2025年10月27日

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皆さんは、「品質保証」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
「品質保証」と聞くと、多くの企業担当者様は「複雑で難しい」と感じるかもしれません。厳格な検査や不良品の排除はもちろん重要ですが、実は、その品質保証の根幹には、もっとシンプルでありながら非常に重要な二つの考え方があります。
それが「識別」と「トレーサビリティ」です。
「識別」とは、製品やサービス、あるいはそれらを構成する材料や部品を、他と区別できるように明確にすること。
「トレーサビリティ」とは、製品の履歴や所在を追跡できる状態にすることを言います。
この二つを適切に実践することで、品質管理は格段に向上し、顧客からの信頼も深まることが期待できます。
なぜなら、これらはヒューマンエラーを防ぎ、万が一の不具合時にも迅速な対応を可能にし、企業の信頼性を高めるための基盤となるからです。
ここでは、ISO9001の視点も交えながら、「識別」と「トレーサビリティ」の重要性、具体的な実践方法、そして最新の動向までを、初心者の方にも分かりやすい言葉で解説していきます。
このコラムを読み終えていただければ、品質保証体制を強化するための具体的な目的意識と、すぐに実践できるヒントを把握していただけるはずです。
1. なぜ「識別」と「トレーサビリティ」が不可欠なのか?

(1)品質を追求する上で欠かせない「識別」と「トレーサビリティ」
「識別」と「トレーサビリティ」は、現代企業にとって、まるで「命綱」のように重要な機能です。
なぜなら、これらが適切に機能しなければ、顧客からの信頼を失うだけでなく、企業存続に関わる重大なリスクに直面する可能性があるからです。
製品の不具合は避けられないものですが、その影響を最小限に抑え、迅速に対応するためには、製品一つひとつの「素性」が明確である必要があります。
また、理解しておくと、3つのメリットが生まれます。
①ヒューマンエラー防止と業務効率化
製品や部品に明確な表示(製品名、ロット番号など)があれば、取り違えや誤使用を防ぎ、作業効率も向上します。
②不具合発生時の迅速な対応
万が一、製品に問題が見つかった際、トレーサビリティが確立されていれば、原因究明や影響範囲の特定が迅速に行えます。問題のある製品がいつ、どの材料で製造され、どこに出荷されたかが分かれば、回収範囲を最小限に抑えるなど、的確な対応が可能です。
③法令遵守と顧客要求への対応
食品や医薬品、自動車部品など、業界によってはトレーサビリティの確保が法的に義務付けられています。また、顧客から供給する際に全体でのトレーサビリティを求められるケースも増えており、これらに対応するためにも不可欠です。
(2)自動車メーカーでの具体例
例えば、ある自動車メーカーで、特定の時期に製造された部品に欠陥が見つかったとします。
もし部品に識別番号がなければ、どの車にその部品が使われたかを特定することは非常に困難です。
何百万台もの車を全てリコールするとなれば、天文学的なコストと企業イメージの失墜を招き、最悪の場合、倒産に至ることも考えられます。
しかし、製造日やロット番号といった「識別」情報が部品に付与され、「トレーサビリティ」によってどの車にその部品が搭載されたかが追跡できれば、対象車両を限定した効率的なリコールが可能となり、被害を最小限に食い止められます。
これは、食品業界での食中毒発生時や医薬品での副作用報告時にも同様に機能し、消費者の安全を守る上で不可欠なシステムなのです。
このように、「識別」と「トレーサビリティ」は、製品の品質を保証するだけでなく、企業が予期せぬ事態に直面した際の対応力を高め、長期的な企業価値と顧客からの信頼を維持するための、まさに「命綱」なのです。
2. ISO9001が求める「識別」と「トレーサビリティ」とは?
(1)ISO9001における「識別」と「トレーサビリティ」
ISO9001は、品質マネジメントシステムに関する国際規格であり、その要求事項の多くは、「識別」と「トレーサビリティ」に関連しています。
ISO9001は、企業が顧客の期待に応え、継続的に改善を行うための枠組みを提供します。
その中で、「識別」と「トレーサビリティ」は、製品の品質が偶然ではなく、意図されたプロセスと管理によって維持されていることを証明するための具体的な証拠となるからです。
品質を「見える化」し、もし問題が発生しても「なぜ」「どこで」起きたのかを明確にするための不可欠な要素だと考えているのです。
(2)ISO9001の要求事項
ISO9001の要求事項である8.5.2「識別およびトレーサビリティ」では、
「製品またはサービスがライフサイクルを通じて適切に識別され、必要に応じて追跡できるようにしなければならない」
出典元:ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項
と定めています。
これは、原材料の受け入れから、製造工程、検査、出荷、そして顧客の手元に届いた後まで、製品のあらゆる段階で「何であるか」を明確にし、「どこを辿ってきたか」がわかるようにすることを意味します。
また、7.1.5.2「測定のトレーサビリティ」では、製品の品質を測るための計測機器が、国際的に認められた基準に基づいて校正されていることを求めます。
(3)「信頼される品質」を確立するために
例えば「この製品は寸法精度が非常に高い」と主張する際に、その精度を測ったノギスやマイクロメーター自体が、国際的な基準に照らして正しく測れることを保証する、という考え方です。
これにより、品質に関するあらゆる判断やデータが客観的で信頼できるものとなり、企業間の取引や国際的な競争においても、その品質を証明できる強力な根拠となるのです。
このように、ISO9001が「識別」と「トレーサビリティ」を厳しく要求するのは、単なる認証のためではなく、企業がグローバルな舞台で通用する「信頼される品質」を確立し、その品質を客観的に証明するための最も基本的な、そして最も強力なツールであると位置付けているからです。
3.「識別」と「トレーサビリティ」を、いかに「スマート」に実践するか
(1)スマートに行う「識別」と「トレーサビリティ」
「識別」と「トレーサビリティ」の実践は、単なる手作業の積み重ねではありません。
現代では、情報システムやデジタル技術を「スマート」に活用することで、その精度と効率を飛躍的に向上させることが可能です。
大量生産が当たり前となった現代において、個々の製品や部品を手作業だけで追跡・管理することは非現実的です。
また、人為的なミスも避けられません。
そこで、デジタル技術の力を借りることで、膨大な情報を正確かつリアルタイムに処理し、必要な時にいつでもアクセスできる環境を構築することが、品質管理の最前線で求められているのです。
(2)核となるのは「ロット管理」と「シリアルナンバー管理」
実践において、「識別」と「トレーサビリティ」の核となるのは、製品群を管理する「ロット管理」と、製品個々を追跡する「シリアルナンバー管理」です。
ロット管理は問題発生時に影響範囲を素早く絞り込み、シリアルナンバー管理は高価な製品などの「一生涯の記録」を完全に追跡可能にします。
これらの管理は、統合基幹業務システム(ERP)や製造実行システム(MES)といった情報システムが支えており、原材料入荷から出荷までを自動記録し、不良品発生時などには関連情報を瞬時に引き出して、原因究明や再発防止策の迅速な立案に貢献するのです。
4. 「識別」と「トレーサビリティ」の最新動向
これらの分野も技術革新と共に進化しています。
- デジタル技術の進展
IoTでリアルタイムにデータを収集したり、改竄困難なブロックチェーンで情報の信頼性を高めたり、AIで膨大なデータを分析してリスク予測や品質改善に繋げたりする動きが活発です。 - サプライチェーン全体の可視化
グローバルで複雑化するサプライチェーンにおいて、全体のトレーサビリティを確保し可視化することは、企業の危機管理能力(レジリエンス)を高めます。 - ESG(環境・社会・ガバナンス)への貢献
製品ライフサイクル全体の環境負荷追跡や、人権に配慮したサプライチェーンの証明など、ESG経営の観点からもトレーサビリティの重要性が増しています。
5. まとめ
ISO9001における「識別」と「トレーサビリティ」は、製品やサービスの品質を保証し、顧客からの信頼を築くための根幹です。これらを適切に運用することは、ミスの防止、問題発生時の迅速な対応、法令遵守、そして企業の持続的な成長に繋がります。
デジタル化が進む現代において、これらの仕組みを常に最新の状態に保ち、改善し続けることが、企業競争力を高める上でますます重要になってきます。
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