定を受けている企業の業種は、建設業、食料品、化学、医薬品や電気機器、情報・通信業、サービス業など幅広い分野となっています。
また、中小企業版SBTで認定を受けている企業もあり、その数は26社となっています。 ※2021年10月時点
5.SBTとISO14001の関係について
SBTとISO14001の関係ですが、直接の関係はありません。
ただ、温室効果ガス排出削減目標を目指すSBTと環境マネジメントシステムであるISO14001とは親和性があり、ISO14001の活動をSBTに結び付けることも、SBTの活動をISO14001に結び付けることも可能です。
自社で直接及び間接的に温室効果ガスを排出(Scope1及びScope2、Scope3 )する活動に関係する環境側面及び環境影響を決定することでISO14001の活動に組み込むことができます。
また、環境目標の確立時に、温室効果ガスの排出を組織の著しい環境側面と捉え、これを考慮に入れた場合は環境目標達成のための活動がSBTの活動とすることも可能です。
6.ISO14001取得企業が今できること
ISO14001取得企業がいきなりSBTに取り掛かるというのはハードルが高く感じるかと思います。
まずは自社の活動で温室効果ガスの排出を減らすためにどんなことができるだろうか?ということから考えてみてはどうでしょうか。
現在実施している事業活動を見直してみて、電子化することで省エネできないか?製造(サービス提供)の過程で発生する材料・エネルギーの無駄ないだろうか?等できることはたくさんあると思います。
まとめ
SBTとは、5年~15年先を目標として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のことです。
環境マネジメントシステムのISO14001の環境目標とも親和性もあります。
ISO14001を取得している企業は、SBTを参考に温室効果ガス排出削減の目標を立ててみても良いかもしれませんね。
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