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QCストーリーとは?定義や手順、失敗しないためのコツを現場目線で解説

2025年9月17日

QCストーリーとは?定義や手順、失敗しないためのコツを現場目線で解説

「QCストーリーってどういう意味?」

「何から始めればいいのだろう?」

QCストーリーとは、品質管理やQCサークル活動でよく使われる、問題を整理しながら解決していくための基本的な進め方です。

現場では、時間をかけても、やり方を間違えると改善がうまくいかず、「意味がなかった」と感じてしまうこともあります。

この記事では、QCストーリーの定義と基本的な流れ、よくある失敗まで解説します。

はじめての方も、うまくいかず悩んでいる方も、この記事を読めば自信をもってQC活動を進められるようになるでしょう。

1.QCストーリーとは

QCストーリーとは、品質管理やQCサークル活動で広く使われている、問題解決の基本的な考え方の手順です。

工場や職場で、仕事のやり方を見直したり、ミスや不良を減らしたりするために活用されています。

まず、何が問題なのかを明らかにし、その原因をしっかりと調べて、正しい対策を考えます。

そして、効果が出たかを検証し、良いやり方が続くように整えていきます。

このように、QCストーリーはただの思いつきや一時的な工夫ではなく、誰が見ても分かる形で、改善の流れを順番にまとめていく仕組みです。

とくにQCサークルでは、チームで話し合いながら進めるため、この手法を使うことで意見がまとまりやすくなり、無理のない改善につながります。

【補足】QCサークル活動とは

QCサークル活動とは、職場の中で少人数のグループを作り、仕事の質を良くするために行う自主的な改善活動のことです。

この活動では、決まったリーダーがいるわけではなく、皆が対等な立場で意見を出し合うことが大切にされています。

QCストーリーという手順を使って、原因の調べ方や改善の進め方を順番に整理することが多いです。

元々は工場などの製造現場で広まりましたが、今ではサービス業や医療の現場など、さまざまな職場でも活用されています。

2.QCストーリーの2つの型

日本科学技術連盟 によるとQC活動を進める上で活用される代表的な考え方には、大きく分けて以下の2つあります。

  • 問題解決型(現状問題解決型)
  • 課題達成型(目標達成型)

■QCストーリーの2つの型【比較表】

比較項目問題解決型(現状問題解決型)課題達成型(目標達成型)
使う場面すでに問題が起きているとき問題はないが、もっと良くしたいとき
出発点現場のトラブルや不良など、「困っていること」理想や目標、「こうなったらいいな」という思い
目的原因を調べて、正しく直すより高いレベルを目指して改善する
進め方の特徴「なぜ?」を繰り返しながら、根本の原因を突き止める現状との違いを見つけ、工夫や努力で目標へ近づく
テーマ例不良品を減らす、作業ミスを無くす作業時間を短くする、満足度を高める
活動の姿勢消極的(問題に対応)になりやすい積極的(より良くする)な気持ちで取り組む

ここからは、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

(1)問題解決型(現状問題解決型)

問題解決型は、すでに発生している不具合やトラブルを取り除くために使うQCストーリーの基本的な型です。

「目の前の困りごとをどう直すか」に絞って考えるため、はじめての改善活動でも取り組みやすいのが特徴です。

この型では、まず現場で何が起きているのかを数字や事実で調べ、それから原因を深く分析して、正しい対策を計画します。

ただ何となく直すのではなく、流れにそって少しずつ原因をつぶしていくので、失敗しにくく、再発も防ぎやすくなります。

たとえば「製品の不良が多い」「伝票の記入ミスがよく起きる」といった、目に見える問題があるときに、この型を使うと効果的です。

「なぜ起きたのか」「どこに原因があるのか」を一つずつ見直すことで、現場の力でしっかりとした改善ができるようになります。

(2)課題達成型(目標達成型)

課題達成型とは、現時点で大きな問題が起きていなくても、さらに良い状態を目指して取り組むQCストーリーの型です。

問題の解決ではなく、「どうすればもっと良くなるか」を考える場面で使われます。

この型では、まず達成したい目標を決めるところから始まります。

例えば、「作業時間を短くしたい」「顧客の満足度をもっと高めたい」といった、職場の中にある「こうなったらいいな」という気づきが出発点です。

その後で、現状との違いを調べ、どうすれば理想に近づけるかを考えていきます。

具体的には、すでに上手くいっている方法をさらに工夫したり、小さな手間やムダを見つけて、少しずつ改善したりするような活動が当てはまります。

3.QCストーリーの構成7ステップ

QC活動を効果的に進める方法として、以下の7つの手順があります。

  1. テーマの選定
  2. 現状の把握
  3. 目標の設定
  4. 要因の解析
  5. 対策の立案と実施
  6. 効果の確認
  7. 標準化と管理の定着

ステップを順番に進めることで、問題の本質を見極め、無理のない実行と確実な定着につなげることができます。ひとつずつ見ていきましょう。

(1)テーマの選定

QCストーリーを始める際に、最初に行うのがテーマの選定です。

これは、「どの問題や課題に取り組むのか」を決める大切な手順になります。

もしテーマが曖昧だったり、現場の実情に合っていなかったりすると、その後の活動の方向もぶれてしまい、正しい改善につながりません。

そのため、テーマは自分たちの職場にとって本当に必要な内容を選ぶことがポイントです。

普段の仕事の中で感じている「困っていること」や「もっと良くしたいこと」をチームで話し合いながら、できるだけ具体的に言葉にしていくことが大切です。

また、取り組むことで効果が見えやすく、みんなが前向きに動けるテーマを選ぶことも成功のコツです。

たとえば、「不良を減らす」「時間のムダをなくす」といった、現場にとって身近で実行しやすいものから選んでみるとよいでしょう。

(2)現状の把握

現状の把握とは、今どんな問題が起きているのかを、数字や事実をもとに正しく知ることです。

思い込みや感覚ではなく、目に見える情報で現状を正確につかむことが大切です。

例えば「不良が多い」と感じていても、実際にどのくらい発生しているのか、いつ・どこで起きているのか、どの作業で多いのかなど、具体的な情報を集めなければ、正しい対策は立てられません。

ここでは、グラフや表、パレート図などを使って見える形にまとめ、問題の全体像をチーム全員が同じように理解できるようにすることが重要です。

また、現状を把握することで、「どこが一番大きな原因なのか」や、「どこから手をつけると効果が出やすいか」といった判断もしやすくなります。

(3)目標の設定

目標の設定とは、改善の結果として「どうなっていたいか」を具体的に決めることです。

これはQCストーリーを進める上で、とても重要なステップになります。

目標がはっきりしていないと、活動の方向がぶれてしまい、努力しても「どこまでやればよいか」がわからなくなってしまいます。

そのため、目標はできるだけ数値で表し、達成できる範囲で設定することが大切です。

例えば、「不良率を5%から2%に下げる」「作業時間を月20時間へ短縮する」といったように、誰が見ても判断できる内容にすると、チーム全体での共有もしやすくなります。

また、無理のない目標にすることで、現場の人も前向きに取り組めるはずです。

高すぎる目標は、返って意欲を下げることもあるため注意が必要です。

(4)要因の解析

ここでは、問題がなぜ起きているのか、その本当の原因を見つけ出すための大切なステップです。

表面だけを見て対策を立ててしまうと、すぐにまた同じ問題が起きてしまうかもしれません。

そこで、特性要因図やなぜなぜ分析などを使い、見えにくいところにある原因を少しずつ見つけていきます。

例えば、不良が多いという結果があった場合でも、実際には道具の使い方、作業の手順、環境の悪さなど、いくつかの原因が重なっていることがあります。

原因は一つとは限らないため、関係する人と話し合いながら整理することが大切です。

また、思い込みではなく、できるだけ事実やデータにもとづいて考えるようにしましょう。

(5)対策の立案と実施

ここでは「何をするか」だけでなく、「誰が、いつ、どのように行うか」までしっかりと決めることが大切になります。

原因がわかっても、正しい対策を考えられなければ、問題は解決しません。

また、良い案でも実行しにくい内容では、現場では続かないことがあります。そのため、できるだけ効果があり、実行もしやすい方法を選ぶことがポイントです。

例えば「作業手順を見直す」「点検のタイミングを変える」「教育を追加する」など、改善につながる案をいくつか出して、チームで話し合ってから決めるとよいでしょう。

さらに、実施する際は、誰が担当するのか、どの順番で進めるのかを具体的にしておくと、スムーズに行えます。

一度、実施したら終わりではなく、進み具合を確認する方法も合わせて決めておきましょう。

(6)効果の確認

効果の確認では、実施した対策によって、問題がどれだけ良くなったのかを確かめていきます。

せっかく時間と手間をかけて対策を実行しても、その結果がはっきりしなければ、改善が成功したのかどうか判断できません。

そこで、対策の前と後で数値やグラフを使って比較し、不良の数や作業時間などがどれだけ変化したかを整理します。

数字で結果を示すことで、チーム内でも共通の理解が生まれやすくなり、「やってよかった」という実感にもつながります。

また、対策の効果が一時的なものでないか、安定して続いているかどうかもあわせて見ておくことが必要です。

もし目標に届いていなければ、追加の対策や見直しも考える必要があります。

(7)標準化と管理の定着

最後は、改善の結果をその場限り終わらせず、良い状態を長く続けるための仕組みをつくっていきます。

対策が上手くいっても、その後に元に戻ってしまえば意味がありません。

標準化と管理の定着に必要な取り組みは以下のとおりです。

■標準化と管理の定着に必要な取り組み

  • 成功した方法やルールを文書にまとめる:作業手順や改善内容を「標準」として明文化しておく。
  • マニュアルや図でわかりやすく整理する:新しいやり方がひと目で理解できるように、図や写真を活用する。
  • 誰でも同じようにできるように教育を行う:作業者ごとのやり方の違いをなくすため、研修やOJTで統一する。
  • チェック体制をつくって、守られているかを確認する:点検表や確認リストを使い、標準が守られているかを定期的に確認する。
  • 改善内容の定着を目指し、管理方法も仕組み化する:担当者やタイミングを明確にして、続けやすい管理体制にする。

このような管理の仕組みがあることで、改善を守り、次につなげることができます。

4.QCストーリー実施時にやりがちな7つの落とし穴

QC活動を進める中でつまずきやすい注意点は、大きく分けて以下の7つです。

  1. テーマが曖昧だと後工程がすべてブレる
  2. 現状把握が主観や憶測に偏っている
  3. 目標が抽象的または達成不可能
  4. 要因分析が浅く対策が表面的になる
  5. 対策の実施が難しく現場で対応できない
  6. 効果検証が不十分でやったつもりで終わる
  7. 標準化やフォローが抜けて再発する

これらに気づかずに進めてしまうと、せっかくの改善活動がうまくいかず、成果が出なかったり、再発を招いたりする恐れがあります。

初めて取り組む方にもわかりやすい内容になっていますので、ぜひ事前の確認に役立ててください。

(1)テーマが曖昧だと後工程がすべてブレる

最初に決めるテーマが曖昧だと、その後の工程すべてがずれてしまう大きな原因になります。

例えば、「作業ミスを減らしたい」というテーマだけでは不十分です。

どの作業で、どんなミスが、どれだけの頻度で起きているのかを明確にしなければ、本当に取り組むべき課題が見えず、対策も効果のないものになってしまいます。

テーマはできるだけ具体的にし、数字や事実をもとにして内容を絞り込むことが大切です。

■テーマ例

曖昧な表現より具体的なテーマ例
作業ミスを減らしたい出荷工程における伝票貼り間違いの削減
不良品が多い成形工程で発生する寸法不良(2mm超過)の削減
クレームが増えて困っている商品誤配送による月間クレーム件数(5件)を2件以下に減らす

また、チーム全員が同じ認識で活動を進められるよう、目的と背景を共有しておくことも忘れないようにしましょう。

(2)現状把握が主観や憶測に偏っている

現状の把握が主観や思い込みに偏ってしまうと、その後の分析や対策が的外れになる恐れがあります。

「たぶん、こうだろう」「いつもこの作業でミスが起きているはず」などの感覚だけで判断すると、本当の問題の原因を見失ってしまいます。

現状を正しく把握するためには、実際の作業データや記録を集め、目に見える形でまとめることが必要です。

例えば、不良が起きた回数やその発生場所、時間帯、作業者などを表やグラフにすることで、問題の傾向や特徴がはっきりと見えてきます。

このような客観的な情報に基づいて状況を整理すれば、その後の要因解析や対策も具体的かつ効果的に進めやすくなります。

(3)目標が抽象的または達成不可能

目標が曖昧だったり、実現が難しい内容になっていると、活動の方向性がぶれてしまいます。

例えば「作業を楽にしたい」「不良を減らしたい」といった表現では、どのくらい改善すればよいのかがわからず、チーム全体の意識もそろいません。

このような状況を防ぐためには、誰が見ても明確で、測定できる数値目標(SMART)を設定することが重要です。

SMARTとは、「具体的・測定可能・達成可能・現実的・期限を決める」という考え方です。

たとえば、「不良率を現在の5%から、3か月以内に3%以下に下げる」といったように、目標を数字で示し、達成条件や期限をはっきりさせることで、活動の成果も見えやすくなります。

また、目標が高すぎると、現場のやる気をなくしてしまうことがあるため、「少しがんばれば届く」現実的なレベルに設定することも大切なポイントです。

(4)要因分析が浅く対策が表面的になる

要因の分析が浅いままだと、本当の原因にたどりつけず、対策もその場しのぎになってしまいます。

表面に見えている現象だけを見て判断すると、繰り返し同じ問題が起きるかもしれません。

例えば、「作業ミスが多いのは注意が足りないから」という考えだけで対策を立ててしまうと、「注意喚起のポスターを貼る」「声かけを増やす」といった、効果が一時的な方法にとどまってしまいます。

しかし、ミスの本当の原因は、作業手順がわかりにくいことや、道具の配置が悪いことかもしれません。

このように、「なぜそうなったのか?」を何度も繰り返し、深く掘り下げることが根本的な改善には欠かせません。

特性要因図やなぜなぜ分析を使って、チームで話し合いながら原因を絞っていくことが大切です。

(5)対策の実施が難しく現場で対応できない

QCストーリーを進める中で、考えた対策が現場でうまく実行できないという事例は少なくありません。

どれほど理にかなった案であっても、実際に動かせなければ意味がなく、改善は続かなくなってしまいます。

例えば、「新しい装置を導入する」「作業ラインを大きく変更する」といった対策は、見た目には効果的でも、費用が高くついたり、作業者に負担がかかったりするため、返って現場に混乱を生む恐れがあります。

このような事態を防ぐためには、理想論ではなく、実行可能な対策かどうかを見きわめることが重要です。

具体的には、現場の視点から「対応できる手間や時間か」「予算の中でできるか」「定着する見込みがあるか」といった負荷・コスト・実行力のバランスを事前に確認する必要があります。

■実行可能な対策かを確認するチェックポイント

  • 手間・時間:作業者の負担が増えていないか、普段の作業時間内で対応できるか
  • コスト(予算):設備や材料に追加の費用が必要か、今の予算内で賄えるか
  • 定着のしやすさ:一度だけでなく、長く続けられる内容になっているか
  • 現場の理解と協力:作業者が納得して取り組める内容か、無理な変更になっていないか

また、対策を立てる段階で現場の意見を取り入れることで、無理のない改善につながりやすくなります。

(6)効果検証が不十分でやったつもりで終わる

効果の確認が曖昧なままだと、やったつもりで終わってしまい、改善の成果がはっきりしなくなります。

せっかく時間をかけて取り組んでも、変化を客観的に示せなければ、評価も共有も難しくなります。

例えば、「前より良くなった気がする」「現場の雰囲気がよくなった」などの感覚だけでは、本当に改善できたのかがわかりません。

そのためには、ビフォー・アフターの定量データで効果を客観的にみることが重要です。

対策を行う前と後で、不良件数、作業時間、クレーム件数などを数字で記録し、グラフや表にまとめることで、誰が見ても成果が伝わりやすくなります。

また、一時的な効果だけでなく、一定期間の継続的なデータを見て、安定した改善かどうかも確認しておくことが大切です。

(7)標準化やフォローが抜けて再発する

QCストーリーで対策を行った後に、標準化やフォローを疎かにすると、せっかく改善した内容が続かず、同じ問題が再発してしまうことがあります。

一時的に効果が出ても、現場で元のやり方に戻ってしまえば、改善は失敗といえます。

例えば、新しい手順を導入したのに、その内容が文書にまとめられていなかったり、関係者全員にしっかり共有されていなかったりすると、知らないうちに以前のやり方に戻ってしまうでしょう。

また、標準化をし終わったつもりになり、点検や教育などのフォローを行わなければ、時間の経過とともにルールが形だけになり、再びミスや不良が発生する恐れがあります。

こうした再発を防ぐためには、改善内容を仕組みとして定着させることがゴールであると考えることが大切です。

マニュアルやチェックリストなどで誰もが同じやり方をできるように整え、定期的に確認や教育を行うことで、改善の成果を長く保つことができます。

5.まとめ

今回は、QCストーリーについて、その定義から基本的な進め方、よくある失敗例とその対策まで解説しました。

QCストーリーは、品質管理やQCサークル活動において、問題を論理的に整理し、効果的に解決へと導くための基本的な手順です。

テーマ設定や現状把握、要因分析から対策、効果の確認、標準化までの流れを正しく踏むことで、活動の成果を確実に残すことができます。

本記事を参考に、QCストーリーの基本を押さえつつ、自社に合った改善活動の一歩を踏み出してみてください。

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