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TQM(総合的品質管理)とは?基本的な意味から活動の進め方、成功事例までを徹底解説

2025年9月25日

TQM(総合的品質管理)とは?基本的な意味から活動の進め方、成功事例までを徹底解説

「TQMってよく聞くけど、いったい何のこと?」

「うちの会社にも必要なの?」

結論から言うと、TQM(総合的品質管理)は、会社全体で品質を高めるための考え方と取り組みのことです。

現場任せの改善ではなく、経営層から全社員までが一丸となって取り組むことで、顧客満足や生産性を大きく向上させることができます。

この記事では、TQMの意味と基本の考え方、具体的な進め方や実際に成果を上げた企業の成功事例まで、わかりやすく解説します。

最後まで読むことで、自社にTQMを導入すべき理由と、最初に何から始めるべきかがはっきりと見えてくるはずです。

1.TQM(総合的品質管理)とは「全社員で取り組む品質経営の仕組み」

TQM(Total Quality Management:総合的品質管理)とは、会社全体で品質を良くすることを目指し、改善を続けていく経営の仕組みです。

経営者だけでなく、製造・営業・事務など、すべての部門と社員が一体となって取り組む点が特徴です。

例えば、現場の小さな気づきをきっかけに、仕事のやり方を見直したり、より良い製品をつくるための方法を話し合ったりします。

その積み重ねが品質の安定やお客様の満足、そして会社の成長につながっていきます。

また、TQMでは一度改善して終わりにせず、良い状態を保つ仕組みを作り、さらに上を目指して工夫を続ける姿勢が大切です。

つまりTQMとは、「全員参加」と「継続的な改善」を通して、品質と働き方の両方をよくしていく考え方といえるでしょう。

(1)TQC(全社的品質管理)との違い

TQC(Total Quality Control:全社的品質管理)とTQMは、どちらも品質をよくするための取り組みですが、目指す範囲や考え方には大きな違いがあります。

一言で表すと、TQCは「現場中心の活動」、TQMは「会社全体で取り組む経営の仕組み」です。

両者の違いをまとめた比較表は以下です。

■TQCとTQMの違い

項目TQC(全社的品質管理)TQM(総合的品質管理)
主な特徴現場主導・部分最適全社参加・全体最適
活動の中心製造現場(つくる人)全社(経営層〜事務・営業など全員)
目的作業手順の改善や不良品の削減顧客満足を高め、経営成果を上げる
部門の連携各部門が独自に改善を進めることが多い部門を超えて連携し、全社的に活動を行う

TQC(全社的品質管理)は、もともと製造業の現場で生まれた考え方です。

作業手順の改善や不良の削減など、主に「つくる現場」での品質向上に力を入れてきました。

各部門が独自に改善活動を行うことが多く、全社の方向性とつながっていないこともあります。

一方で、TQM(総合的品質管理)は、品質を経営の中心に置く考え方です。

現場だけでなく、営業、開発、事務、さらには経営層まで、すべての人が一体となって取り組むことを前提としています。

経営目標やお客様の声をもとに、部門を超えて連携しながら、全社で品質を高めていくのが特徴です。

つまり、TQCは「現場発の改善活動」、TQMは「経営戦略としての品質向上」と考えると違いがよくわかります。

2.TQM(総合的品質管理)が重要な4つの理由

TQMが企業にとって重要な4つの理由は、大きく分けて以下の4つです。

  1. 顧客満足を全社で高める仕組みをつくれる
  2. 品質のばらつきを抑え、安定した製品・サービスを提供できる
  3. 継続的な改善活動によって競争力を高められるため
  4. 経営方針と現場の行動を一致させやすくなるため

TQMの重要性を正しく理解しておくことで、自社の品質改善や経営の効率化に役立てることができます。

順番に解説していきます。

(1)顧客満足を全社で高める仕組みをつくれる

TQMが重要とされる理由のひとつは、顧客満足を全社で高める仕組みをつくれることです。

TQMでは、品質を「顧客の期待に応えること」と考え、その実現に向けて全社員が力を合わせて取り組んでいきます。

例えば、製品やサービスをつくる現場だけでなく、営業や事務、さらには経営層までが「顧客のためにできることは何か」を意識しながら行動します。

このように、ひとつの部門だけでなく会社全体が同じ目標を持ち、情報を共有し、連携しながら改善を進めることで、顧客の満足度は確実に高まるでしょう。

つまりTQMとは、全員が顧客の声に耳を傾け、それに応える行動を日々積み重ねることで、信頼される企業へと成長していくための仕組みなのです。

(2)品質のばらつきを抑え、安定した製品・サービスを提供できる

TQMを導入することで、品質のばらつきを抑え、安定した製品やサービスの提供が可能です。

TQMでは、業務のやり方を統一し、誰が担当しても同じ結果が出せるように「標準化」や「見える化」を進めます。

例えば、作業手順書を整えたり、問題が起きたときにすぐ原因が分かるように情報を共有したりすることで、現場のばらつきが少なくなります。

こうした仕組みを全社で共有することで、どの部署でも安定した品質を保てるようになるのです。

安定した品質は、クレームの減少や再作業の削減にもつながり、結果として会社全体の効率と信頼が高まっていきます。

(3)継続的な改善活動によって競争力を高められるため

継続的な改善によって企業の競争力を高められることがあります。

一度だけの取り組みで終わるのではなく、日々の業務を見直し続けることがTQMの大きな特徴です。

例えば、仕事の中で「もっと早くできないか」「無駄をなくせないか」といった小さな気づきを全員で出し合い、改善につなげていきます。

このような取り組みを積み重ねることで、自然と生産性が上がり、コストの削減やミスの減少といった成果が生まれます。

さらに、他社よりも早く対応したり、高品質なサービスを提供したりすることで、市場での優位性にもつながっていくでしょう。

(4)経営方針と現場の行動を一致させやすくなるため

TQMを取り入れることで、経営の考えと現場の行動を一致させやすくなります。

組織全体が同じ方向を向いて進むためには、この「方針の共有と行動の連動」が欠かせません。

経営層がどれだけ立派な方針を掲げても、それが現場に正しく伝わらなければ、日々の仕事には反映されません。

TQMでは、「方針管理」と呼ばれる仕組みを通じて、経営の目標をわかりやすい形で各部門に落とし込みます。

それにより、現場の業務や改善活動が経営の方向性としっかりつながり、組織に一体感が生まれます。

このように、経営と現場がバラバラに動くのではなく、同じ目的を持って協力し合う体制が整うことは、企業にとって大きな強みとなるのです。

3.TQM(総合的品質管理)活動の進め方7つのステップ

TQM活動の進め方には、大きく分けて7つのステップがあります。

  1. 改善すべきテーマを明確にする
  2. 現状の状態を客観的に把握する
  3. 問題の原因を深掘りして特定する
  4. 明確な目標を立て、実現に向けた対策を考える
  5. 立てた対策を現場で実行に移す
  6. 必要に応じて対策を見直し、改善を繰り返す
  7. 成果を評価し、成功事例を標準化する

初心者の方にも分かりやすいように、具体例やポイントを交えながら解説していきます。

(1)改善すべきテーマを明確にする

TQMを進める上で、最初に行うべきは「何を改善するか」をはっきりさせることです。

取り組むテーマが曖昧なままでは、効果的な改善につなげることはできません。

まずは、経営の方針や会社の目標を踏まえた上で、現場の声や顧客の意見、不良のデータなどを見ながら、解決すべき課題を探します。

その中から、とくに影響が大きい問題や早めに手を打つべき内容を選び、優先順位をつけて取り組むテーマを決めていきます。

テーマが明確になることで、現場の意識も統一され、具体的な行動につなげやすくなるのです。

(2)現状の状態を客観的に把握する

改善活動を進める中で大切なのは、現場の現状を思い込みではなく、事実に基づいて正しく理解することです。

感覚や経験だけに頼ってしまうと、問題の本質を見誤る恐れがあります。

TQMでは、まずデータや記録などの客観的な情報を集めて、現在の状況を整理します。

例えば、不良の発生数や作業にかかる時間、顧客からの問い合わせ件数など、できるだけ数値として可視化することが重要です。

こうした情報をもとに、業務の流れや問題の位置を図や表で見えるようにすれば、関係者全員が同じ認識を持てるようになります。

データを使って冷静に状況を分析することで、取り組むべき課題がはっきりと見えてきます。

(3)問題の原因を深掘りして特定する

TQMでは、目の前にある問題に対して「なぜそうなったのか」を深く掘り下げて、真の原因を見つけることが重要です。

そのためには、「なぜ?」を何度も問い直しながら、原因の根っこにあるものを見つけ出す必要があります。

このときに大切なのは、思い込みや推測ではなく、データや事実に基づいた分析を行うことです。

特性要因図(フィッシュボーン図)やなぜなぜ分析などの手法を活用すれば、原因の整理もしやすくなります。

問題の本当の原因が見つかれば、効果的な対策を立てることができます。

(4)明確な目標を立て、実現に向けた対策を考える

目標をはっきりさせること、そして、それを達成するための具体的な対策を考えることがTQMでは重要です。

目標の立て方と対策の考え方は以下の通りです。

■目標設定と対策立案の考え方

①まず、目標は数字で具体的に示す

「いつまでに」「どのくらい改善したいか」をはっきりさせる。数値が入っていると、成果がはっきり見える。

②目標が決まったら、原因に合った対策を考える

原因分析の結果をもとに、何をすれば改善できるかを考える。問題に対して、正しく効く方法を選ぶことが大切。

③対策は、実行しやすく現実的な方法を選ぶ

大きな仕組み変更よりも、現場ですぐ試せるものが効果的。小さく始めて効果を確認し、必要に応じて広げていく。

この一連の流れがTQMを機能させるためには基本となります。

(5)立てた対策を現場で実行に移す

計画だけで終わってしまっては、改善は進みません。

まずは、立てた対策を実行に移すために、「誰が」「いつまでに」「どのように」やるのかを明確に決めます。

責任者をはっきりさせ、関係するメンバーにも内容を分かりやすく伝えることが大切です。

また、必要があれば事前に教育や説明会を行い、現場で混乱が起きないように準備しておくと、スムーズに進められます。

計画通りに実行することで、どのような効果が出るかを正しく確認できます。

つまり、具体的な行動に移すことが、TQM活動を形にするためには重要なのです。

(6)必要に応じて対策を見直し、改善を繰り返す

TQMでは、一度対策を行ったら終わりではなく、効果を見ながら必要に応じて見直す姿勢が大切です。

実際に対策を実行した後、その結果がどうだったかをしっかり確認します。

もし期待した効果が出ていない場合は、原因をもう一度見直し、対策そのものを再検討する必要があります。

このように試行錯誤を重ねることで、少しずつ最適な方法に近づけていくのがTQMの考え方です。

何度も繰り返す中で、現場の理解も深まり、より効果的な改善活動へとつながっていきます。

(7)成果を評価し、成功事例を標準化する

改善の結果を正しく評価し、上手くいった事例を標準化して広げることがTQMの最終ステップとなります。

具体的な流れは以下の通りです。

■成果を評価し、成功事例を標準化するための流れ

ステップ内容補足説明
①効果を数値で測定する不良率・作業時間・コストなどを数値で確認する主観ではなく、客観的なデータで成果を判断する
②成功した対策をまとめる有効だった手法を手順書・マニュアルに整理する再現性を高め、他の人にもわかるようにする
③標準化して定着させる同じ問題が起きたときに誰でも対応できる仕組みにする教育や共有を通じて、現場で使えるようにする
④他部門にも展開する成功事例を社内で共有し、他の部門でも活用できるようにする全社的なレベルアップを図る

成果をきちんと形に残し、それを他の場面でも活かせるようにすることが、TQMの効果を最大化するためには欠かせません。

4.TQM(総合的品質管理)で用いられる代表的な手法4選

TQMで用いられる代表的な手法は、以下の4つです。

  1. QC七つ道具を活用したデータ分析
  2. 方針管理で経営目標と現場活動をつなぐ
  3. QCサークル(小集団活動)による現場改善
  4. PDCAサイクルを軸にした継続的改善

ひとつずつ確認していきましょう。

(1)QC七つ道具を活用したデータ分析

QC七つ道具を使ったデータ分析は、品質に関する問題を数字や図で見える化し、原因を正しく掴むための道具です。

QC七つ道具には、グラフ、ヒストグラム、パレート図、特性要因図(フィッシュボーン図)などがあり、どれも使い方が分かりやすく、実際の現場で活用されています。

例えば、製造ラインで不良品が多発している場合、QC七つ道具を使えば「どの工程で」「どのような不良が」「どのくらいの割合で」起きているかを明確にできます。

パレート図を使えば、不良の種類ごとの発生件数を視覚的に把握でき、まず何から改善すべきかが把握できます。

QC七つ道具を使うことで、問題の原因を見つけやすくなり、改善活動をより効率的に進めることが可能です。

(2)方針管理で経営目標と現場活動をつなぐ

経営の方針と現場の行動をしっかり結びつけることが重要です。

そのために使われるのが「方針管理」という手法で、会社全体が同じ目標に向かって進むための土台になります。

方針管理では、まず経営層が「会社として何を目指すのか」「どのような品質を実現したいのか」といった目標を明確にします。

それを部門ごとに具体的な行動計画に落とし込み、「誰が」「何を」「いつまでに」行うのかを決めていくのです。

例えば、製造部では不良率を2%以下にする、営業部ではクレーム対応時間を1時間以内に短縮するといった目標が立てられたとします。

こうすることで、各部署の活動がバラバラにならず、全社が同じ方向を向いて行動できるようになります。

(3)QCサークル(小集団活動)による現場改善

TQMでは、現場の力を引き出す手法として「小集団活動(QCサークル)」がとても有効です。

QCサークルとは、現場で働く従業員が数人のグループをつくり、自分たちの仕事をよりよくするために自発的に改善に取り組む活動です。

同活動では、日々の業務の中で感じている問題や不便な点を話し合い、原因を調べて改善策を考え、実行していきます。

例えば、「作業ミスを減らすためのチェックリスト作成」や「動線を見直して作業効率を上げる工夫」など、身近なテーマが多く扱われます。

現場で実際に作業している人たちだからこそ気づける問題があり、その知恵を活かすことで、より現実的で実行しやすい改善につながるのです。

(4)PDCAサイクルを軸にした継続的改善

TQMにおいて、PDCAサイクルは継続的な改善を支える基本的な考え方です。

この手法を軸にすることで、品質向上の取り組みを計画的かつ効果的に進めることができます。

PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の4つの流れをくり返すことで、業務を少しずつよい方向へと変えていく方法です。

PDCAの一連の流れは以下のようになります。

■PDCAサイクルの流れ

段階内容具体例(不良品を減らす場合)
Plan(計画)何をどう改善するか決める「不良品を3か月で半分に減らす」などの目標を立てる
Do(実行)実際に行動に移す原因と考えられる作業手順を見直し、変更を加える
Check(評価)結果をデータなどで確認する不良率の数値を測定し、改善できたかを確認する
Action(改善)必要があれば見直して再実行効果が薄ければ別の方法を検討し、再度取り組む

このようにPDCAを繰り返すことで、少しずつ業務がよい方向へ進み、安定した成果を出せるようになります。

5.参考にしたいTQM(総合的品質管理)の成功事例

最後に、TQMの成功事例についてご紹介します。

これらの事例を知ることで、TQMを自社に導入・定着させる際の具体的なヒントが得られるかもしれません。

(1)トヨタにおけるTQM活動

トヨタはTQMの考え方を長年にわたって実践し、全社的な品質向上に大きな成果を上げています。

特に象徴的なのが「オールトヨタTQM大会」です。この大会は、1966年に始まり、現在ではグループ会社や取引先を含む約300社が参加する一大イベントへと発展しました。

現場の従業員が日々の改善活動を発表し、経営層も登壇して「人づくり」「ものづくり」の重要性を共有します。

こうした取り組みによって、現場から経営層までが一体となり、品質・安全・効率のすべてを高いレベルで実現しています。

参照:ダイアモンドオンライン「トヨタの強さの源泉を見た!「オールトヨタTQM大会」初見聞録

(2)花王のQCサークル活動

花王では、生産・物流の現場において、272件ものQCサークル改善テーマを実施し、業務効率や品質の向上に大きく貢献しました。

また、品質保証活動に関する教育を延べ3,379人に実施し、化粧品のGMPやISO関連講習を528回にわたって行いました。

これにより、現場の改善意欲が高まり、社員一人ひとりが品質に対する理解を深め、改善を自発的に続ける組織文化が定着しています。

参照:Kao「消費者志向経営自主宣言

6.まとめ

今回は、TQMについて、その基本的な意味から、実際の進め方、さらに企業での成功事例までを解説しました。

TQMとは、品質を単に製品やサービスの良し悪しにとどめず、「顧客満足を実現するための全社的な取り組み」として位置づける考え方です。

経営層から現場まで全員が一体となり、計画的かつ継続的な改善を行うことで、品質の安定と競争力の強化を目指します。

記事内では、TQMを効果的に導入・推進するための7つのステップをはじめ、PDCAサイクルやQCサークルといった代表的な手法についても具体的にご紹介しました。

本記事を参考に、貴社でもTQMを導入し、顧客満足・品質向上・業務改善を同時に実現するための第一歩を踏み出していただければ幸いです。

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