情シスの属人化を解消する4つのステップ|原因とリスクも解説
2026年11月5日

目次
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1.情シスの属人化とは?なぜ起きるのか

情シスの属人化を解消するには、まず属人化がどのような状態を指し、なぜ起きるのかを知ることが大切です。 原因が分かれば、どこから手をつければよいかも見えてきます。
⑴属人化している状態の定義
属人化とは、業務のやり方や判断の基準が、特定の人の頭の中にしかない状態を指します。 その人がいなければ業務が進まず、周りからは中身が見えません。 このように外から中身が見えなくなることを「ブラックボックス化」と呼びます。
情シス業務では、たとえば次のような状態が当てはまります。
- 社内ネットワークの設定内容を、担当者しか知らない
- 新入社員のパソコンを準備する手順が、担当者の記憶頼みである
- 会社で契約しているクラウドサービスの一覧がない
なお、ある分野に詳しい人がいること自体は問題ではありません。 問題なのは、その人の知識が共有されず、代わりがきかないことです。
⑵情シスで属人化が起きやすい3つの理由
情シス業務で属人化が起きやすい理由は、主に次の3つです。
理由1:少人数や1人で担当していることが多い
中小企業では、情シスを1人で担う「ひとり情シス」や、総務・経理などとの兼任がよく見られます。 担当者が1人であれば、業務の情報はすべてその人に集まります。 相談相手もいないため、やり方が個人の判断で決まりがちです。
理由2:業務の範囲が広く、内容が多岐にわたる
情シスの業務は、パソコンの準備やネットワークの管理、社員からの問い合わせ対応など幅広いものです。 1つひとつは小さな作業でも数が多く、手順書を書く時間を確保できません。 「記録は後で」と思ううちに、記録のない業務が積み重なります。
理由3:成果が見えにくく、記録や共有が評価されにくい
情シスの成果は「トラブルが起きないこと」であり、目に見えにくいものです。 そのため、手順書の作成やナレッジ共有は、成果として評価されにくい傾向があります。 ナレッジ共有とは、担当者の知恵やコツを、ほかの人も使えるようにすることです。
評価されない作業は、急ぎの対応に押されて後回しになります。 こうして、情報が担当者1人に集中する状態が続きます。
2.属人化を放置するとどうなる?4つのリスク
情シス業務の属人化を放置すると、会社全体にさまざまなリスクが生じます。 今は問題なく回っていても、ある日突然表面化するのが属人化の怖さです。 属人化の解消を後回しにしないために、代表的な4つのリスクを確認しましょう。
⑴担当者の不在・退職で業務が止まる
情シスの担当者が急に休んだり退職したりすると、業務がそのまま止まる恐れがあります。 たとえば、アカウント発行の手順が分からず、新入社員が初日から業務を始められないといったことが起こります。
退職の場合、引き継ぎの期間が短いと、すべてを伝えきれません。 担当者本人も、自分が何を知っているかを把握しきれないことが多いためです。
⑵セキュリティ対応の判断が1人に依存する
不審なメールやウイルス感染の疑いなど、セキュリティの問題は時間との勝負です。 対応の判断が1人に任されていると、その人と連絡が取れない間に被害が拡大する恐れがあります。
また、1人の判断を誰も確認できない状態も危険です。 設定の見落としや判断の誤りがあっても、気付くきっかけがないため、対応が遅れがちです。
こうしたセキュリティ対応の遅れは、規模の小さな会社ほど他人事ではありません。 警察庁の発表によると、令和7年のランサムウェア被害の報告件数は、中小企業が143件、大企業が64件でした。 ランサムウェアとは、会社のデータを使えない状態にし、元に戻す代わりに金銭を要求する不正なプログラムです。
引用:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」中小企業は情シスが少人数であることが多く、セキュリティの判断が1人に集中しやすい環境です。 いざというときに複数人で判断できる体制を整えておくことが、被害を抑えるための備えです。
⑶業務改善が進まない
業務のやり方が担当者の頭の中にしかないと、ほかの人は改善案を出せません。 「なぜこの手順なのか」が分からなければ、変えてよいかどうかも判断できないためです。
その結果、古いやり方や無駄な作業がそのまま残ります。 新しいツールの導入や作業の自動化も、現状が見えないままでは検討できません。
⑷担当者の負荷が下がらない
属人化は、会社だけでなく担当者本人にとっても大きな負担です。 「自分しか分からない」業務を抱えると、休暇中や夜間にも連絡が来ます。
負荷の高い状態が続けば、心身の不調や離職につながりかねません。 担当者が辞めれば、⑴の担当者の不在・退職で業務が止まるリスクがそのまま現実のものとなります。 属人化の解消は、担当者を守るためにも欠かせない取り組みです。
3.属人化しているかを確認する5つのチェック項目
情シスの属人化を解消する第一歩は、今の状況を正しく知ることです。 次の5つの項目のうち、自社に当てはまるものに印をつけてみてください。
- 手順書がない業務がある
- 特定の人しか持っていない権限がある
- 問い合わせが個人宛に届く
- 障害対応の判断が1人に依存している
- 休暇時に業務が滞る
チェック数ごとの目安は次のとおりです。
- 0個:属人化のリスクは低い状態です。今の仕組みを保ちましょう。
- 1〜2個:一部の業務で属人化が始まっています。早めの対策で十分に改善できます。
- 3個以上:属人化が進んでいる状態です。4章のステップに沿って計画的に取り組みましょう。
⑴手順書がない業務がある
手順書やマニュアルがない業務は、担当者の記憶だけで回っている状態です。 年に1回のライセンス更新など、頻度の低い業務は特に記録が残りにくいため注意しましょう。
⑵特定の人しか持っていない権限がある
権限とは、システムの設定を変えたり、アカウントを作ったりできる「鍵」のようなものです。 この鍵を1人しか持っていないと、その人がいない間は誰も設定を変えられません。
⑶問い合わせが個人宛に届く
社内からの問い合わせが、担当者個人のメールやチャットに直接届く状態も属人化のサインです。 個人宛のやりとりはほかの人から見えず、対応の履歴も残りません。
⑷障害対応の判断が1人に依存している
ネットワークが止まるなどの障害が起きたとき、特定の担当者が来るまで対応を始められない場合は要注意です。 誰が何を判断するかが決まっていないと、復旧までの時間が長引きます。
⑸休暇時に業務が滞る
担当者が休むたびに「戻ってから対応します」となる業務があれば、属人化しているといえます。 休暇の前に大量の準備が必要な状態も、同じサインです。
4.属人化を解消する4つのステップ
情シスの属人化を解消するには、一度にすべてを変えようとせず、段階を踏むことが大切です。 ここでは、社内で今日から始められる4つのステップを順に紹介します。
⑴業務の棚卸しと可視化
業務の棚卸しとは、担当者が抱えている業務をすべて書き出し、一覧にする作業です。 倉庫の在庫を数えるように、どんな業務がどれだけあるかを把握します。
進め方は次のとおりです。
- 担当者が1〜2週間、行った業務を簡単にメモする(1日5分程度で十分です)
- 月1回や年1回など、頻度の低い業務も思い出して書き足す
- 書き出した業務を、表計算ファイルなどで一覧にまとめる
一覧には、次の項目を入れておくと後のステップで役立ちます。
- 業務名(例:新入社員のパソコン準備)
- 頻度(例:入社時、月1〜2回)
- 担当者(例:〇〇さん)
- 手順書の有無(例:なし)
- 必要な権限(例:管理画面の管理者権限)
- 止まったときの影響(例:大きい。新入社員が業務を始められない)
一覧ができたら、「止まったときの影響が大きい」かつ「手順書がない」業務に印をつけます。 この業務が、次のステップで優先して取り組む対象です。
最初から完璧な一覧を目指す必要はありません。 抜けに気付いたら、その都度書き足せば十分です。
管理職の方は、棚卸しの時間を業務として確保してください。 「通常業務の合間に」と頼むだけでは、忙しい担当者はなかなか手をつけられません。
⑵手順の記録と標準化
棚卸しで優先度の高い業務が分かったら、その手順を記録します。 目標は、担当者以外の人が手順書を見て、同じ作業を終えられる状態です。
手順書づくりのコツは次のとおりです。
- 完璧な文章を目指さず、箇条書きで書く
- 画面の写真(スクリーンショット)を添える
- 「なぜその作業をするのか」も一言添える
- 後から思い出すのではなく、作業しながら書く
おすすめは、担当者が作業し、別の人が横で見ながらメモを取る方法です。 担当者が当たり前だと思って省きがちな作業も、別の人の目で拾えます。
書き終えた手順書は、担当者以外の人に実際に試してもらいましょう。 つまずいた箇所を書き足せば、誰でも使える手順書に近づきます。
あわせて、業務の標準化にも取り組みます。 標準化とは、人によって違うやり方を、1つの決まったやり方にそろえることです。
たとえば、パソコンの準備で人によって入れるソフトが違うなら、標準のソフト一覧を決めます。 やり方がそろえば手順書も1つで済み、作業のミスも減ります。
手順書やマニュアルは、社内の関係者が見られる共有フォルダなど、1か所にまとめて保管します。 個人のパソコンに保存すると、手順書そのものが属人化するためです。
⑶権限と問い合わせ窓口の整理
手順書があっても、作業に必要な権限が1人にしかなければ、ほかの人は作業できません。 権限管理と問い合わせ窓口の整理は、属人化の解消に欠かせない作業です。
管理者権限を複数人に持たせる
主要なシステムやサービスの管理者権限は、最低2人が持つ体制にします。 信頼できる人に合鍵を預けておくイメージです。
誰がどのシステムの権限を持っているかは、⑴で作った一覧に記録します。 ただし、権限を広く配りすぎると、誤操作や不正のリスクが高まります。 「必要な人に、必要な分だけ」を原則に、持たせる人を決めましょう。
パスワードはパスワード管理ツールで共有する
パスワードを手順書や表計算ファイルに直接書く方法は避けてください。 ファイルが社外に漏れたり、退職者の手元に残ったりすると、不正利用につながります。
パスワードの共有には、パスワード管理ツールを使いましょう。 パスワードを鍵付きの金庫にまとめ、決められた人だけが取り出せるようにする仕組みです。 退職や異動のときに、その人の共有を止めるのも簡単です。
また、1つのアカウントを複数人で使い回すのではなく、1人ひとりに専用のアカウントを発行するのが基本です。 個人ごとのアカウントなら、誰が何をしたかが分かり、退職時もその人の分だけ止められます。
問い合わせ窓口を1つにまとめる
社内からの問い合わせは、担当者個人ではなく共通の窓口に集めます。 たとえば、情シス用の共通メールアドレスや、チャットの専用チャンネルを用意します。
窓口を1つにすれば、複数人で内容を確認でき、対応の履歴も残ります。 よくある質問と回答をまとめて公開すれば、社員が自分で解決できる場面も増えます。
窓口を作ったら、社内への周知も忘れずに行いましょう。 「IT関係の問い合わせはこちらへ」と全社に案内すれば、個人宛の連絡は自然に減ります。
⑷定期的な見直しの仕組み化
⑴〜⑶を一度行って終わりにすると、時間とともに再び属人化が進みます。 システムの変更や新しいサービスの導入があっても、手順書を直さなければすぐに古くなるためです。
見直しを続けるための仕組みとして、次のような方法があります。
- 月に1回、手順書と業務一覧を見直す日を決める
- システムの設定を変えたら、手順書も直すことをルールにする
- 年に数回、担当者以外の人がその業務を実際に担当する
- 担当者の休暇を、手順書が使えるかどうかを確かめる機会にする
特に効果が大きいのは、担当者以外の人が実際に業務を担当してみる方法です。 避難訓練のように本番の前に試しておけば、手順書の抜けや権限の不足に気付けます。
見直しの日は、カレンダーに定例の予定として入れておくと忘れずに続けられます。 小さな見直しを繰り返すことが、属人化を防ぐいちばんの近道です。
5.社内だけで解消が難しい場合の選択肢
情シスの属人化は、4章のステップで多くの部分を解消できます。 ただし、会社の体制によっては、社内の努力だけでは限界がある場合もあります。
⑴1人体制では構造的に限界がある
ひとり情シスの場合、手順書を整えても、作業を代わりに担当できる人が社内にいません。 管理者権限を2人に持たせようにも、ITに詳しい人がほかにいないケースもあります。
また、日々の対応で手一杯の中、棚卸しや手順書づくりの時間を確保すること自体が難しい場合もあります。 このような状況の原因は、担当者の努力不足ではなく、体制そのものにあります。
⑵外部の力を借りるという選択肢
社内だけでの解消が難しい場合、情シス業務の一部を外部に委託する方法があります。 たとえば、問い合わせ対応やパソコンの準備、手順書の整備の支援など、範囲を絞って依頼できます。
外部に任せた分、社内の担当者は業務の整理や判断が必要な作業に時間を使えます。 一方で、費用がかかることや、委託先との情報共有に手間がかかることも考慮が必要です。
社内で人を採用する、他部署の社員を兼任者として育てるといった方法もあります。 それぞれの費用や時間を比べ、自社に合う方法を選びましょう。
⑶ノウハウを社内に残す委託の仕方
外部に委託するときは、委託先で業務が属人化しないよう注意が必要です。 社内の担当者から委託先の担当者へ、ブラックボックスが移るだけでは意味がありません。
委託先を選ぶときは、次の点を確認しましょう。
- 作業の手順書や記録を、自社でも見られる形で残してもらえるか
- 作業内容の報告が定期的にあるか
- 契約を終えるときの引き継ぎ方法が決まっているか
- 委託先の担当者が1人に固定されていないか
たとえば「情シスtrust」では、最初に業務や契約中のサービスを棚卸しし、手順書や管理台帳を残しながら支援を進めます。 メイン担当に加えてサブ担当とバックオフィスが記録を共有するため、担当者が変わっても情報が途切れません。月5時間から稼働時間を選べるうえ、 方針の相談だけ、毎月の面倒な作業だけといった小さな依頼から始められ、既存のベンダーとの併用も可能です。
【情シスtrustの支援の流れ】
- Step1:現状把握・棚卸
- IT資産・アカウント・契約中のサービスを洗い出す
- Step2:課題整理・改善計画
- リスクと業務への影響から優先順位を決める
- Step3:実行・ドキュメント整備
- 作業とあわせて手順書や台帳を残す
- Step4:運用保守支援
- 日々の運用を回しながら体制を強化する
実際に、情シス担当者が1名で業務が集中していた小売・流通業の会社(従業員100名程度)では、月20時間の契約で支援を行いました。 アカウントや端末管理などの定型業務を代行しながら、手順書や管理台帳の整備を進めたケースです。
委託を「丸投げ」にせず、社内にナレッジを蓄える機会として使うことが大切です。
6.よくある質問(FAQ)
情シスの属人化の解消について、よく寄せられる質問にお答えします。
⑴手順書はどこまで細かく書くべきか
手順書は、その業務を初めて担当する人が、手順書だけで作業を終えられる程度を目安にします。 最初から細かく書きすぎると、作成にも更新にも時間がかかります。 まずは要点を書き、別の人が試して迷った箇所を書き足す方法がおすすめです。
⑵担当者が1人でも属人化は解消できるか
担当者が1人でも、業務の棚卸しや手順書の作成、問い合わせ窓口の整理は進められます。 ただし、作業を代わりに担当できる人がいなければ、完全な解消は難しいのが実情です。 上司や他部署の社員にも手順書を読んでもらい、緊急時に最低限の対応ができる人を増やしましょう。
⑶外部に委託すれば属人化は解消するのか
外部に委託するだけで、属人化が解消するとは限りません。 委託先の担当者に情報が集中すれば、属人化の場所が移るだけです。 手順書や作業記録を自社に残してもらう取り決めをしておくことが大切です。あわせて、委託先の担当者が変わったときに記録を引き継ぐ体制があるかも確認しましょう。
⑷解消にはどれくらいの期間がかかるか
属人化の解消にかかる期間は、業務の量や体制によって異なるため、一概にはいえません。 影響の大きい業務の棚卸しと手順書づくりから始め、少しずつ範囲を広げると無理なく進められます。 大切なのは、一度で終わらせようとせず、見直しを続けることです。
7.まとめ
情シスの属人化は、少人数や兼任の体制、幅広い業務、記録が評価されにくい環境から生まれます。 放置すると、業務の停止やセキュリティ対応の遅れ、担当者の負担増につながります。
属人化を解消するには、次の4つのステップを順に進めましょう。
- 業務の棚卸しで、何があるかを一覧にする
- 手順を記録し、やり方を標準化する
- 管理者権限を複数人に持たせ、問い合わせ窓口を1つにまとめる
- 定期的な見直しを仕組みにする
まずは3章のチェック項目で自社の状況を確かめ、影響の大きい業務から1つずつ手をつけることが大切です。
一方で、ひとり情シスのように体制そのものに限界がある場合は、外部の力を借りることも選択肢の1つです。 「情シスtrust」では、業務の棚卸しから手順書・台帳の整備、日々の運用まで、月5時間から必要な分だけ支援します。 ISO・Pマークの認証取得・運用支援で累計10,000社以上を支援してきたノウハウを活かし、属人化しない情シスの仕組みづくりを一緒に進めます。社内だけでの整理が難しい場合は、「情シスtrust」にご相談ください。
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