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今さら聞けない品質設計の定義と具体的な6つの手法【総まとめ】

2025年10月7日

今さら聞けない品質設計の定義と具体的な6つの手法【総まとめ】

「品質設計って何をすればいいの?」

「専門用語が多くてよくわからない」

「手法や考え方を実務でどう活かすのか知りたい」

結論からお伝えすると、品質設計とは、製品やサービスを設計する時点で「顧客が満足できる品質」をあらかじめ考え、形にしていくことです。

この考え方を取り入れることで、開発のムダを減らし、不具合やトラブルを未然に防ぐことができます。

なぜなら、設計段階で品質をしっかり作り込んでおかないと、どれだけ丁寧に製造しても、使う人が満足できる製品にはならないからです。

この記事では、品質設計の基本的な考え方から目的、代表的な手法、

そして失敗を防ぐための注意点まで解説していきます。

はじめて品質設計に触れる方にも、実務で使いたい方にも役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.品質設計とは「顧客の満足を考えて、最初から品質をつくり込むこと」

品質設計とは、製品やサービスの品質をあらかじめ考え、設計の段階から組み込んでいく取り組みのことです。

顧客の満足につながるように、性能や使いやすさ、安全性などを設計の中で整えていく役割を持っています。

例えば、スマートフォンであれば「壊れにくい」「バッテリーが長持ちする」「誤操作しにくい」といった特徴を、設計の時点で計画し、形や部品の選び方に反映させることが品質設計にあたります。

この段階でしっかりと品質を作り込んでおくことで、後になって起こるトラブルや修理の手間を減らすことがかのうです。

つまり、品質設計とは良いものを効率よく、安心して使ってもらうために、最初から品質を意識して形にする大切な考え方なのです。

(1)設計品質・製造品質・使用品質との違い

品質の種類決定される段階内容
設計品質設計の初期段階顧客のニーズや目的に沿った仕様や性能
製造品質製造・組立の段階設計通りに正確につくられているかの再現性
使用品質製品の使用段階実際に使ったときの満足度や使いやすさ

1. 設計品質

設計品質とは、製品やサービスに「どんな性能や機能を持たせるか」を計画する段階で決まる品質のことです。

つまり、どのような使い方をされるかを想定し、必要な要素を盛り込んだ設計ができているかどうかが重要になります。

例えば、雨の日でも使えるか、長時間動作しても壊れないか、どこまで安全性に配慮できるかなど、使用する人の立場に立って細かく考えることで、設計品質が高まっていきます。

この段階で品質が不足していると、どれだけ丁寧に作っても顧客の満足にはつながりません。

2. 製造品質

製造品質とは、設計図や仕様書どおりに正確に製品をつくることができているかを示す品質です。

設計で決められた通りに組み立てられ、機能が安定して発揮できる状態かどうかが評価の基準になります。

同じ設計でも、作る人や作り方によって品質に差が出ることがあります。

そこで重要になるのが、工程の管理や設備の安定性、作業手順の明確化などです。

ミスやばらつきを減らし、毎回同じ品質のものを届けるには、製造品質の維持が欠かせません。

3. 使用品質

使用品質とは、実際に製品やサービスを使った人が「これは良い」と感じるかどうかに関わる品質です。

どれだけ設計や製造がうまくいっていても、顧客の満足につながらなければ品質が高いとは言えません。

例えば、スマートフォンが持ちやすく、動きもスムーズで、長く使っても壊れにくいと感じれば、使用品質が高いといえます。逆に、仕様通りに作られていても「使いにくい」と思われれば、それは問題です。

顧客の視点で、「安心して使えるか」「快適に使えるか」を意識することが、使用品質を高めるポイントになります。

2.品質設計の目的

品質設計の目的は、大きく分けて3つあります。

  • 顧客ニーズを設計に反映する
  • 開発の手戻りを防止する
  • 製造時のばらつきを抑える

ここでは、なぜ品質設計が必要なのか、どのような役割を果たすのかについて、ひとつずつご紹介します。

(1)顧客ニーズを設計に反映する

品質設計では、顧客の希望や期待を正しく把握し、それを形にすることが重要です。

せっかく製品を作っても、「思っていたものと違う」と感じられてしまえば、品質が良いとは言えません。

例えば、「静かに動く掃除機がほしい」と思っている人に、吸引力ばかりを重視した設計をしてしまうと、たとえ性能が高くても不満につながる恐れがあります。

つまり、顧客の声を正確に読み取り、それを設計に落とし込む力が求められます。

(2)開発の手戻りを防止する

設計の段階で品質をしっかりと考えておくことで、後からのやり直しを防ぐことができます。

開発が進んだ後で設計を見直すことになると、時間も費用も多くかかってしまい、全体の効率が悪くなります。

例えば、設計時に材料の強度やサイズを正確に検討しないまま進めてしまうと、試作段階で問題が見つかり、図面や仕様を何度も修正しなければならない事態になりかねません。

最初にしっかりと品質設計を行うことで、ムダなやり直しを減らし、スムーズに製品を完成させることができます。

この考え方は、時間やコストの節約にもつながる大切な視点です。

(3)製造時のばらつきを抑える

どれだけ良い設計でも、作る度に仕上がりがバラバラでは、信頼される製品とは言えません。

そこで、製造時に品質が安定するよう、設計の段階で工夫することが必要です。

例えば、小さな部品が複雑な形をしていたり、加工が難しい素材を使っていたりすると、製造の現場で精度が保てず、製品ごとに性能に差が出ることがあります。

品質設計では、誰が作っても同じ品質になるように、加工のしやすさや組み立てやすさを考えた設計が大切です。

3.品質設計の具体的な6つの手法

品質設計で活用される代表的な手法は、以下の6つです。

  • QFD(品質機能展開)で顧客要求を設計仕様に変換する
  • FMEA(故障モード影響解析)でリスクを事前に洗い出す
  • DR(デザインレビュー)で設計の妥当性を確認する
  • DRBFMで設計変更に伴うリスクを重点的に見直す
  • DFM(製造容易性設計)で製造性を考慮した設計を行う
  • 許容差設計で品質とコストのバランスを最適化する

これらの手法を知らずに進めてしまうと、思わぬ不具合やコストの増加を招くかもしれません。

そうならないためにも、順番に見ていきましょう。

(1)QFD(品質機能展開)で顧客要求を設計仕様に変換する

QFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)は、顧客の声をもとに設計の仕様へとつなげていく方法です。

商品やサービスの目的を明確にし、どのような機能や品質が求められているのかを整理します。

例えば「軽くて持ちやすい製品がほしい」という要望があったとき、設計者は素材の選び方や形の工夫によって、それをどうやって実現させるのかを考えます。

このように、QFDを使えば、なんとなく便利ではなく、具体的にどう便利にするかが明確になります。

つまり、顧客の期待を正確に設計に落とし込むための有効な手段がQFDなのです。

(2)FMEA(故障モード影響解析)でリスクを事前に洗い出す

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)は、まだ製品ができていない段階で、「どんな不具合が起きるか」を想定し、それがどれだけ深刻な影響を与えるかを考えて、対策を立てておくための方法です。

例えば、自動ドアの設計で「センサーが反応しなかったらどうなるか」を事前に検討します。

その結果として、人にぶつかる危険があれば、それを防ぐ仕組みをあらかじめ追加することで、後からのトラブルや事故を未然に防ぐことができます。

FMEAは、安全で信頼できる製品を作るために欠かせない考え方のひとつです。

(3)DR(デザインレビュー)で設計の妥当性を確認する

DR(Design Review:デザインレビュー)は、設計が正しい方向で進んでいるかを複数の目で確認するための仕組みです。

1人の判断では見落としてしまうことも、他の人と一緒に見ることで気づけることがあります。

設計の初期から最終段階まで、重要なタイミングで何度かレビューを行い、問題がないか、改善の余地がないかを話し合います。

このようにすることで、品質の安定と手戻りの防止を行うことが可能です。

DRは、設計ミスを減らし、より良い製品づくりにつながる大切な工程です。

(4)DRBFMで設計変更に伴うリスクを重点的に見直す

DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)は、設計を変更するときに起きるかもしれない不具合を、事前に集中的に見直す手法です。

特に「何を変えたか」「なぜ変えたか」に注目し、それが他にどんな影響を与えるかを詳しく検討します。

例えば、部品の形を少し変えたことで、組み立てが難しくなる可能性があるかもしれません。

そうした小さな変化が大きな問題につながることがあるため、慎重な確認が必要です。

設計変更は便利な反面、予期せぬトラブルを引き起こす原因にもなります。

DRBFMは、それを防ぐための効果的な方法のひとつです。

(5)DFM(製造容易性設計)で製造性を考慮した設計を行う

DFM(Design for Manufacturing:製造容易性設計)は、どう作るかを考えながら、どう設計するかを決める方法です。

つまり、製品を簡単かつ正確に作れるようにするために、設計段階から工夫するという考え方です。

例えば、複雑な形の部品や、加工しにくい素材を避けることで、作りやすく、ミスが起きにくい設計になります。

その結果、製造工程が安定し、品質のばらつきも減らすことが可能です。

DFMを意識した設計は、時間やコストの削減にもつながります。

作る現場のことを理解して設計することが、高い品質を保つためには欠かせません。

(6)許容差設計で品質とコストのバランスを最適化する

許容差設計とは、部品や製品にどれくらいのズレや誤差を認めるかを決める設計の考え方です。

すべてをぴったり同じに作ろうとすると、時間やお金がかかりすぎることがあります。

例えば、部品の長さが0.1ミリずれていても問題がなければ、その範囲を「許容差」として認めることで、製造はぐっと楽になります。

それでも品質が保てるのであれば、効率よく作ることができるでしょう。

品質を守りながら、無駄な手間やコストを減らすには、適切な許容差を設計段階で考えることが大切です。

4.品質設計で失敗しないための3つの注意点

品質設計を進める上で、注意すべきポイントは主に3つあります。

  • 顧客ニーズと設計仕様のズレを防ぐ
  • 設計段階でのリスクを見落とさない
  • 設計変更時の影響を過小評価しない

それぞれの注意点について、具体例を交えながらご説明します。

(1)顧客ニーズと設計仕様のズレを防ぐ

品質設計では、顧客の期待と実際の設計内容がずれないようにすることが重要です。

たとえ高性能な製品でも、顧客が求めていた使い心地や特徴とかけ離れていれば、満足にはつながりません。

例えば、通学に使いたいと考えている中学生向けの自転車に対して、スピード性能だけを重視した設計をしてしまうと、荷物を載せにくい、止まりにくいといった使い勝手の悪さが目立ち、「思っていたのと違う」という不満につながることがあります。

設計の段階では、顧客の立場や使う場面を具体的に想像し、そのニーズを仕様に落とし込む工夫が求められます。

ズレのない設計は、顧客満足度を高める上で欠かせません。

(2)設計段階でのリスクを見落とさない

製品の開発では、初期の設計段階で起こり得るリスクを見つけ、早めに対策を立てておくことがとても大切です。

リスクを見落としてしまうと、後になって不具合や事故として表面化し、大きな手直しや損失を引き起こす恐れがあります。

例えば、素材の強度が足りないことに気づかずに設計を進めた結果、試作品で破損が発生し、その修正に多くの時間と費用がかかるといった事態も起こるかもしれません。

設計中は、あらゆる使い方や環境を想定し、「どこに弱点があるか」を冷静に見つめる必要があります。

問題が起きてから対応するよりも、先に備えることが、品質と信頼を守るための近道なのです。

(3)設計変更時の影響を過小評価しない

一見小さな設計変更でも、他の部分に思わぬ影響を与えることがあるため、慎重な見直しが必要です。

変更の目的が正しくても、他の部品や工程に与える負担を軽く見てしまうと、全体のバランスが崩れることがあります。

例えば、ねじのサイズを少し変えるだけで、組み立て工具が合わなくなったり、強度に差が出たりする場合もあります。

このように、設計の一部を修正しただけでも、他の部分に影響が波及することは少なくありません。

変更時には、「何を、なぜ変えるのか」だけでなく、「その結果、どこに影響が出るか」を具体的に確認することが必要です。

設計変更を軽く考えず、全体を見渡す視点を持つことが、品質設計において重要なのです。

5.まとめ

今回は、品質設計について、その定義から具体的な6つの手法、注意点までを解説しました。

品質設計とは、製品やサービスの設計段階で「顧客が満足できる品質」をあらかじめ考え、仕様に反映させる取り組みです。

この考え方を導入することで、開発のムダを減らし、不具合やトラブルの未然防止につながります。

代表的な手法には、QFD(品質機能展開)、FMEA(故障モード影響解析)、DR(デザインレビュー)などがあり、それぞれの目的や使い方を理解することで、より実践的な品質設計が可能になります。

この記事を通じて、品質設計の基本的な考え方と進め方をしっかりと整理し、現場での品質向上やトラブル防止に役立ててみてください。

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