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ソーシャルエンジニアリングの基礎知識から企業対策までをわかりやすく整理

2025年7月23日

ソーシャルエンジニアリングの基礎知識から企業対策までをわかりやすく整理

目次

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「ソーシャルエンジニアリングって、何だか難しそう」

「自分には関係ないと思っていたけど、少し不安」

実は、ソーシャルエンジニアリングは、誰もが日常の中で巻き込まれる可能性のある人をだます攻撃です。

たとえば、偽のメールで個人情報を聞き出されたり、電話でパスワードを伝えてしまったりと、簡単に被害に遭ってしまうことがあります。

この記事では、ソーシャルエンジニアリングの基本的な仕組みやよくある手口、実際に起きた事件、そして個人や企業が今すぐできる対策方法までをわかりやすく解説しています。

読んでいただくことで、詐欺や不正アクセスの被害をあらかじめ防ぐ力が身につくはずです。

「自分は大丈夫」と思わず、まずは正しい知識を身につけることから始めてみましょう。

1.ソーシャルエンジニアリングの定義

ソーシャルエンジニアリングとは、人の心理や行動の隙をついて情報を盗み出す手口のことです。

コンピューターの技術を使わず、人間そのものをだますことで情報に不正にアクセスしようとします。

たとえば、犯人が企業の社員になりすまし、電話やメールで他の社員からパスワードを聞き出したり、関係者を装って建物に入り込み、書類やパソコンから情報を得たりするケースがあります。

これは技術的な攻撃ではなく、相手の信頼を利用した心理的な攻撃といえるでしょう。

つまり、ソーシャルエンジニアリングとは「人の油断や思い込みを利用して情報を得る詐欺的な行為」をいいます。

2.ソーシャルエンジニアリングを警戒すべき理由

ソーシャルエンジニアリングは、誰もが被害に遭う可能性がある非常に危険な手口であり、とくに注意が必要です。

実際、IPA(情報処理推進機構)が毎年公表している「情報セキュリティ10大脅威」でも、ソーシャルエンジニアリングに関連する攻撃が数多く報告されています。

たとえば「フィッシングによる個人情報等の詐取」「標的型攻撃による機密情報の窃取」「ビジネスメール詐欺による金銭被害」などは、常に上位にランクインしています。

これらの攻撃は実際に多くの被害を生み出し、企業の信用や個人の財産を失うなど、社会全体に深刻な影響を及ぼしています。

つまり、ソーシャルエンジニアリングは巧妙で見破りにくいだけでなく、かつ実際に被害が多発している重大な脅威なのです。

3.代表的なソーシャルエンジニアリングの手口と特徴10選

ここからは、ソーシャルエンジニアリングにおける代表的な攻撃手法を、大きく分けて10のパターンに整理して紹介しています。

  • フィッシング
  • スピアフィッシング
  • ビッシングとスミッシング
  • なりすまし(プリテキスティング)
  • ベイト(餌)
  • スケアウェア
  • ショルダーハッキング
  • トラッシング(ゴミ漁り)
  • USBドロップ攻撃
  • リバース・ソーシャルエンジニアリング

事前にどのような手口があるかを知っておくことで、不審な動きにいち早く気づき、被害を未然に防ぐことができるようになります。

ひとつずつ見ていきましょう。

(1)フィッシング

フィッシングとは、偽のメールやWebサイトを使って、利用者からパスワードやクレジットカード番号などの重要な情報をだまし取る手口です。

もっとも代表的で被害件数も多く、誰もが注意すべきソーシャルエンジニアリングの一つです。

たとえば、「あなたのアカウントに不正アクセスがありました」といった不安をあおる内容のメールを送り、偽のログイン画面に誘導するのが典型的な方法です。

この画面は本物そっくりに作られており、そこに情報を入力すると攻撃者の手に渡ってしまいます。また、宅配業者を装って「再配達はこちらから」といったSMSを送り、同様に偽サイトへ誘導する手口もあります。

フィッシングは「知っている相手からの連絡だ」と思わせることで、相手の心の隙をつく詐欺行為なのです。

(2)スピアフィッシングング

スピアフィッシングとは、特定の個人や企業を狙い撃ちにするフィッシングの一種です。

一般的なフィッシングが不特定多数に向けてばらまかれるのに対し、スピアフィッシングは、あらかじめ対象者の情報を収集し、信頼されやすい内容で接触を図るところが特徴です。

たとえば、実際に取引のある会社や上司を装ってメールを送り、「見積書を確認してください」「至急対応願います」といった自然な文面で偽の添付ファイルやリンクを開かせようとします。

こうした攻撃は、一見して不審に見えないため、セキュリティ意識の高い人でもだまされてしまうことがあります。

企業の役職者や情報システム担当者など、重要な権限を持つ人が狙われるケースも多く、被害が深刻化しやすいのが特徴です。

(3)ビッシングとスミッシング

ビッシングとスミッシングは、電話やSMS(ショートメッセージ)を使って情報をだまし取る手口です。どちらもソーシャルエンジニアリングの一種であり、声や文字を使ってユーザーを信用させ、個人情報や口座情報などを不正に聞き出そうとします。

ビッシングは「音声(Voice)」と「フィッシング(Phishing)」を組み合わせた言葉で、主に電話を使った詐欺です。

たとえば、「銀行の不正利用が確認されました」「カードの利用を停止するには本人確認が必要です」などと話し、暗証番号や口座番号を聞き出すケースがあります。実在の企業名を使うことが多く、非常に信じやすい内容になっています。

一方、スミッシングは「SMS」と「フィッシング」を組み合わせた言葉で、スマートフォンなどに届くショートメッセージを悪用します。

「荷物の再配達はこちら」「未払い料金があります」などといったメッセージに、偽サイトへのリンクが含まれており、そこから情報を入力させる手口です。

どちらも身近な手段を使ってくるため、だまされやすい点が大きな特徴です。

(4)なりすまし(プリテキスティング)

なりすまし(プリテキスティング)とは、あらかじめ用意された「もっともらしい理由(=作り話)」を使って他人になりすまし、個人情報や機密情報を引き出す手口です。企業の担当者や公的機関の職員などを装い、信頼を得ることで相手をだまします。

たとえば、「社内システムの確認のため、社員情報を教えてください」「○○部の調査で連絡しています」などと、関係者になりきって電話やメールを行い、相手に疑わせる隙を与えず情報を引き出します。

攻撃者は事前に相手の部署名や役職、業務内容を調べており、話の内容に説得力を持たせてくるため、つい信用してしまいやすいのが特徴です。

なりすましは、相手の善意や業務上の義務感を利用して情報を引き出す点が非常に巧妙です。ひとたび情報が漏れると、不正アクセスやさらなる攻撃の足がかりに使われる可能性があります。

(5)ベイト(餌)

ベイト(餌)とは、相手の興味や欲求を利用しておびき寄せ、情報を盗んだりウイルスに感染させたりする手口です。英語の「bait=餌」が語源で、まさに「おいしそうな話」で人を引き寄せ、だまそうとするソーシャルエンジニアリングの一つです。

たとえば、「景品が当たりました」「無料でアプリが使えます」といった言葉でメールやサイトに誘導し、個人情報を入力させたり、危険なファイルをダウンロードさせたりします。

また、USBメモリを会社の敷地内にわざと置き、誰かが拾ってパソコンに接続することで、マルウェアを侵入させるといった物理的な方法もあります。

(6)スケアウェア

スケアウェアとは、偽の警告を使って利用者に不安や恐怖を与え、不要なソフトを購入させたり、有害なファイルをインストールさせたりする手口です。「スケア(scare)=怖がらせる」という言葉が示す通り、相手を動揺させることを目的としたソーシャルエンジニアリングの一種です。

代表的な例として、「ウイルスが検出されました」「このままでは個人情報が流出します」といった警告画面を突然表示し、「今すぐ修復」と書かれたボタンをクリックさせようとします。

その先には偽のセキュリティソフトやマルウェアが待ち構えており、クリックしてしまうとパソコンが感染したり、金銭をだまし取られたりする可能性があります。

スケアウェアの特徴は、冷静な判断を失わせるような表現を使い、不安をあおる点です。突然の画面表示や警告音など、驚かせる演出が多く、知識のある人でもつい騙されてしまうこともあります。

(7)ショルダーハッキング

ショルダーハッキングとは、他人の画面やキーボードの操作を背後からのぞき見て、パスワードや個人情報を盗み取る行為です。

特別な機器や技術を使わなくても実行できるため、身近で起こりやすいソーシャルエンジニアリングの一つといえます。

たとえば、電車の中やカフェなどの公共の場で、ノートパソコンやスマートフォンを操作しているときに、背後からのぞかれて画面に表示された情報を見られてしまうケースがあります。

とくに、ログイン中のIDやパスワード、クレジットカード番号などが入力されていると、盗み見された情報がそのまま悪用される危険もあります。また、キーボードの動きをじっと見て文字を推測することもあり、想像以上に高いリスクを含んでいるのです。

(8)トラッシング(ゴミ漁り)

トラッシング(ゴミ漁り)とは、ゴミ箱に捨てられた書類や記録媒体などをあさり、個人情報や機密情報を不正に入手する手口です。

誰でも実行できてしまう点で、現実的かつ注意が必要な行為です。

たとえば、企業のゴミ箱から顧客名簿、内部資料、IDやパスワードが書かれたメモなどを見つけ出し、それらを悪用して不正アクセスや情報漏えいにつなげるケースがあります。

パット見はただの紙くずでも、社外に漏れると大きな損害になる情報が多く含まれていることがあるため、安易に廃棄することは非常に危険です。

USBメモリやCDなどのメディアを、フォーマットせずにそのまま捨てるといった行為も同じリスクを伴います。

(9)USBドロップ攻撃

USBドロップ攻撃とは、あらかじめウイルスや不正なプログラムが仕込まれたUSBメモリをオフィスや公共の場所にわざと落としておき、拾った人がそれをパソコンに接続することで感染させる手口です。

人の好奇心や善意につけ込む、巧妙なソーシャルエンジニアリングです。

たとえば、USBメモリに「人事資料」や「重要」といったラベルを貼っておけば、拾った人は中身を確認しようとしてパソコンに接続してしまうかもしれません。接続した瞬間にウイルスが起動し、情報を盗んだり、不正アクセスの足がかりを作ったりする被害が発生します。

攻撃者にとっては、物理的に置くだけで簡単に実行できる上、対象者が自ら感染のきっかけを作ってしまうという点で、成功率の高い手段とされています。

(10)リバース・ソーシャルエンジニアリング

リバース・ソーシャルエンジニアリングとは、攻撃者が「助けるふり」をして利用者の信頼を得たうえで、相手のほうから自発的に連絡してくるように仕向ける手口です。

従来の情報を聞き出す方法とは逆に、相手から相談させるという特徴があるため、「リバース(逆の)」と呼ばれています。

たとえば、攻撃者が意図的にパソコンにトラブルを起こし、「トラブル対応窓口」として自らの連絡先をあらかじめ案内しておきます。被害者は困ってその連絡先に助けを求めますが、そこに対応するのは実は攻撃者です。

そして「修復のため」と偽り、パスワードや設定情報を聞き出したり、不正なソフトをインストールさせたりします。相手が自分の意思で連絡してくるため、警戒心が薄くなり、気が緩みやすいのがこの手口の恐ろしい点です。

4.実際に発生したソーシャルエンジニアリングの被害事例

現実に企業や組織で起きた被害の例をご紹介しています。

こうした実例を知っておくことで、ソーシャルエンジニアリングが他人事ではなく、自分たちの身近な問題であることに気づくことができるはずです。

(1)日本航空のビジネスメール詐欺被害 (2017年)

2017年、日本航空(JAL)は、ビジネスメール詐欺(BEC:Business Email Compromise)の手口により、約3億8,000万円という多額の金銭被害を受けました。

当時、日本航空が継続して取引していた海外企業になりすました攻撃者が、「送金先の口座が変更になった」という偽のメールを送信。文面は自然で不審な点がなく、実際のやりとりを模したものであったため、担当者は疑うことなく指示に従い、新たに指定された口座へ送金してしまいました。

結果的に、この送金が詐欺であったことが判明し、被害が明るみに出ました。

参照:日経XTECHJALが「信じ込んでしまった」手口とは、振り込め詐欺で3.8億円被害

(2)東芝の米国子会社における資金流出 (2022年)

2022年、東芝の米国子会社であるToshiba International Corporation(TIC)が、外部からの不正な電子メールの指示に従ったことにより、約5億円(約360万ドル)もの資金を詐取される重大な被害を受けました。

この事件は、ソーシャルエンジニアリングの中でもとくに巧妙な「ビジネスメール詐欺(BEC)」の手口に分類されます。

攻撃者は、あたかもTICの関係者からの正規の依頼であるかのように見せかけた偽のメールを作成し、資金の送金指示を装って送信しました。

メールの文面は非常に自然で、本物と見分けがつかないほど精巧に作られており、実際の社内フローに紛れ込む形で送金が実行されてしまいました。

参照:東芝当社米国子会社における資金流出に関する対応の進捗等について

(3)Twitter社(現X社)の内部関係者へのソーシャルエンジニアリング(2020年)

2020年7月、Twitter社(現・X社)で発生した大規模なアカウント乗っ取り事件は、ソーシャルエンジニアリングによって内部システムへのアクセス権が奪われました。

この事件では、著名人や企業アカウント、たとえばイーロン・マスク氏、バラク・オバマ元大統領、アップル社、ビル・ゲイツ氏などの公式アカウントが乗っ取られ、仮想通貨を騙し取る投稿が行われました。

攻撃の手口は、Twitter社の内部関係者を標的にしたソーシャルエンジニアリングです。具体的には、電話を使った「なりすまし」や「心理的誘導」を駆使し、管理者アカウントへのアクセス情報を不正に取得しました。

その結果、攻撃者は社内ツールを操作できる権限を手に入れ、対象アカウントを次々に制御したのです。

この事件の被害は非常に広範囲に及び、Twitter社は対象アカウントの一時凍結、投稿機能の制限、さらにはFBIなどによる捜査を受ける事態となりました。また、仮想通貨詐欺の投稿を見た一部の利用者が実際に送金してしまう被害も発生しました。

参照:TIMETwitter Says Hackers Targeted 130 Accounts in Cyber-Attack

5.個人で実践できるソーシャルエンジニアリングへの8つの備え

ここでは、日常生活や業務の中で誰でもすぐに取り入れられる対策を、大きく分けて8つご紹介しています。

  • 代表的な手口とその巧妙さを常に意識する
  • メールの送信元と内容を慎重に確認する
  • 強固なパスワード設定と二要素認証(多要素認証)の徹底
  • 個人情報の公開範囲と提供の判断は慎重に行う
  • OS・ソフトウェア・セキュリティ対策ソフトを常に最新の状態に保つ
  • 公共の場での情報取り扱いに注意する
  • 電話や対面でも「おかしい」と感じたら即断せず確認する
  • 不安な時や被害に遭った場合の相談先を事前に把握しておく

初めて対策を考える方でも実践しやすいよう解説していきます。

(1)代表的な手口とその巧妙さを常に意識する

ソーシャルエンジニアリングから身を守るためには、代表的な手口とその巧妙さを日頃から意識することが大切です。

攻撃者は、相手の心の隙や油断を突くような言葉や行動で、自然に情報を引き出そうとします。

たとえば、「パスワードを確認したい」と言ってくる偽のサポート担当者や、「アカウントが停止されます」と不安をあおる偽メールなど、手口は年々巧妙化しています。

一見すると本物のように見える文面や電話応対にだまされてしまう人も少なくありません。ときには実在の企業名や過去のやり取りを引用するなど、相手の信頼を得ようと細かく仕組まれていることもあります。

このような手口に引っかからないためには、「この連絡は本当に正しいのか」「自分の情報は誰が必要としているのか」といった視点を持つことが重要です。

知っているだけで、防げる攻撃も数多くあります。被害を未然に防ぐには、最新の事例や詐欺の手法を知り、「自分だけは大丈夫」と思わずに、警戒心を持つことが必要です。

(2)メールの送信元と内容を慎重に確認する

届いたメールの送信元と内容を慎重に確認する習慣を持ちましょう。

とくに、差出人が信頼できそうな名前や企業を装っていても、内容に不自然さがないかを常に意識する必要があります。

たとえば、「アカウントに問題がある」「支払いが遅れています」といった不安をあおる表現や、「今すぐ対応が必要」と急かす文言が含まれている場合は注意が必要です。

また、差出人名が本物でも、メールアドレスが似て非なる文字列になっている場合や、リンク先のURLが正規のドメインでない場合は、詐欺の可能性があります。

こうしたリスクを避けるためには、「知っている相手だから大丈夫」と思い込まず、メールアドレスやURL、文面の内容を一つずつ丁寧に確認することが大切です。

少しでも違和感があるときは、メールではなく電話などの別の手段で本人に確認するようにしましょう。

(3)強固なパスワード設定と二要素認証(多要素認証)の徹底

ソーシャルエンジニアリングによる不正アクセスを防ぐには、強固なパスワードの設定と二要素認証(多要素認証)の活用が最も基本的かつ重要になります。

まず、短くて単純なパスワードや、誕生日・名前など推測しやすい情報を使うことは避けましょう。英字(大文字・小文字)、数字、記号を組み合わせ、12文字以上の長さにすることが推奨されます。

また、複数のサービスで同じパスワードを使い回すことも非常に危険です。一つ情報が漏れると、他のアカウントにも不正に侵入される恐れがあります。

加えて、ログイン時にパスワードに加えて「もう一つの確認手段」を求める二要素認証を導入することで、セキュリティの安全性は高まります。

たとえば、スマートフォンに届く認証コードや、生体認証などがこれにあたります。仮にパスワードが盗まれても、他の認証方法が必要になるため、攻撃者は簡単にアクセスできません。

(4)個人情報の公開範囲と提供の判断は慎重に行う

日頃から個人情報の公開範囲や提供先に注意を払うこともソーシャルエンジニアリングから守るためには重要です。

何気なくネット上に載せた情報が、攻撃者にとっては貴重な足がかりになることがあります。

実は、SNSに公開している勤務先や家族構成、通勤ルート、写真に写り込んだ名札や書類などから、個人の属性や行動パターンが把握されてしまうことがあります。そこから「なりすまし」や「標的型メール」などの攻撃に発展するケースも珍しくありません。

また、通販や会員登録などの際に求められる個人情報も、入力先が信頼できるかどうかを見極める必要があります。むやみに入力するのではなく、サイトの運営会社や利用目的を確認する習慣をつけましょう。

(5)OS・ソフトウェア・セキュリティ対策ソフトを常に最新の状態に保つ

ソーシャルエンジニアリングへの備えとして、OSやソフトウェア、セキュリティ対策ソフトを常に最新の状態に保ちましょう。

なぜなら、更新を怠ると、攻撃者に狙われやすい「弱点(脆弱性)」が残ったままになり、被害のリスクが高まるからです。

多くの攻撃は、古いバージョンのソフトに存在する既知の脆弱性を悪用します。とくにセキュリティパッチが適用されていない場合、その情報はすでに攻撃者に知られていることも多く、対策をしなければ「無防備な状態」でネットに接続しているのと同じです。

また、セキュリティソフトについても、ウイルス定義ファイルが古いと新しい脅威に対応できません。自動更新を有効にしておくことで、常に最新の備えを維持できるようになります。

(6)公共の場での情報取り扱いに注意する

ソーシャルエンジニアリングの被害を防ぐには、公共の場での情報の取り扱いにも十分な注意を払う必要があります。

電車の中やカフェ、図書館など、周囲に第三者がいる環境では、思わぬところから情報が漏れる危険があるからです。

たとえば、パソコンやスマートフォンの画面をのぞき見されたり、通話中の会話から業務内容や個人情報が聞き取られたりすることがあります。

さらに、公共のWi-Fiを使って機密性の高いデータにアクセスした場合、通信が盗み見られるリスクも否定できません。たとえ、本人に悪気がなくても、攻撃者にとっては格好の情報源となります。

情報漏えいを防ぐには、外出先での作業を最小限に抑えることが基本です。

やむを得ず利用する場合は、のぞき見防止フィルターの使用や画面を他人に見られにくい向きにする工夫が必要です。また、公共Wi-Fiの使用は極力避け、どうしても使う際はVPN(仮想専用回線)の利用を検討しましょう。

(7)電話や対面でも「おかしい」と感じたら即断せず確認する

ソーシャルエンジニアリングはメールやSNSだけでなく、電話や対面で行われることもあります。

その場の雰囲気や相手の言い方につられて対応してしまうと、思わぬ情報漏えいや被害につながる恐れがあります。

少しでもおかしいと感じたときは、すぐに答えたり行動したりせず、冷静に確認しましょう。

たとえば、「社内の担当者です」「上司の指示です」などと名乗る相手が、急にパスワードや社内情報を求めてくるケースがあります。

話し方が丁寧であったり、身分証のようなものを提示されたりしても、それだけでは信用できません。

電話であれば、いったん通話を切って、正規の連絡手段で相手の身元を確認するのが基本です。対面の場合も、その場で対応せず、一度席を外して上司や関係部門に相談することが望ましいでしょう。

(8)不安な時や被害に遭った場合の相談先を事前に把握しておく

ソーシャルエンジニアリングの被害は、誰にでも起こりうるものです。

万が一のときに冷静に対応できるよう、不安を感じたときや実際に被害に遭った場合の相談先を事前に確認しておきましょう。

たとえば、「怪しいメールを開いてしまった」「個人情報を伝えてしまったかもしれない」といった不安があった場合、自分だけで判断するのは危険です。

企業や学校に所属している場合は、情報システム部門やセキュリティ担当にすぐ相談しましょう。個人で利用しているサービスであれば、銀行、カード会社などのサポート窓口に連絡することが先決です。

また、国が運営する「情報セキュリティ安心相談窓口(IPA)」も、一般の方が気軽に相談できる窓口として活用できます。

6.組織として取り組むべきソーシャルエンジニアリング対策7選

組織が取り組むべきソーシャルエンジニアリング対策は、大きく分けて以下の7つです。

  • セキュリティポリシーの策定と全従業員への周知徹底
  • 定期的なセキュリティ教育と実践的な訓練の実施
  • 多層的なセキュリティの導入と運用
  • 物理的なセキュリティ対策の強化とオフィス環境の整備
  • 重要な業務における承認・確認の体制の強化
  • サプライチェーン全体でのセキュリティの連携
  • セキュリティ対策の定期的なチェックと改善活動

メールや電話、対面など、あらゆる場面で組織を狙ってきます。組織として実践すべき対策を順番に解説していきます。

(1)セキュリティポリシーの策定と全従業員への周知徹底

ソーシャルエンジニアリングの被害を防ぐためには、組織として明確なセキュリティポリシーを策定し、それをすべての従業員に周知徹底することが不可欠です。

たとえば、外部からのメール対応のルール、パスワードの管理方法、情報の持ち出し制限、身元不明な電話への対応への基準など、具体的な行動指針を決めることで、従業員は日常の業務の中で「どのような行動が正しいか」を判断しやすくなります。

(2)定期的なセキュリティ教育と実践的な訓練の実施

従業員一人ひとりが正しい知識と判断力を持つことも重要です。

そのためには、定期的なセキュリティ教育と実践を想定した訓練の実施が欠かせません。知識だけでなく、実際の行動につなげる力を養うことではじめて、セキュリティの有効性が高まります。

たとえば、フィッシングメールの見分け方や怪しい電話への対応方法、不審者を見かけた際の報告手順など、具体的な状況を想定した訓練を行うことで、現場でも冷静に対処できるようになります。

年に1回の座学だけではなく、模擬攻撃やロールプレイング形式の演習を取り入れることで、より実践的な理解を深められるでしょう。

(3)多層的なセキュリティの導入と運用

ソーシャルエンジニアリングによる攻撃は、人の心理や行動の隙を突いて侵入してくるため、一つの対策だけでは防ぎきれないことがあります。

そのため、組織としては複数のセキュリティ対策を組み合わせた「多層的な防御」の導入と運用がキモとなります。

たとえば、ウイルス対策ソフトやファイアウォールだけでなく、アクセス権限の制御、メールフィルター、二要素認証、ログ監視、情報の暗号化など、さまざまな技術を重ねて配置することで、万一どこか一つの対策が突破されても、次の手段で被害の拡大を防ぐことができるはずです。

また、技術的な対策だけでなく、従業員への教育やルールの徹底といった人的対策も合わせて実施することで、より効果的な対策につながります。

(4)物理的なセキュリティ対策の強化とオフィス環境の整備

ソーシャルエンジニアリング対策というと、技術面に目が向きがちですが、実は物理的なセキュリティも非常に重要です。

不審者の侵入や書類の盗み見、USBドロップ攻撃など、オフィスの環境そのものが狙われることも少なくありません。

たとえば、入退室管理の徹底、来訪者への身分証明書の提示、執務室やサーバールームへのアクセス制限などが効果的です。

また、機密書類を放置しない、シュレッダーによる廃棄、のぞき見防止フィルターの使用など、日常的なオフィス内の行動にも注意が必要です。

加えて、清掃業者や外部委託スタッフへの対応ルールも明確にしておくことで、意図しない情報漏えいのリスクを減らすことができます。

(5)重要な業務における承認・確認の体制の強化

被害を防ぐためには、重要な業務に対して複数人による承認や確認を行う体制を整えることが欠かせません。

とくに、送金や情報の開示、システムの操作など、重大な判断を伴う業務においては、個人の判断に任せず、組織としての運用が求められます。

たとえば、「上司の指示を装ったメールで不正な送金が行われる」といったビジネスメール詐欺は、承認プロセスが機能していなければ簡単に実行されてしまいます。

これを防ぐには、業務上の重要な依頼についてはメールだけで完結させず、必ず電話や対面など別の手段で確認を行うといったルールを設けることが効果的です。

また、業務システム上での操作についても、ダブルチェックや上長の承認を必須とすることで、ヒューマンエラーやなりすましへの対策にもなります。

(6)サプライチェーン全体でのセキュリティの連携

ソーシャルエンジニアリングによる被害は、自社だけで対策していても防ぎきれない場合があります。

その理由は、取引先や委託先といったサプライチェーン全体も攻撃の対象になるからです。

仮に、自社のセキュリティが万全だったとしても、連携先の管理が甘ければ、そこを経由して攻撃される可能性があるため、組織としてサプライチェーン全体でのセキュリティ強化を意識する必要があります。

たとえば、取引先企業の従業員がだまされて、本物そっくりのメールを自社に送ってくるケースや業務委託先の端末がマルウェアに感染し、自社ネットワークに侵入されるといった事例も発生しています。

こうした事態を防ぐためには、契約時にセキュリティ要件を明示する、委託先に対しても教育・訓練を行う、情報共有のルールを定めるといった取り組みが必要です。

(7)セキュリティ対策の定期的なチェックと改善活動

攻撃の手法は日々巧妙化しており、過去の対策が今も有効とは限りません。

脅威に備えるためには、一度策定したセキュリティ対策をそのままにせず、定期的にチェックし、必要に応じて改善を行うことが大切です。

たとえば、メールのフィルタ設定やアクセス権限の管理、ログ監視の体制など、技術的な対策が現在の業務に合っているかを確認しましょう。さらに、従業員への教育内容や通報ルールなど、人的な側面も合わせて検証することが重要です。

また、インシデントが実際に発生した際には、その原因や対応の流れを振り返り、再発防止策として見直すことも有効です。

外部の専門機関による診断や第三者視点での評価を取り入れることで、見落としを防ぐこともできるでしょう。

まとめ

今回は、ソーシャルエンジニアリングの基本的な仕組みから代表的な手口、実際に起きた被害事例、そして個人・組織それぞれが取るべき対策までを網羅的に解説しました。

ソーシャルエンジニアリングとは、技術的な攻撃ではなく、人の心理や行動の隙を突いて情報を引き出す手法であり、誰もが被害に遭う可能性があります。

こうした攻撃に対応するためには、日頃からの警戒心や正しい知識、そして具体的な対策が欠かせません。

企業や組織は、従業員教育やセキュリティポリシーの整備など、組織全体での取り組みが求められます。

また、個人レベルでも、メールや通話の確認、パスワード管理、情報の取り扱いに注意することで、被害を未然に防ぐことができます。

被害に遭わないためにも、今回の内容を参考に、日常の中でできることから対策を始めてみてください。

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