2025年9月26日

目次
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- 1.IEC規格とは
- (1) IEC規格が適用される主な分野
- (2) IEC規格の目的
- (3)IEC規格とISO規格の違い
- 2.IEC規格の主な分類と概要
- (1)安全性に関するIEC規格
- (2)性能・機能に関するIEC規格
- (3)環境適合性に関するIEC規格
- (4)分野別の専門IEC規格(医療機器・情報通信・家電など)
- (5)ISOと共同策定されたIEC規格(ISO/IEC規格)
- 3.IEC規格に準拠する5つのメリット
- (1)製品の国際的な信頼性と安全性の向上
- (2)海外市場への参入が容易になる
- (3)国際的な法規制や取引条件への適合
- (4)製品品質や性能の一貫性確保
- (5)企業ブランド価値と競争力の向上
- 4.IEC規格に準拠する5つのデメリット
- (1)規格取得や試験にかかるコストの負担
- (2)認証取得までの時間と手続きの複雑さ
- (3)製品設計や開発の自由度の制約
- (4)規格改定への継続的な対応への負担
- (5)市場や製品によっては過剰品質になる可能性も
- 5.IEC規格取得までの6ステップ
- (1)対象製品に適用されるIEC規格の特定
- (2)規格文書の入手と要件の確認
- (3)製品設計と試作段階での規格適合への対策
- (4)試験機関による適合性試験の実施
- (5)認証申請と審査手続き
- (6)認証取得後の規格適合の維持
- 6.まとめ
「そもそもIEC規格とは何かが分からない」
「海外で販売するにはどの規格に合わせればいいのか知りたい」
結論から言うと、IEC規格は国際的に通用する製品の安全性・性能・環境適合性などを保証する基準です。
適切に理解して取得すれば、海外市場への信頼性向上や取引拡大につながります。
なぜなら、IEC規格は世界中で共通の「安全と品質の物差し」として扱われ、各国での追加認証や規制への対応に円滑に対応する役割を持つからです。
これを知らずに開発や販売を進めると、後から大きな修正やコストが発生し、計画が遅れてしまうかもしれません。
この記事を読むことで、あなたの製品や事業にとってIEC規格が必要かどうか判断でき、取得までの流れと準備すべきポイントが明確になるはずです。
1.IEC規格とは

IEC規格とは、国際電気標準会議が制定する電気・電子分野の国際的な基準です。
この規格は、製品やシステムの安全性、性能、互換性を確保することを目的としており、世界中の企業や市場で採用されています。
制定には各国の専門家が参加し、最新の技術や安全要件が反映されます。
こうすることで、異なる国や地域でも共通の基準で製品を評価できるため、国際取引や技術協力が円滑に進めることができます。
つまり、IEC規格は単なる技術指標ではなく、製品の信頼性や品質を担保する重要な役割を持っているのです。
(1) IEC規格が適用される主な分野
IEC規格は、家電、情報通信機器、医療機器、産業用機械、発電設備など、多岐にわたる分野で活用されています。
分野ごとの特徴とIEC規格の役割は以下の通りです。
| 分野 | 主な対象 | 規格の目的・内容 |
| 家庭用電気製品 | 電子レンジ、冷蔵庫、掃除機など | 感電や発火を防ぐための安全基準を設定し、使用時の事故を防止する |
| 医療機器 | 心電計、MRI、人工呼吸器など | 患者や医療従事者の安全を確保し、医療現場での信頼性を保証する |
| 情報通信機器 | パソコン、ルーター、通信機器 | 機器間の互換性やデータ通信の信頼性を確保し、安定した通信環境を提供する |
| 発電設備・産業機械 | 発電機、工場用ロボット、工作機械 | 耐久性や環境適合性を評価し、長期的な稼働と環境負荷低減を実現する |
分野ごとの規格は、それぞれの用途やリスクに合わせて設計されており、適用範囲は非常に広くなっています。
これにより、安全で高品質な製品が世界中に供給されています。
(2) IEC規格の目的
IEC規格の最大の目的は、製品やシステムの安全性と品質を国際的に保証することです。
この規格により、利用者が安全に製品を使用できる環境を作り出し、事故や故障を防ぐことが可能になっています。
また、製品間の互換性や共通仕様を確立することで、異なるメーカーや国の製品でも連携できるようになります。
さらに、国際取引の円滑化も重要な目的となっており、同一の規格に準拠することで認証や検査の重複を避けられます。
総じて、IEC規格は安全性、互換性、効率性を高めるための基盤となっているのです。
(3)IEC規格とISO規格の違い
IEC規格とISO規格はどちらも国際規格ですが、対象とする分野が異なります。
両者の違いを比較すると以下のようになります。
| 項目 | IEC規格 | ISO規格 |
| 主な対象分野 | 電気・電子分野に特化 | あらゆる産業分野を対象 |
| 代表的な基準内容 | 感電防止、過熱防止、通信の互換性など | 品質管理、環境管理、安全管理など幅広い領域 |
| 特徴 | 技術面・安全面の専門基準が多い | 産業全般で利用される総合的な基準が多い |
| 活用例 | 家電製品、情報通信機器、医療機器、産業用機械など | 製造業、サービス業、環境マネジメント、品質保証など |
IEC規格は電気・電子分野に特化しており、感電防止、過熱防止、通信の互換性などの基準を含みます。
一方、ISO規格は製造業やサービス業など、あらゆる産業分野を対象としており、品質管理や環境管理など幅広い領域をカバーします。
また、両者は協力関係にあり、電気分野では「ISO/IEC」として共同で規格を発行する場合も多くあります。
この違いを理解することで、自社製品やサービスに適用すべき規格を正しく選べるでしょう。
2.IEC規格の主な分類と概要
IEC規格にはさまざまな分類があり、以下のように分けることができます。
- 安全性に関するIEC規格
- 性能や機能に関するIEC規格
- 環境適合性に関するIEC規格
- 分野別の専門IEC規格(医療機器・情報通信・家電など)
- ISOと共同策定されたIEC規格(ISO/IEC規格)
それぞれの分類と特徴について、わかりやすく説明していきます。
以下の一覧表と合わせてご覧いただくと、理解も深まるでしょう。
| 分類 | 規格番号・シリーズ | 主な対象 | 内容・特徴 |
| 安全性に関するIEC規格 | IEC61010 | 測定機器・制御機器 | 感電防止のための絶縁構造、接地、耐電圧試験の基準 |
| IEC60335シリーズ | 家庭用電気製品 | 過熱・発火防止、温度上限、異常時の安全遮断機能、耐久性試験 | |
| IEC60204-1 | 産業用機械 | 緊急停止装置、配線保護、操作パネル安全設計、作業時の安全確保 | |
| 性能・機能に関するIEC規格 | IEC60068シリーズ | 全般 | 高温・低温・湿度・振動など環境条件での性能試験 |
| IEC61709 | 全般 | 長期使用時の耐久性・信頼性評価、故障率予測 | |
| IEC62031など | LED照明など | エネルギー効率、省電力性能の測定・設計条件 | |
| 環境適合性に関するIEC規格 | IEC62321 | 電気・電子製品 | 有害物質(鉛・水銀・カドミウム等)含有量測定、環境規制対応 |
| IEC62635 | 電気・電子製品 | リサイクル可能部品・材料の割合算定、再利用しやすい設計促進 | |
| IEC60068シリーズ | 全般 | 耐環境性試験(高温・低温・湿度・振動・衝撃・塩水噴霧など) | |
| 分野別の専門IEC規格 | IEC60601シリーズ | 医療機器 | 電気安全、機械強度、電磁両立性など多方面の安全要件 |
| IEC60950 / IEC62368 | 情報通信機器・AV機器 | 感電・発火防止、リスク評価に基づく安全設計 | |
| IEC60335シリーズ | 家電製品 | 家庭用機器の感電・火災防止、安全機能、耐久試験 | |
| ISOと共同策定されたIEC規格(ISO/IEC) | ISO/IEC27000シリーズ | 情報セキュリティ | ISMS構築・運用・改善、リスク評価、アクセス制御など |
| ISO/IEC20000シリーズ | ITサービス | ITサービスマネジメントの品質・効率向上 | |
| ISO/IEC10646 | プログラミング・データ形式 | 国際符号化文字集合(Unicode互換)、多言語対応 |
(1)安全性に関するIEC規格
① 感電防止のための安全規格(IEC61010)
IEC61010は、測定機器や制御機器などで感電事故を防ぐための規格です。
この規格では、電気回路の絶縁構造や接地方法、耐電圧試験の基準などが細かく定められています。
設計段階からこれらの要件を満たすことで、使用中の感電リスクを大幅に減らすことが可能です。
また、製品の構造や部品の選定にも影響するため、安全性を確保しながら信頼性の高い機器を製造できます。
② 火災防止や過熱対策の安全規格(IEC60335シリーズ)
IEC60335シリーズは、家庭用電気製品における過熱や発火の危険を防ぐための規格です。
電子レンジや冷蔵庫、掃除機など日常的に使用する家電が対象で、発熱部品の温度上限や異常時の安全遮断機能などが求められます。
さらに、製品の長期使用による劣化を想定した試験方法も規定されており、耐久性の観点からも安全を保証しています。
③機械的危害の防止に関する安全規格(IEC60204-1)
IEC60204-1は、産業用機械の電気設備に関する安全基準を定めた規格です。
機械の可動部による挟み込みや衝撃事故を防ぐため、緊急停止装置の配置や配線の保護、操作パネルの安全設計などが盛り込まれています。
また、メンテナンス作業時の安全確保にも重点が置かれており、作業者が感電や機械的な危害にさらされないような構造が求められます。
この規格に沿った設計と運用を行うことで、工場や現場の安全水準を大きく向上させ、労働災害の防止につながるのです。
(2)性能・機能に関するIEC規格
①製品の性能試験方法に関する規格(IEC60068シリーズ)
IEC60068シリーズは、製品がさまざまな環境条件でも正しく機能するかを確認するための試験方法を定めた規格です。
この規格では、高温や低温、湿度、振動、衝撃、塩水噴霧などの条件下で製品を試験し、性能や耐久性への影響を評価します。
試験は実際の使用環境を想定して行われるため、現場で起こり得る故障や性能低下のリスクを事前に把握できます。
これらの試験は、設計段階での改善や品質保証に役立つため、信頼性の高い製品づくりが可能です。
②長期耐久性・信頼性の評価規格(IEC61709)
IEC61709は、製品の長期使用における耐久性や信頼性を評価するための規格です。
使用環境や負荷条件を基に、製品や部品の故障率や寿命を予測します。
評価は統計的手法や実験データを組み合わせて行われ、長期間の使用に耐える設計を実現するための重要な指標です。
耐久性の確保は、ユーザー満足度の向上や保証コストの削減にも直結します。
そのため、製造業者にとってIEC61709への準拠は、信頼性の高いブランドを構築するために非常に重要な役割を果たします。
3. エネルギー効率や省電力性能に関する規格(IEC62031など)
IEC62031などの規格は、LED照明などの省エネ製品におけるエネルギー効率や省電力性能を評価するために策定されています。
これらの規格では、消費電力や光出力の測定方法、効率向上のための設計条件などが定められています。
省電力の性能を上げることは、環境負荷の低減だけでなく、ユーザーの電気代の削減にもつながるはずです。
また、省エネ性能が高い製品は市場での競争力が強く、環境規制の厳しい地域への輸出に対しても有利に働きます。
(3)環境適合性に関するIEC規格
①有害物質の使用制限(IEC62321)
IEC62321は、電気・電子製品に含まれる有害物質の含有量を測定するための国際規格です。
鉛や水銀、カドミウム、六価クロムなど、人体や環境に悪影響を与える物質が対象です。
測定方法や試料採取の手順が明確に定められており、国や地域の環境規制(例:RoHS指令)への適合を証明する際に用いられます。
つまり、IEC62321は、企業が持続可能な製造と市場の競争力を確保するための重要な基準といえるでしょう。
②リサイクル・廃棄に関する規格(IEC62635)
IEC62635は、電気・電子製品のリサイクル可能な部品や材料の割合を算定するための規格です。
製品を廃棄する際の環境負荷を減らすことを目的とし、設計段階から再利用しやすい構造や材料の選定を促します。
評価では、素材の種類や重量、分解のしやすさなどが考慮されます。
この規格を活用することで、サスティナブルな社会の実現に貢献でき、企業の環境に対する評価やブランド価値の向上にもつながるのです。
③耐環境性試験(IEC60068シリーズ)
IEC60068シリーズは、製品が過酷な環境条件の下でも性能を維持できるかを確認するための試験規格です。
高温・低温、湿度、振動、衝撃、塩水噴霧など、使用環境で想定されるさまざまな要因に対して製品を評価します。
そのため、耐久性や信頼性を事前に確認でき、製品寿命の延長や故障率低減につながります。
特に屋外機器や産業用設備では、この試験の結果が安全性や信頼性の証明になるのです。
(4)分野別の専門IEC規格(医療機器・情報通信・家電など)
①医療機器に関するIEC規格(IEC60601シリーズ)
IEC60601シリーズは、医療機器の安全性と基本性能を保証するための国際規格です。
この規格では、電気的安全、機械的強度、電磁両立性など、多方面からの安全要件が細かく定められています。
対象となるのは、心電計やMRI装置、人工呼吸器など、患者の命に直接関わる機器です。
設計段階からこれらの条件を満たすことで、使用中の事故や故障のリスクを最小限に抑えられます。
医療現場では、機器の信頼性が患者の安全と治療効果に直結するため、IEC60601への準拠は医療機器メーカーにとって不可欠な条件といえます。
②情報通信機器に関するIEC規格(IEC60950、IEC62368)
IEC60950およびIEC62368は、情報通信機器やオーディオ・ビデオ機器の安全性を確保するための規格です。
IEC60950は従来型の情報技術機器を対象に感電防止や発火防止の基準を定めていましたが、現在はIEC62368に移行が進んでいます。
IEC62368は、リスク評価に基づく安全設計を採用し、より幅広い機器や新技術に対応しているため、パソコンや通信機器、映像機器などの安全性が確保できます。
③家電製品に関するIEC規格(IEC60335シリーズ)
IEC60335シリーズは、家庭用電気製品の安全性と性能を保証するための国際規格です。
この規格は、電子レンジや冷蔵庫、掃除機、洗濯機など、多くの家庭用機器が対象です。
規格の中では、感電や火災の防止、過熱時の安全機能、長期使用を想定した耐久試験などが求められます。
家庭内で使用する製品は日常的に触れる機会が多いため、万が一の事故を防ぐためには安全の基準が重要となります。
(5)ISOと共同策定されたIEC規格(ISO/IEC規格)
①情報セキュリティ分野(ISO/IEC27000シリーズ)
ISO/IEC27000シリーズは、組織の情報セキュリティを体系的に管理するための国際規格です。
このシリーズには、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の構築・運用・改善に関する基準が含まれます。
情報資産を守るため、リスク評価やアクセス制御、暗号化、監査などの手順が明確に定められています。
国や業界によっては取引条件として取得が求められることも多く、顧客や取引先からの信頼の確保にも直結する重要な規格です。
②ITサービスマネジメント分野(ISO/IEC20000シリーズ)
ISO/IEC20000シリーズは、ITサービスの品質と効率を高めるための国際規格です。
ITサービスマネジメント(ITSM)のフレームワークを提供し、計画から運用、改善までのプロセスを体系化します。
この取り組みにより、利用者の満足度が高まり、安定したサービスの提供が可能となります。
また、ITサービスを提供している体制を国際基準で評価できるため、海外取引や外部委託においても有利に働くでしょう。
③プログラミング言語やデータ形式に関する規格(ISO/IEC10646)
ISO/IEC10646は、世界中の文字を統一的に扱うための国際規格です。
通称「国際符号化文字集合(UCS)」と呼ばれ、Unicodeと互換性があります。
この規格では、各国の文字や記号に一意のコードを割り当て、異なるシステムやソフトウェア間でも正しく表示・処理できるようにします。
世界規模での情報交換や多言語化を実現するための必須要素で、グローバル市場に挑む企業や開発者にとって欠かせない仕組みです。
3.IEC規格に準拠する5つのメリット
IEC規格に準拠するメリットは、大きく分けて以下の5つです。
- 製品の国際的な信頼性と安全性の向上
- 海外市場への参入が容易になる
- 国際的な法規制や取引条件への適合
- 製品品質や性能の一貫性確保
- 企業ブランド価値と競争力の向上
それぞれのメリットについて、具体的な効果や活用の場面をご紹介していきます。
(1)製品の国際的な信頼性と安全性の向上
IEC規格に準拠することで、製品が国際的に認められた安全基準や品質基準を満たしていることを証明できます。
この基準には、感電防止や過熱防止などの安全対策、性能試験による品質確認が含まれます。
第三者機関の試験や認証によって基準を満たしていることが証明されるため、国内外の顧客や取引先から高い信頼を得られます。
(2)海外市場への参入が容易になる
多くの国や地域では、製品を販売するためにIEC規格の準拠が求められます。
規格に適合していれば、輸出時の認証手続きや通関がスムーズになり、販売開始までの期間を短縮できます。
また、複数の国で共通の基準を満たしているため、各市場ごとに別の試験を行う必要が減ります。
結果として、海外展開の障壁が低くなり、新たな市場への進出が容易になるでしょう。
(3)国際的な法規制や取引条件への適合
IEC規格は、多くの国際的な法規制や業界標準の基盤として採用されています。
これに準拠していれば、輸出入や契約時の条件を満たしやすくなり、法的リスクや契約違反の可能性を減らすことができます。
特に大手企業や公共機関との取引では、規格への適合が参加条件になることも多く、取引機会の拡大にもつながるはずです。
(4)製品品質や性能の一貫性確保
規格に基づいた設計・製造・試験を行うことで、製品品質と性能を安定して維持することができます。
この一貫性は、顧客満足度の向上やブランドイメージの維持に直結します。
さらに、不良品やトラブル発生のリスクが下がるため、アフターサービスや保証対応の負担も軽減されるでしょう。
(5)企業ブランド価値と競争力の向上
国際規格への準拠は、企業の技術力と信頼性の証明になります。
製品カタログや営業資料に規格への準拠を明記すれば、取引先や顧客へのアピール効果が高まります。
結果として、他社との差別化にもつながり、国内外での競争力を強化できるはずです。
4.IEC規格に準拠する5つのデメリット
IEC規格に準拠する際のデメリットは、大きく分けて以下の5つです。
- 規格取得や試験にかかるコスト負担
- 認証取得までの時間と手続きの複雑さ
- 製品設計や開発の自由度の制約
- 規格改定への継続的な対応負担
- 市場や製品によっては過剰品質になる可能性も
もし知らないまま進めてしまうと、後戻りや予算超過などのリスクが高まるかもしれません。
ひとつずつ見ていきましょう。
(1)規格取得や試験にかかるコストの負担
IEC規格に準拠するためには、規格文書の購入費用や試験機関への依頼費用、試作品の製作や改良に伴う費用が発生します。
特に複雑な製品や複数の規格に適合させる場合、数百万円以上に及ぶこともあるため、コストが大きく膨らむ傾向があります。
中小企業にとっては、この負担が資金計画に大きな影響を与える可能性があるでしょう。
(2)認証取得までの時間と手続きの複雑さ
規格適合の証明には、事前調査、設計調整、試験、書類作成など多くの工程を経る必要があります。
初めて取得する場合、各工程の進め方や必要書類の作成方法を把握するだけでも時間がかかるでしょう。
申請先や国によっては追加試験や審査が求められる場合もあり、計画通りに進まないこともあります。そのため、十分なスケジュール管理が重要です。
(3)製品設計や開発の自由度の制約
IEC規格に沿った設計を行うことで、安全性や性能は上がりますが、それと同時に自由な発想やコスト削減策に制限がかかる場合があります。
使用できる部品や構造に制約があり、独自性を出すための設計変更が難しくなることも否定できません。
これにより、開発の柔軟性が低下し、市場ニーズへの迅速な対応が難しくなる可能性も抑えておきましょう。
(4)規格改定への継続的な対応への負担
IEC規格は技術の進歩や安全基準の見直しに伴い、定期的に改訂されます。
もちろん、改訂が行われるたびに、既存製品の設計見直しや再試験が必要になる場合があります。
この対応には人員・時間・費用がかかり、特に製品ラインナップが多い企業では負担が大きくなる傾向にあります。
(5)市場や製品によっては過剰品質になる可能性も
IEC規格は国際的に通用する高い基準ですが、すべての市場や用途でその水準が必要とは限りません。
場合によっては、規格適合のために不要な機能や性能を追加し、コストだけが上昇することがあります。
このような過剰な品質は、販売価格の上昇や価格競争力の低下を招く要因となり得ます。
製品の販売地域や用途を見極めた上で、取得するかどうかを見極める必要があります。
5.IEC規格取得までの6ステップ
IEC規格を取得するまでの流れは、以下の6つのステップがあります。
- 対象製品に適用されるIEC規格の特定
- 規格文書の入手と要件の確認
- 製品設計と試作段階での規格適合への対策
- 試験機関による適合性試験の実施
- 認証申請と審査手続き
- 認証取得後の規格適合の維持
これらの手順を把握しておくことで、効率的に進められ、不要な遅延や追加コストを避けられはずです。
ひとつずつ解説していきます。
(1)対象製品に適用されるIEC規格の特定
製品を国際市場に出すには、まずどのIEC規格が適用されるかを正確に確認することが大切です。
分野や用途によって求められる基準は異なり、該当しない規格に合わせた設計をしてしまうと、大きな手戻りが発生します。
製品仕様、使用環境、想定される市場を分析し、最も適した規格を選定することで、開発の方向性が明確になり、後工程での試験や認証取得が遅滞なく進みます。
(2)規格文書の入手と要件の確認
対象規格が決まったら、公式の規格文書を入手し、全ての要件を細かく確認します。
市販されている要約や二次情報だけでは、最新の改訂内容や細部の条件が漏れてしまうかもしれません。
認証機関や専門機関から正規の文書を購入し、技術要件や試験条件を正確に把握します。
初期段階でこれを徹底すれば、設計や試作の方向性がぶれにくくなるはずです。
(3)製品設計と試作段階での規格適合への対策
規格要件を理解したら、設計段階でそれらを満たすよう配慮します。
後から仕様を変更するより、初期設計に反映させた方がコストや時間の節約につながります。
例えば、安全基準に沿った部品の選定や、耐環境性を意識した構造設計などです。
試作段階でも規格に沿った検証を行い、不適合な箇所があれば早期に改善します。
(4)試験機関による適合性試験の実施
製品が規格に適合しているかを確認するため、認定を受けた試験機関で適合性試験を行います。
この試験では安全性、性能、耐久性など、規格で求められる項目を実測し、結果が記録されます。
自社で事前試験をしておくと、本試験での不合格リスクを下げられます。
(5)認証申請と審査手続き
試験に合格したら、認証機関に申請します。
申請には試験成績書、設計図書、製造過程の記録などが必要です。
審査では書類確認だけでなく、必要に応じて工場視察や追加試験が行われます。
全ての要件を満たせば認証が発行され、製品は国際市場での販売が可能になります。
(6)認証取得後の規格適合の維持
認証は取得したら終わりではありません。
規格は改訂されることがあり、製品仕様や製造工程も変化します。
定期的に監査や再試験を行い、常に規格に適合している状態を保たなければなりません。
これを怠ると認証の失効や市場での信頼低下につながるため、継続的な管理体制が重要です。
6.まとめ
今回は、IEC規格について、その概要から種類やメリット、取得方法までを幅広く解説しました。
IEC規格とは、国際的に通用する製品の安全性・性能・環境適合性などを保証する基準であり、世界中で共通の「安全と品質の物差し」として扱われています。
主な分類には、安全性に関する規格、性能・機能に関する規格、環境適合性に関する規格、分野別の専門規格、ISOと共同策定された規格があります。
IEC規格に準拠することで、国際市場での信頼性の向上、取引の拡大、製品の品質の向上など多くのメリットが得られるはずです。
この記事を参考に、自社製品がIEC規格を必要とするかを判断し、取得までの準備を進めることで、国際市場での競争力を高めることに役立ててください。
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