予防処置とは?初心者でも理解できる意味や取り組む際のポイントまで完全解説
2025年10月28日

目次
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- 1.予防処置とは
- (1)予防処置と是正処置の違い
- (2)ISO9001:2015で「予防処置」という用語が削除された理由
- (3)ISO9001:2015での「予防」の扱い
- 2.実務における予防処置の取り組み方
- (1)リスクの特定と評価から始める
- (2)FMEAやリスクマトリクスなどのリスク分析手法を活用する
- (3)教育・訓練を通じた人的エラーの予防
- (4)プロセス改善による継続的な予防処置の実践
- (5)予防処置の効果検証と継続的改善につなげる
- 3.リスクベースでの予防管理と文書化の方法
- (1)リスクと機会への取り組みはどう文書化すべきか?
- (2)リスク対応策の記録は義務ではない
- (3)文書化しない場合の審査対応は?
- 4.まとめ
「予防処置って、結局何をすればいいの?」
「ISOで『予防処置はもういらない』と聞いたけど、本当?」
結論からお伝えすると、予防処置は「起こる前のリスクを見つけて、計画的に対応すること」です。
ただし、ISO9001:2015では「予防処置」という言葉は使われなくなり、その代わりに「リスクに基づいた対応」が求められるようになりました。
この記事では、なぜ予防処置という用語が消えたのか、どのように考えればいいのか、そして実務ではどんな行動が必要なのかを解説します。
この記事を読み終える頃には、予防処置への不安が解消され、現場対応や審査準備にも落ち着いて取り組めるようになります。
ISO担当者や品質管理の初心者の方にもわかりやすい内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
1.予防処置とは

予防処置とは、問題が発生する前にその原因や兆しを見つけ出し、事前に対策を講じることで、将来のトラブルを防ぐ取り組みです。
具体的には、過去の事例や業務の中に潜むリスクや課題を洗い出し、あらかじめ手を打っていきます。
例えば、「作業ミスが起こりそうな手順に注意喚起を追加する」「機械が故障する前に定期点検を行う」などが該当します。
つまり、予防処置は不具合やトラブルを未然に防ぐための前向きな仕組みで、品質管理や業務改善を進める上で欠かせない考え方なのです。
(1)予防処置と是正処置の違い
予防処置と是正処置は、どちらも問題に対応する方法ですが、目的とタイミングが異なります。
| 項目 | 予防処置 | 是正処置 |
| 対象 | まだ起きていない問題 | すでに起きてしまった問題 |
| 目的 | 将来のトラブルを未然に防ぐこと | 同じトラブルが再び起きないようにすること |
| タイミング | 問題が発生する前 | 問題が発生した後 |
| 例(作業現場) | ミスが起こりそうな作業に注意書きを追加する | ミスが起きた後に作業手順を見直す |
| アプローチの方向性 | 未来への備え(予防) | 過去への対応(修正) |
予防処置は「これから起こるかもしれない問題」を防ぐための対策であり、是正処置は「すでに起きた問題」に対して再発を防ぐための行動です。
例えば、ミスが起きそうな作業に注意書きを加えるのが予防処置であり、実際にミスが発生した後に作業手順を見直すのが是正処置です。
どちらも品質を守る上で大切ですが、未然に防ぐか、再発を防ぐかという違いがあります。
(2)ISO9001:2015で「予防処置」という用語が削除された理由
ISO9001:2015では、以前の規格にあった「予防処置」という用語が削除されました。
理由としては、品質マネジメント全体に「リスクを意識した予防の考え方」が組み込まれたため、個別の項目として扱う必要がなくなったからです。
これまでは、発生していない問題に対して予防処置として別枠で管理することが必要でした。
しかし、現場では是正処置との混同や形だけの対策が増え、実効性が薄れていたのも事実です。
そこで2015年版では、「予防は全体の仕組みに当然含まれるべき」と再定義され、より自然で実践的な形で予防が行えるようになりました。
(3)ISO9001:2015での「予防」の扱い
ISO9001:2015では、「予防」という言葉は使われていないものの、その考え方は「リスク及び機会への取り組み」として体系的に組み込まれています。
つまり、業務のあらゆる場面でリスクを見つけ、適切な対策を講じることが予防につながるということです。
この考え方は、6.1項「リスク及び機会への取組み」に明記されており、組織はプロセスの計画段階からリスクを意識し、行動に移すことが求められています。
2.実務における予防処置の取り組み方
予防処置の取り組み方に関するポイントは、大きく分けて5つあります。
- リスクの特定と評価から始める
- FMEAやリスクマトリクスなどのリスク分析手法を活用する
- 教育・訓練を通じた人的エラーの予防
- プロセス改善による継続的な予防処置の実践
- 予防処置の効果検証と継続的改善につなげる
それぞれのステップについて、わかりやすく解説していきます。
(1)リスクの特定と評価から始める
予防処置で最初に行うべきは、リスクを明確にすることです。
どのような問題が将来起こるかを考え、それが発生した場合にどの程度の影響を与えるかを評価することが大切です。
例えば、作業手順が複雑で間違いやすい、機械が古くて故障しそうといった気づきを見逃さず、あらかじめ対応策を考えておくことが重要です。
また、影響の大きさや発生の可能性を数値やランクで表すと、関係者と共有しやすくなります。
このように、リスクの洗い出しと評価をしっかり行うことで、予防処置の精度が高くなります。
(2)FMEAやリスクマトリクスなどのリスク分析手法を活用する
リスクをより客観的に分析するには、専門的な手法を活用することが効果的です。
代表的な方法として「FMEA(故障モード影響解析)」や「リスクマトリクス」があります。
FMEAは、どのような失敗が起こり得るかを具体的に書き出し、それぞれの発生頻度や影響度、そして、発見の難しさを点数化することで、優先順位をつけて対策を計画する方法です。
一方、リスクマトリクスは、リスクを影響の大きさと発生の可能性の2軸で分類し、視覚的に管理しやすくします。
このような手法を使うことで、属人的な判断に頼らない予防処置が実行できるようになります。
(3)教育・訓練を通じた人的エラーの予防
人的ミスは多くの不具合の原因となるため、予防処置として「教育・訓練」はとても効果的です。
作業者がルールや手順を正しく理解していなければ、どんなに仕組みを整えてもミスは起こってしまいます。
そこで、新人研修だけでなく、定期的な再教育や実地訓練を取り入れることが大切です。
また、手順書を誰にでも読みやすく改善したり、実際の作業現場でのロールプレイを行うことで、理解が深まりやすくなります。
つまり、教育は単なる知識の伝達ではなく、ミスを起こさない行動を身につける場として考えることが重要です。
(4)プロセス改善による継続的な予防処置の実践
予防処置は一度きりで終わらせるものではなく、日々の業務の中で継続的に見直しましょう。
そのために効果的なのが、プロセス改善を取り入れることです。
プロセス改善とは、仕事の進め方や手順(=プロセス)を見直し、より効率的・効果的にする取り組みのことです。
例えば、作業の無駄をなくす、手順を簡素化する、チェックポイントを追加するといった工夫によって、トラブルが起こる前に流れそのものを改善できます。
このような改善は、小さな気づきや現場の声から生まれることが多いため、意見を出し合える風通しのよい環境づくりも欠かせません。
(5)予防処置の効果検証と継続的改善につなげる
予防処置はやることが目的ではなく、効果が出るかどうかが本質です。
そのため、実施した対策が本当にリスクを減らしたのかを検証するステップが欠かせません。
例えば、作業ミスが減ったか、トラブルの再発がないかなどを数値や記録で確認し、必要であれば再び対策を見直すことが重要です。
また、効果があった施策は標準化し、他の部署にも展開することで、全体のレベルアップにつながります。
3.リスクベースでの予防管理と文書化の方法
リスクベースでの予防管理と文書化の方法について、注目すべき箇所は以下の3つです。
- リスクと機会への取り組みはどう文書化すべきか?
- リスク対応策の記録は義務ではない
- 文書化しない場合の審査対応は?
この考え方を知らずに運用してしまうと、リスクへの対応が曖昧になったり、審査での説明に苦労したりすることになりかねません。
文書化や審査対応に不安のある方は参考にしてみてください。
(1)リスクと機会への取り組みはどう文書化すべきか?
リスクと機会への取り組みは、言葉でまとめ、関係者と共有できる形で文書化しておくことが望ましいです。
文書化の義務はありませんが、対応の一貫性や説明の責任を果たす上で、記録を残すことが実務上の安心材料になります。
文書の形式は自由ですが、以下のような要素を含めると効果的です。
- どのようなリスクと機会を想定したか
- どのような対応を計画したか
- 実施状況や評価方法は何か
- 誰が対応するか、期限はいつか
組織としての考え方や判断の根拠を示すためにも、記録に残しておくことをおすすめします。
(2)リスク対応策の記録は義務ではない
ISO9001:2015において、リスクへの対応策を「必ず記録しなければならない」とまでは規定されていません。
6.1項では、リスクと機会に対応することは求められていますが、その方法や文書化の形は各組織の判断に委ねられています。
つまり、リスクにどう対応したかを記録すること自体は義務ではなく、組織の運用方針に応じて柔軟に対応できるのが特徴です。
ただし、記録がない場合、外部審査や社内説明の際に「本当に対策を考えていたのか?」という疑問を持たれることがあります。
つまり、記録が義務ではなかったとしても、実務上は残しておいたほうが説明がしやすく、対応の抜け漏れ防止にも役立ちます。
(3)文書化しない場合の審査対応は?
リスクや機会への対応を文書化していない場合でも、審査で不適合になるとは限りません。
しかし、審査員から「どのようにリスクを判断し、どのように対応しているか」を問われた際に、口頭で的確に答える準備が必要です。
その際には、担当者の経験やプロセス上の判断が明確であること、必要な対策が現場で実行されていることなどを具体的に示す必要があります。
そのため、あらかじめシンプルな文書を用意しておくことで、説明の手間を減らし、審査への対応力も高めることができるでしょう。
4.まとめ
今回は、予防処置について、その基本的な意味からISOにおける位置づけ、実務での取り組み方や文書化の注意点まで解説しました。
予防処置とは、問題が起こる前にリスクを見つけて対策を立てることで、トラブルや不適合を未然に防ぐための重要な考え方です。
ISO9001:2015では「予防処置」という用語は使われなくなりましたが、「リスクに基づく考え方」としてその本質は今も求められています。
この記事を参考に、予防処置の正しい理解と実務への落とし込み方を身につけ、自社の品質管理やISO対応に活用していただければ幸いです。
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