2026年5月7日

個人情報保護の国際規格であるISO27701の取得は、グローバル展開や取引先からの信頼獲得を目指す企業にとって、今や欠かせない戦略の一つとなっています。
なぜなら、2025年の大幅な改訂により、従来のISMSへの上乗せ(アドオン)だけでなく独立した規格としての取得が可能になり、各国の法規制に柔軟かつ包括的に対応できるようになったからです。
具体的には、GDPRへの準拠が求められる海外取引や、国内の競合他社との差別化を図りたい場面において、この国際認証は客観的な安全性の証明として極めて強力に機能します。
本記事では、ISO27701の取得が適している企業の特徴から、認証までの具体的な8つのステップ、そして運用を形骸化させないためのコツまで、最新情報を交えて簡潔に解説します。
1.どのような企業がISO27701を取得するのに適しているか?

ISO27701の取得は主に、以下のような課題や目的を持っている企業に適しています。
⑴取引先や顧客からの信頼確保を目指す企業
ISO27701は国際的基準を満たした個人情報保護に関する規格です。
この規格を取得することにより、組織のプライバシー情報マネジメントシステム(PIMS)が国際的な基準を満たしているということを対外的にアピールできます。
ISO27701について詳しくはこちらの記事で解説しています。
⑵競合との差別化を図りたい企業
日本国内ではプライバシーマーク(Pマーク)が広く知られていますが、その効力は国内限定です。
2025年の改訂版では独立した規格として取得できるようになったため、いち早く規格を取り入れることで
「プライバシー保護に積極的に取り組んでいる企業」として、競合との差別化を図ることができます。
⑶海外展開を積極的に進めている企業
ISO27701は国際的なプライバシー管理の基準となるため、グローバルにビジネスを展開する企業に向いています。たとえば、EUの「GDPR(一般データ保護規則)」など、各国の厳格な法規制に包括的に対応するための基盤づくりに役立ちます。
海外に支店や子会社を持っている企業や、これから海外市場へサービスを提供する企業にとって、各国の法令要件を満たす体制構築の明確な指針となります。また、海外の企業からクラウドサービスなどのデータ処理を委託される場合にも、スムーズな取引につながります。
2.ISO27701取得までの流れ8ステップ
ISO27701の認証を取得するまでには、現状の把握からシステムの構築、運用、外部審査まで、概ね以下の8つのステップで進みます。
⑴取得に向けた準備(適用範囲の決定や必要に応じてコンサルサポートを依頼)を行う
まずは、プロジェクトを牽引する社内体制の構築と、スケジュールの策定を行います。同時に、現在の自社の個人情報管理体制とISO27701の要求事項とを照らし合わせる「ギャップ評価(現状分析)」を実施します。
【このステップで行う主な実務】
- 適用範囲の決定
- 全社で取得するのか、特定の事業部などに限定するのかを明確にします。
- プロジェクトチームの編成
- 情報システム部門や法務部門などから担当者を選出します。
- 外部専門家の検討
- 自社のリソースのみで規格の要求を読み解くのが難しい場合、この段階でISOコンサルタントへの依頼を検討します。
⑵個人情報(PII)の特定とリスク評価
認証の対象範囲内で、どのような個人情報(PII:個人識別可能情報)を取り扱っているかを棚卸しします。
ISO27701の特徴として、自社が個人情報を決定・管理する「PII管理者」なのか、顧客の委託を受けてデータを処理する「PII処理者」なのかによって要件が変わるため、自社の立場を明確にすることが求められます。
棚卸し後は、それぞれのデータ処理プロセスに潜む情報漏洩や不正アクセスのリスクを分析・評価(プライバシー影響評価:PIA)し、対応策を検討します。
⑶ルールと文書の作成
リスク評価の結果をもとに、安全に運用するための具体的なルールを策定し、文書(マニュアルや規定、手順書)にまとめます。
システムの設計段階からプライバシー保護を組み込む「プライバシー・バイ・デザイン」や、初期設定で最も厳しい保護基準を適用する「プライバシー・バイ・デフォルト」といった原則を規定に反映させます。
文書を作成する際は、作成者や改訂履歴を管理し、常に最新版が現場で参照できる状態を保ちます。
現場の従業員が直感的に理解できるよう、難解な専門用語を避けた実用的な表現にすることが運用の定着につながります。
⑷運用
策定したマニュアルに沿って、実際にPIMS(プライバシー情報マネジメントシステム)を日々の業務へ組み込みます。
【運用フェーズの具体的な取り組み】
- 従業員教育の実施
- 全社または対象部門に向けて、新しいルールやプライバシー保護の基礎に関する研修を実施します。
- 本人からの請求対応
- データの開示や削除など、本人(データ主体)からの要求に規定通り対応するフローを実践します。
- 記録の作成
- 監査に備え、アクセスログや同意取得の履歴など、運用が正しく行われている証拠(記録)を残します。
⑸内部監査の実施
一定期間の運用後、ルール通りに業務が行われているかを社内でチェックする「内部監査」を実施します。
監査の客観性を保つため、「自分の所属部署は監査しない」といった独立性を確保した監査員を選任します。実際の業務記録や現場へのヒアリングを通じて問題点(不適合)が見つかった場合は、根本的な原因を究明し、改善策(是正処置)を実行します。
内部監査員の役割は、決して「粗探しをして担当者を責めること」ではありません。
「自分たちで決めたルール(マニュアル)通りに業務が行われているか」
「そのルールがISOの規格を満たしているか」を客観的な視点で確認し、組織の改善につなげることが最大の目的です。
⑹マネジメントレビューの実施
内部監査の結果や、個人情報に関する法規制の変更動向、日々の運用状況を経営層(トップマネジメント)へ報告します。
経営層はこれらの報告を受け、PIMS全体が自社のビジネス環境や方針に対して有効に機能しているかを総合的に評価します。そのうえで、「システムの改善に追加の予算や人員を割くか」「会社としてのプライバシー方針を見直すか」などを判断し、次回の運用サイクル(PDCA)へ反映させます。
⑺審査を受ける
外部の審査機関による審査を受けます。
審査は大きく2段階に分かれています。
- 一次審査(文書審査)
- 構築したマニュアルや規定類が、ISO27701の要求事項を網羅しているかを確認します。文書上の不備があればここで指摘を受けます。
- 二次審査(現地審査)
- 一次審査で確認したルールが、実際の現場で計画通りに運用されているかを評価します。従業員へのインタビューや、業務記録のサンプリング調査が行われます。
もし審査員から規格の要求を満たしていない点(不適合)の指摘を受けた場合は、定められた期限内に原因の分析と是正対応を行い、審査機関へ報告します。
⑻認証取得
審査機関から是正対応を含めて問題ないと承認されれば、ISO27701の認証が発行されます。
取得後もシステムの有効性を保つため、認証には「3年間」の有効期間が設けられています。組織は対外的な信頼を維持・向上させるため、定期的な審査をクリアしていく仕組みになっています。
- 維持審査(定期審査)
- 取得から1年後、および2年後に実施され、PIMSが適切に維持・運用されているかの一部を確認します。
- 更新審査
- 3年目の有効期限を迎える前に実施され、システム全体の有効性を総合的に再評価し、認証を更新します。
3.ISO27701をスムーズに取得するためのコツ
最後に、ISO27701の認証取得をスムーズに進めるためのコツを5つ、お伝えします。
- プライバシー保護の文書化と記録保持のポイントを明確に意識する
- 2025年のISO27701の改訂に対応する
- 審査のためだけに過剰な準備をしない
- 取得の意義を全社的にしっかり共有する
- 専門知識を持つコンサルタントに相談する
⑴プライバシー保護の文書化と記録保持のポイントを明確に意識する
1つめは「プライバシー保護の文書化と記録保持のポイントを明確に意識する」です。
ISO27701では、PII(個人識別可能情報)の処理に関する文書化と記録の保持が求められていますが、要求事項を正しく理解し、自社の実態に即した無理のない対応をすることが大切です。
過剰な文書化は、現場の業務を圧迫し、ルールの形骸化を招く恐れがあります。
【文書化と記録保持のポイント】
- 必要十分な文書化
- ISO27701で要求される事項は確実に文書化します。一方で、過剰なルール作りは業務の非効率化につながるため、実際の個人情報の取り扱いフローに即した必要最低限の情報に絞ります。
- 記録の保持要求の確認
- 同意の取得履歴やアクセスログなど、規格で明示的に求められる記録箇所を確認し、漏れなく対応します。ただし、必要以上の記録保持は管理コストを増大させるため注意が必要です。
- 帳票類の最適化
- 必要な帳票類を精査し、既存のISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の帳票と統合できるものは統合するなど、合理的な文書体系を構築します。
適切な文書化と記録保持を通じて、PIMS(プライバシー情報マネジメントシステム)の実効性を高めていきましょう。
⑵2025年のISO27701の大幅な改訂に対応する
2つめは「2025年のISO27701の大幅な改訂に対応する」です。
ISO/IEC 27701は、2025年10月14日に「ISO/IEC 27701:2025」として改訂版が発行されました。
【ISO27701改訂への対応のポイント】
- 最新版の規格を確認
- 認証取得を目指す際には、最新の2025年版規格に基づいて準備を進めます。旧版(2019年版)はISO27001のアドオン規格でしたが、新版からは独立したマネジメントシステム規格へと変更されているため、構築のアプローチが異なります。
- 取得パターンの選択
- 改訂により、単独取得、同時取得、アドオン取得といった複数のアプローチが可能になりました。自社の状況に最も適した効率的な手法を選択します。
- 余裕を持ったスケジュール
- 大幅な改訂直後は、新しい解釈への対応に時間がかかったり、審査機関の対応が混み合ったりする可能性があります。余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが重要です。
⑶審査のためだけに過剰な準備をしない
3つめは「審査のためだけに過剰な準備をしない」です。
審査に合格するためだけの表面的な取り組みは避けるべきです。日常の業務の中で、プライバシー情報マネジメントシステムを確実に運用することに注力します。
【審査対策で陥りやすい落とし穴】
- 審査用の書類の作成
- 審査のためだけに取り繕った運用記録(同意記録など)を用意するのは本末転倒です。日常的に使用し、記録している実際のデータを審査に提出するようにしましょう。
- 見せかけの運用
- 審査の期間だけルールを守るのは避けるべきです。日頃からプライバシー・バイ・デザインの原則を意識し、本物の管理体制を構築します。
- 数値合わせ
- リスクアセスメントの結果やインシデントの発生状況を意図的に隠蔽・調整する行為は厳に慎むべきです。正直にデータを報告し、課題があれば真摯に向き合って是正処置を行います。
審査のための取り組みではなく、現場主体の自主的な活動を推進していくことが大切です。それが、トータル的な費用対効果につながります。
⑷取得の意義を全社的にしっかり共有する
4つめは「取得の意義を全社的にしっかり共有する」です。
PIMSの構築は、個人情報を扱うすべての部門(営業、人事、マーケティング、開発など)の業務フロー見直しを伴うケースが多いため、組織全体での理解と協力のもとで進めていく必要があります。
特定の担当者のみで推進すると、現場から反発を受ける可能性が生じます。
【ISO27701取得の意義の共有方法】
- トップメッセージの発信
- 経営トップ自ら「なぜ今、世界基準のプライバシー保護が必要なのか」を語り、強いコミットメントを示します。トップダウンで取り組む姿勢を全社に示します。
- 方針の明文化
- プライバシー方針を明文化し、社内に広く共有します。個人情報を保護する経営姿勢を、端的な言葉で表現します。
- 現場の巻き込み
- 審査対応を一部のセキュリティ担当者に任せきりにするのは危険です。実際にデータに触れる現場の従業員の理解と協力を得ることが何より重要です。
- 教育・研修の実施
- PII(個人識別可能情報)の適切な取り扱いや、PIMSの仕組みを学ぶ研修を実施します。
社内全体に「なぜ、ISO27701を取得するのか」の意義が浸透していれば、業務フローの変化も受け入れやすくなります。
⑸専門知識を持つコンサルタントに相談する
5つめは「専門知識を持つコンサルタントに相談する」です。
ISO27701は各国のプライバシー法規制と密接に関わるため、経験豊富なコンサルタントのアドバイスは認証取得への近道です。
【コンサルタントに相談するメリット】
- 効率的な進め方の提案
- 自社の状況(ISMSの取得有無など)に合わせた効率的な進め方を提案してもらえます。無駄な手戻りを避け、スピーディーに認証取得を進められます。
- 文書作成のサポート
- PIMS特有の要件に対応した規定や手順書など、必要な文書の作成をサポートしてもらえます。社内工数を限りなくゼロに近づけることも可能です。
- 法規制への専門的な助言
- 複数国のデータ保護法(GDPRなど)に精通した専門家から、法令遵守を前提としたプライバシー管理の設計について支援を受けられます。
- 内部監査の支援
- 内部監査の進め方について指導を受けられます。監査のシミュレーションを実施してもらい、審査に向けた準備を万全にできます。
コンサルタントの活用によって、ISO27701の取得をより確実なものにできます。
ISO27701についてお悩みがありましたら認証パートナーへご相談ください。
4.まとめ
ISO27701は、顧客からの信頼確保や海外展開を見据える企業にとって、国際的なプライバシー保護基準を満たしていることを証明する有効な規格です。
2025年発行の改訂版(ISO/IEC 27701:2025)に対応することで、国内規格であるプライバシーマーク以上の差別化を図り、GDPRなどの各国の法規制へ適応する基盤を整えられます。
認証取得までは、適用範囲の決定からPII(個人識別可能情報)の特定、ルールの文書化、実運用、内部監査など、8つのステップを順序立てて進める体制が求められます。このとき、過剰な文書作成や審査のときだけルールを守るような運用を避け、日々の業務に無理なく定着させることがポイントです。
まずは経営層を含めた社内全体で取得の目的を共有し、自社のみでの対応に不安がある場合は専門知識を持つコンサルタントのサポートも検討しながら、実効性のあるPIMSを構築していきましょう。
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