2025年9月30日

目次
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- 1.ISO9001(品質マネジメントシステム)とは
- 1-1 「品質」の定義
- 1-2 顧客満足と継続的改善の仕組み
- 2.ISO14001(環境マネジメントシステム)とは
- 2-1 「環境」の定義
- 2-2 法規制対応と環境リスクの管理
- 3.ISO9001とISO14001との違い
- 3-1 ISO9001とISO14001の最大の違いは「目指すゴール」
- 3-2 要求事項上の共通点と相違点
- 3-3 共通構造(HLS)とは?
- 4.ISO9001・ISO14001は一緒に取得・運用できる?
- 4-1 統合マネジメントシステム(IMS)とは
- 4-2 同時取得のメリットと注意点
- 5.ISO9001・ISO14001認証のメリット・デメリット
- 5-1 ISO9001・ISO14001認証のメリット
- 5-2 ISO9001・ISO14001認証のデメリット
- 5-3 取得しない選択肢との比較
- 6.ISO9001とISO14001認証、どちらを取得するべきか
- 6-1 事業内容別の向き不向き
- 6-2 顧客の要求や市場のニーズを踏まえた選定ポイント
- 7.取得後の運用と更新審査のポイント
- 7-1 継続的改善と記録管理
- 7-2 審査での指摘を受けやすい事例
- 7-3 更新審査に向けた準備
- 8.ISO9001・ISO14001認証までの大まかな流れ
- 9.まとめ
「ISO9001とISO14001、違いがよく分からない…」
「自社にどちらが必要なのか判断できない」
そんな悩みをお持ちではないでしょうか。
品質や環境への取り組みが企業に求められる中、ISO9001・ISO14001の取得を検討する企業が増えています。
しかし、それぞれの規格の特徴や違いをよく理解しないまま取得を進めてしまうと、運用面で苦労したり、思うような効果が得られなかったりすることもあります。
このコラムでは、ISO9001とISO14001の基本的な考え方や仕組みの違いを比較しながら、それぞれの向き・不向き、同時取得(統合認証)の活用方法まで体系的に解説します。
本コラムを最後までお読みいただくと、自社に必要な規格を見極めるための判断軸が明確になり、スムーズに認証取得への一歩を踏み出せるようになります。
品質と環境の両立によって、企業価値を高める第一歩をここから始めてみましょう。
1.ISO9001(品質マネジメントシステム)とは
ISO9001は、顧客満足度を向上させるための仕組み(マネジメントシステム)を定めた国際規格です。
1-1 「品質」の定義
ここでいう「品質」とは単に製品やサービスの性能や見た目の良さだけではなく、「顧客の期待を満たすこと」が本質です。
つまり、顧客が求める機能・納期・価格・安全性など、あらゆるニーズに応えることが品質であり、それを企業全体で継続的に実現していくための仕組みを構築するのがISO9001の目的です。
1-2 顧客満足と継続的改善の仕組み
ISO9001では、顧客満足を高めるために、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルに基づいた業務プロセスの管理を求めています。
具体的には、以下のような仕組みを構築・運用します。
- P(計画)
- 顧客の要求を正確に把握し、品質目標を設定する。
- D(実施)
- 計画に基づき、業務を標準化し、製品やサービスを提供する。
- C(評価)
- 顧客からのフィードバックやクレームを分析し、目標達成度を評価する。
- A(改善)
- 評価結果に基づき、業務プロセスを見直し、再発防止策を講じる。
2.ISO14001(環境マネジメントシステム)とは
ISO14001は、企業活動による環境への負荷を低減させるための仕組みを定めた国際規格です。
2-1 「環境」の定義
ここでの「環境」とは、地球温暖化や水質汚染、廃棄物など、事業活動が周囲に与える影響全般を指します。
環境への影響を自ら評価し、継続的に改善していくことが求められます。
2-2 法規制対応と環境リスクの管理
ISO14001の目的は、単に環境に配慮するだけでなく、法規制を遵守し、環境リスクを管理することにあります。
具体的には、以下の項目をマネジメントします。
- 環境目標の設定
- 省エネルギー、資源の削減、廃棄物の分別・リサイクルなど、具体的な目標を立てる。
- 法規制の順守
- 関連する環境法規や条例を特定し、遵守体制を構築する。
- 環境パフォーマンスの改善
- PDCAサイクルを回し、環境目標の達成に向けた活動を継続的に改善していく。
- 緊急事態への対応
- 有害物質の漏洩など、予期せぬ事故への対応計画を策定する。
3.ISO9001とISO14001との違い

3-1 ISO9001とISO14001の最大の違いは「目指すゴール」
ISO9001は「顧客満足の向上」を、ISO14001は「環境保全と環境リスクの低減」をゴールとしています。
したがって、業務改善の焦点も異なります。
例えば、ISO9001では納期や製品不良率などのKPIを重視しますが、ISO14001では排出量や廃棄物の削減率といった環境指標が重視されます。
3-2 要求事項上の共通点と相違点
どちらの規格もPDCAサイクルを基盤としており、「方針の策定」「目標設定」「実行と記録」「見直しと是正」といった流れは共通です。
しかし、記録の中身は異なります。
- ISO9001
- 不適合管理、顧客満足度、内部監査報告書
- ISO14001
- 環境側面評価、法令順守評価、緊急事態対応訓練記録 など
3-3 共通構造(HLS)とは?
2015年の改訂により、両規格は共通の構造(HLS:High Level Structure)を採用しました。
これにより、要求事項の構成が統一され、複数の規格を同時に取得・運用する際の負担が大幅に軽減されました。
【HLSの共通項目】
- 適用範囲
- 引用規格
- 用語及び定義
- 組織の状況
- リーダーシップ
- 計画
- 支援
- 運用
- パフォーマンス評価
- 改善
4.ISO9001・ISO14001は一緒に取得・運用できる?
ISO9001とISO14001は、同時に取得・運用することが可能です。
4-1 統合マネジメントシステム(IMS)とは
複数の異なる規格を同時に取得・運用することを、統合マネジメントシステム(IMS:Integrated Management System)と言います。
文書や手順書を共通化することで、業務の効率化が図れます。
4-2 同時取得のメリットと注意点
【メリット】
- 審査・運用の効率化:審査をまとめて実施できるため、審査費用や対応工数が削減できます。また、マニュアルや記録の作成も共通化でき、日常的な運用負荷が減ります。
- 企業イメージの向上:品質と環境の両立は、より高い社会貢献と企業の信頼性を示す証となります。
- 経営の効率化:品質と環境という二つの側面から経営を見直すことで、無駄のない強固な経営基盤を構築できます。
【注意点】
- 運用負荷:統合することで管理はしやすくなりますが、それぞれの要求事項を理解し、適切に運用する必要があります。
- 形骸化リスク:形式的な運用に陥りやすく、本来の目的を見失う可能性があります。
【審査・運用の効率化の実例】
製造業A社では、品質マニュアルと環境マニュアルを一つのIMS文書に統合。結果として内部監査の実施日数を半分に短縮できました。
5.ISO9001・ISO14001認証のメリット・デメリット
5-1 ISO9001・ISO14001認証のメリット
- 信頼性向上:顧客や取引先からの信頼を獲得しやすくなります。特に、大企業との取引や公共事業の入札条件に認証取得が求められることがあります。
- 業務改善:業務プロセスが明確になり、無駄の削減や標準化が進みます。
- 組織体制の強化:責任と権限が明確になり、従業員の品質・環境意識が向上します。
5-2 ISO9001・ISO14001認証のデメリット
- 初期コスト:審査費用やコンサルティング費用など、取得には一定の費用がかかります。
- 運用負荷:記録管理や内部監査など、運用を維持するための工数が発生します。
- 形骸化リスク:認証取得が目的となり、実態が伴わない「形だけのISO」になるリスクがあります。
5-3 取得しない選択肢との比較
ISO認証は必須ではありません。中小企業の場合、簡易的な環境マネジメントシステムである「エコアクション21」の導入が検討されることもあります。
このシステムは、審査や報告義務が簡略化されているため、ISO14001よりも手軽に運用でき、環境への取り組みをアピールする手段として有効です。ただし、ISO14001ほどの国際的な信頼性を得ることは難しい点に留意が必要です。
6.ISO9001とISO14001認証、どちらを取得するべきか
自社がどちらの認証を取得すべきか判断する際は、以下の点を考慮しましょう。
6-1 事業内容別の向き不向き
ISO9001が向いている企業
製品やサービスの品質が直接的に顧客満足に結びつく企業。
例:製造業、建設業、ソフトウェア開発、サービス業全般
ISO14001が向いている企業
事業活動が環境に大きな影響を与える企業、または環境意識の高い顧客や取引先を持つ企業。
例:化学工業、廃棄物処理業、電力・エネルギー産業、建設業
※注意:官公庁と取引している、または入札予定がある場合は、両方の取得が必須となる場合もあります。
6-2 顧客の要求や市場のニーズを踏まえた選定ポイント
取引先や市場から「ISO取得済み」が求められる場合、優先度は高くなります。特に、大企業との取引や海外展開を目指す企業は、ISO9001の取得が標準となることが多いです。
また、取引条件として「ISO9001認証の取得」が求められる場合は、取得が必須です。
一方、環境意識が高くCSRを重視する顧客が多い場合は、ISO14001の取得が有効です。
【取得事例】
- 製造業A社:品質不良率の削減目的でISO9001を先に取得
- 建設業B社:環境法令順守対応でISO14001を優先取得
- IT企業C社:両方を同時に取得し、企業価値を強化
7.取得後の運用と更新審査のポイント
7-1 継続的改善と記録管理
認証取得はゴールではなく、運用のスタート地点です。
最も重要なのは、継続的な改善を行うことです。ルールを守るだけでなく、業務の効率化や品質向上を目指す姿勢が求められます。
日常業務の中でPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回し、その過程を記録としてしっかり残すことが、次回の更新審査をスムーズに進める鍵となります。
特に、記録の整備は審査での重要な評価ポイントです。
7-2 審査での指摘を受けやすい事例
更新審査では、以下のような項目が指摘されやすい傾向にあります
- 記録の未整備や不備
- 実態と合っていない手順書や規程
- 是正処置が曖昧で具体性に欠ける
- 内部監査の実施頻度や内容が不十分
- 目標達成状況が不透明
これらの指摘を防ぐためには、年1回以上の内部監査を実施し、業務の実態と手順書が一致しているかを確認することが大切です。
また、マネジメントレビューを通じて、目標の進捗状況や改善点を定期的に見直し、必要な対策を講じることが求められます。
7-3 更新審査に向けた準備
更新審査では、過去の審査で指摘された事項が改善されているかが重点的に確認されます。
そのため、是正処置の進捗状況を明確にし、改善の成果を記録として残しておく必要があります。
また、従業員への教育や意識向上を図り、全社的に規程やルールが浸透している状態を維持することが、審査合格のポイントとなります。
8.ISO9001・ISO14001認証までの大まかな流れ
ISO9001やISO14001の認証を取得するには、規格に適合したマニュアルや手順書の整備、記録類の準備を行い、審査を経て認証を取得する必要があります。
以下のステップで進めるのが一般的です。
- 現状分析(ギャップ分析)
- 方針・目標の策定
- 文書・記録類の整備
- 社内教育・内部監査
- 外部審査(一次・二次)
- 認証取得 → 運用フェーズへ
特に中小企業では、コンサルティング会社を活用することで、スムーズに進むケースが多くあります。
サポートを依頼する際は、複数の会社から見積もりを取り、比較検討した上で、自社に適した企業を選びましょう。
それぞれの規格の具体的な取得ステップについては、以下のコラムで詳しく解説しています。
9.まとめ
本記事では「ISO9001とISO14001の違い」について解説しました。
要点を整理しておきましょう。
ISO9001(品質マネジメントシステム)については以下のポイントを解説しました。
- 顧客満足の向上を目的としたマネジメントシステムであり、「顧客の期待に応えること」が品質の本質である
- PDCAサイクルに基づいて、計画・実行・評価・改善を継続的に行うことが求められる
ISO14001(環境マネジメントシステム)については以下のポイントを解説しました。
- 企業活動による環境への影響を低減する仕組みであり、環境目標の設定や法令順守体制の構築が必要
- こちらもPDCAサイクルを通じて、環境パフォーマンスを継続的に改善することが求められる
両者の主な違いは以下の通りです。
- ISO9001は「顧客満足」、ISO14001は「環境保全」をゴールとする
- 業務改善の焦点や評価指標が異なる
- 記録や管理項目にも違いがあるが、どちらもPDCAサイクルを共通基盤としている
また、2015年の改訂により両規格は共通構造(HLS)を採用しており、同時取得・運用がしやすくなっています。これにより、統合マネジメントシステム(IMS)として文書類や運用手順を共通化でき、業務効率化にもつながります。
ISO認証のメリット・デメリットについても解説しました。
- 信頼性の向上、業務改善、組織体制の強化などのメリットがある一方、初期費用や運用負荷、形骸化リスクも考慮が必要
どちらの認証を取得すべきかは、事業内容や顧客ニーズ、取引要件を踏まえて判断することが重要です。
製造業やサービス業はISO9001、環境負荷の大きい業種はISO14001が向いています。
取得後は、記録管理や内部監査、継続的な見直しを通じて実効性を高める運用が求められます。また、更新審査に備えて是正処置や教育の実施状況も記録に残しておく必要があります。
最後に、ISO認証取得までの一般的なステップ(現状分析〜認証取得)も紹介しました。中小企業はコンサルタントの活用も含め、効率的な進め方を検討しましょう。
本コラムを参考に、自社にとって必要な規格を見極め、適切な取得・運用へ向けた第一歩を踏み出していただければ幸いです。
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